第4話 円融天皇

文字数 565文字

 余(円融天皇)が天皇となったのは、安和2年(969年)数え年十一歳の時である。母は、藤原師輔の娘、中宮安子の三宮。同母帝兄の朱雀天皇からの譲位による。次兄の二宮は、藤原氏ではなく源高明の娘を妃としていたため、東宮になり損ねた。余の妃は、師輔の次郎、兼道の娘嬉子であったから東宮となり、天皇となった。しかし、嬉子は子をなさず、昨年はかなくなってしまった。即位以来十年以上、皇子は生まれなかった。
  今の世の中、だれが東宮となり、天皇となるかは、天皇家の意志ではなく、藤原氏との関係で決まっていく。おかしな世の中だが、実際にそうであるのだから、うまく事を運ばないと、天皇の考え通りの政治にならない。
 そして、今朝、梅壺の女御詮子懐妊の知らせが届いた。まことにめでたい。大いに喜んだが、冷静になってみるとこれは大変だ。詮子の父は、あの藤原兼家ではないか。どうせなら、もう一人の女御、関白頼忠殿の娘遵子のところならよかったのだが。兼家は、余の思いなど無視して、政治を思うままにするに違いない。何か手を打たねば。
 藤原氏を超える身分といえば、皇女だ。兄冷泉天皇の女二宮に尊子内親王がいらっしゃる。光り輝くようなたいそうかわいらしい姫君である。この方を妃に迎え入れよう。
 六月、詮子が男皇子を産み、十月、尊子内親王が承香殿の女御となられた。
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登場人物紹介

藤原詮子…藤原兼家の正妻時姫の娘。同母の兄弟は、長兄道隆盛・次兄道兼・弟道長、姉超子。異母兄弟多数。我が子は、一条天皇だけ。

円融帝…冷泉天皇の弟。母は、兼家の姉藤原安子。村上天皇から見ると冷泉天皇は第2皇子。円融天皇は第5皇子。安子から見ると、第1皇子が冷泉、第3皇子が円融。ややこしい…。我が子は、一条天皇だけ。

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