第13話 円融上皇

文字数 424文字

 余は、今生帝一条帝の父である。一条帝は、いまだ幼く、余が様々な助言を与えるのは、当然だ。それなのに、兼家は、それは摂政の役目だという。臣下に過ぎない兼家より、上皇である余の発言のほうが強いのが当然だ。
 先日も、蔵人頭である藤原実資に命じて、政り事を行ったのに、兼家もすぐに別の事案を実資に命じている。実資は、学識が高く、有職故実に優れ、実直で、曲がったことは行わない。そろそろこのものの官位を上げてやりたいが、兼家の都合が悪くなるので反対してくる。まったく嫌な状態だ。
 永祚元年(989年)、実資に命じて、式部の丞と院分国についての命令文を、兼家のもとに送るようにした。彼らは、立派な働きをするはずだ。一条帝のため、余はよい人事を行う考えである。
 三月になり、兼家が、孫の一条帝と娘の皇后詮子を連れて春日大社に参詣した。一条帝の健康が思わしくなく、余があれだけ反対したにも関わらず。天皇や皇后より、兼家のほうが上であるようなふるまいではないか。
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登場人物紹介

藤原詮子…藤原兼家の正妻時姫の娘。同母の兄弟は、長兄道隆盛・次兄道兼・弟道長、姉超子。異母兄弟多数。我が子は、一条天皇だけ。

円融帝…冷泉天皇の弟。母は、兼家の姉藤原安子。村上天皇から見ると冷泉天皇は第2皇子。円融天皇は第5皇子。安子から見ると、第1皇子が冷泉、第3皇子が円融。ややこしい…。我が子は、一条天皇だけ。

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