第3話 懐妊
文字数 650文字
年が明け、天元3年となった。めでたいことであるが、心憂い年明けである。昨年、6月3日に、中宮媓子様がお亡くなりになって帝はずっとふさぎがちだ。わたくしが御前に上がった時も、梅壺にいらっしゃった時も、雅やかにお話になられるのだが。
わたくしのほうも、母(藤原時姫)の具合がよろしくない。加持祈祷は、父や長兄道隆が心を込めて行っているが、回復の兆しがない。とうとう、21日に帰らぬ人となってしまわれた。帝や、女御様、更衣、主だった公卿様より、弔問の文をいただく。母の夫は、右大臣、長子道隆は左近衛少将、次子道兼は昇殿を許されたばかり。長女超子は女御であるが、国母にはまだなっていない。道長は、まだ子ども。気がかりの多いことであろう。わたくしが、きっと、後の人々がうらやむような一家にして見せます。
物忌で、どなたともお会いせず、悲しみに暮れていると、どうも体の調子がおかしい。食べ物はのどを通らないし、むかむかと気持ちが悪い。わたくしも、母の後を追うのだろうか。なんと、食したものを吐き戻してしまった。あわてて、女房に薬師が呼ばれる。
「おめでとうございます。ご懐妊であらせられます。本年の夏ごろお子がお生まれになるでしょう。」
あまりのことに、言葉が出なかった。梅壺は、大騒ぎになり、ほうぼうに知らせが飛んだ。これも、母のご加護か。初めてのお子となる帝も、ことのほかお喜びである。父も、兄たちも。しかし、そうでない方々もいらっしゃる。気をつけなくては。
ここで、男皇子がお生まれになれば、政治が動く。
わたくしのほうも、母(藤原時姫)の具合がよろしくない。加持祈祷は、父や長兄道隆が心を込めて行っているが、回復の兆しがない。とうとう、21日に帰らぬ人となってしまわれた。帝や、女御様、更衣、主だった公卿様より、弔問の文をいただく。母の夫は、右大臣、長子道隆は左近衛少将、次子道兼は昇殿を許されたばかり。長女超子は女御であるが、国母にはまだなっていない。道長は、まだ子ども。気がかりの多いことであろう。わたくしが、きっと、後の人々がうらやむような一家にして見せます。
物忌で、どなたともお会いせず、悲しみに暮れていると、どうも体の調子がおかしい。食べ物はのどを通らないし、むかむかと気持ちが悪い。わたくしも、母の後を追うのだろうか。なんと、食したものを吐き戻してしまった。あわてて、女房に薬師が呼ばれる。
「おめでとうございます。ご懐妊であらせられます。本年の夏ごろお子がお生まれになるでしょう。」
あまりのことに、言葉が出なかった。梅壺は、大騒ぎになり、ほうぼうに知らせが飛んだ。これも、母のご加護か。初めてのお子となる帝も、ことのほかお喜びである。父も、兄たちも。しかし、そうでない方々もいらっしゃる。気をつけなくては。
ここで、男皇子がお生まれになれば、政治が動く。