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文字数 462文字
暗い夜道を、肩を落としながら歩く。
爪先を見ながらあてどなく進んでいた蓮人の目に留まったのは、ビルとビルの間に隠すように置かれている、三角形の看板だった。
上部についた矢印は、商業ビルの地下を指し示している。ビルの一階から上はすでに閉店していたが、地下は営業中らしく、階段にも明かりがついていた。
このあたりにきたことはほとんどない。まして、最近ようやくお酒が飲める年齢になった蓮人にとって、バーはなじみのないものだった。
申しわけ程度にライトアップされている看板の、素朴な字体で書かれた店名の下に、そんな文句が小さく記されていた。
一日中、歩き通していたため、足は棒のようになっている。休んでいる場合ではないという思いはあったが、静まり返った夜の田舎町をさまようことに、意味があるという気もしなかった。