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文字数 1,017文字
目の前に置かれたグラスをとり、ツァックはおいしそうに飲む。蓮人は水滴が浮いてしまった自分のグラスを、じっと見つめた。
話に聞き入っていたので、ほとんど減っていない。炭酸も抜け始め、溶けた氷で味も薄くなっているだろう。
裏切り行為に走ってなお、心はメイガスの使徒だったあの魔術師が、それを保証している。
じっと薄青い水面を見つめていた蓮人は、ちびちびと酒を飲み始めた。案の定、ほとんど味がしない。
片目をつむり、一杯分の酒の会計をすませてツァックは慌ただしく出て行った。蓮人もスマートフォンで時間を確認する。
そろそろ店を出ないと、終電に間にあわない。
立ち上がった蓮人の足元がふらつく。とっさにバーチェアを掴んだがうまく力を入れられず、崩れるように床に横たわってしまった。
視界がぼやける。近づいてきたマスターが、抱え起こしてくれた。
蓮人の記憶はそこで途切れる。