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文字数 609文字
漢字を読めるかどうか不安だったため、ツァックは祭壇で発見したメモをスーツのポケットから出して読み上げる。少年はよく分かっていない顔で、ツァックを見上げていた。
虚実を織り交ぜつつ説明したツァックは、メモをポケットに仕舞い、花弁は片手ですくうように持っておく。逆の手で、少年の手を握った。
首を縦に振った少年を伴い、礼拝堂を横切って左側の部屋に向かう。ステンドグラスや整えられた祭壇、見ているだけで物悲しくなる磔刑の像に興味を示すかと思ったが、少年は見向きもしなかった。
左の部屋には鍵がかかっていない。扉は抵抗なく開いた。
部屋には家具もなにも置かれていない。
ただひとつ、部屋の隅に巨大な羽毛の塊が鎮座していた。くちばしを有したそれは、正確には巨大すぎるカラスだ。高い天井に頭が届いてしまいそうなカラスが、じろりと侵入者である二人を見る。