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文字数 1,006文字
堂々と店の扉を開けて入ってきた男が、固まっている蓮人の隣に断りもなく座る。マスターが名前まで把握しているということは、常連らしい。
現に、初老の男は注文も好みも聞かず、横に広く縦に短いどっしりとしたグラスを出してきて、丸く削った氷を入れ、琥珀色の酒を注いでから、男の前にそっと出した。
もちろん制服ではないのだが、整った西洋系の顔立ちや引き締まった体にまったく似合っていない安物のスーツを着ている男は、やけに胡散臭い。
警察だと言われても、とうてい信じる気にはなれなかった。
にわかには信じがたかったが、マスターとツァックがからかっているのだという雰囲気でもなかった。
彼らは魔術を知っている。魔術師を知っている。
ぞくりと蓮人の背に悪寒が走った。グラスに添えた手が、かすかに震える。