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文字数 738文字
殺さなければ捕らわれるということは、ツァックにも分かっている。像を背にし、祭壇を挟んでツァックと向かいあっている魔術師も、生きるか死ぬかの展開を望んでいるのだろう。
これまでの犠牲者は、どうだったのだろうか。
告発できなかった者もいるだろう。告発はしたが処刑できなかった者もいるだろう。積み重なって、十五人だ。本当はもっといるのかもしれない。
探し人は、ここにもいないようだ。
どこに行ってしまったのかと、ツァックは高い天井を仰ぎ見る。妹分であるヒナを追って最後に連絡が送られてきた場所である日本にきて、もうずいぶんと経過しているような気がした。
恐らく魔術絡みで姿を消したヒナと、再会できる日は本当にくるのだろうか。
純粋の愛。
地下の崩れた救世主の像から出てきたメモを、ツァックは思い出していた。十八歳といえば、ツァックから見ればまだ子どもだ。魔術師になってからも日は浅いだろう。
そして、盲目的なまでにメイガスに惚れこんでいたからこそ、この魔術師は気づいていない。この先どれほどの人々をさらっても、メイガスは現れないのだ。