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文字数 549文字

祭壇にはメモと天秤。で、磔刑になった像か
 両手のひらと心臓に杭を打たれ、十字架にはりつけにされた二メートルほどの男の像が、祭壇の奥に飾られていた。また、祭壇の側の床にはひっそりと扉が設けられている。
こっちの扉は地下室行きかな。とりあえずメモ
“裏切り者を告発せよ”
告発ねぇ。裏にもなんか書いてあるな
“処刑せよ、処刑せよ。裏切り者は赦されぬ”
あー、分かる分かる。うちでも見せしめ的に処刑だし
紙の下には鍵か
天秤……、は普通の天秤かな。ちょっと古いけど。なんでひと口分のパンが片方の皿にだけ載ってるんだ? ぱっさぱさになってんじゃん
天秤にもなんか書いてあるな
“あの人のために私は在る”
中位以下くらいの魔術師が好きそうなセリフー
なんか殴り書きなのが普通に怖いわ。たぶん血で書かれてるし。メモはペンなのに。こういう狂気っぽいところがさぁ、苦手なんだよなぁ。はぁ
本当は出入り口のはずの後ろは壁。スマホが圏外なのはいつものことか。魔術で閉じられた空間で確定
地下にひとりで行くのは怖いな。右か左の扉から行くか
どーちーらーにーしーよーうーかーなー、右!

 静謐な空気を掻き乱すよう、わざと声を張り上げて進路を決定する。



 右側の扉には鍵がかかっていた。祭壇で手に入れた、くすんだ金色の鍵を使用すると難なく開く。
子ども?
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登場人物紹介

【九曜 蓮人(くよう れんと)】

失踪した姉を探している大学生。

Barエンドロールにて怪奇事件の話を聞き、魔術の存在について知ることになる。


【ツァック】

自称・マフィアの男。

過去にも数度、魔術がらみの怪奇事件にかかわってしまっている。

行方不明の妹分、ヒノを探している。

【マスター】

Barエンドロールのマスター。穏やかな初老の紳士。

魔術がかかわる怪奇事件に巻きこまれ、生還した者から話を聞くことを趣味としている。

ドリンク一杯サービス中。

【少年】

ツァックが目覚めた礼拝堂で出会った少年。自分の名前を含めたすべての記憶がない。

巷で噂の連続失踪事件の鍵を握っている……?

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