@ぷんぷん怒ってお尻がわれる

文字数 700文字

 他人様のことは知りません。温泉もふくめて、公衆浴場というものには行きませんし、生まれたときの記憶もありませんし、家族は--あたりまえですが--僕の前で裸になりません。
 だからたとえ僕以外の人間のお尻がわれていたとしても、僕の与り知るところではありません。興味もありません。
 ただ僕には蕩尽癖というのがあって、とにかくお金を遣いまくるのです。菰に座していた女人のお茶碗に入りきらないだけの喜捨をしたことがあります。
 スカイダイビングをしたときには、現ナマをいっぱいに詰めたトランクを地上へと投棄したことがあります。喜捨に当たった方は落命し、絢爛たる葬儀で送られたそうです。
 そんな僕がぷんぷんした出来事。
 僕は雷になりたいと、ある日の午後、切望しました。今度こそ、蕩尽という名にふさわしい、「財産ぜんぶ遣ってみた」に値する希求をもったのです。
 どうしたらこの願いを成就できるでしょう。神様に会うことです。それが第一歩です。
 その場に辿り着くまでには、多くの人の助言を必要としたので、胡乱な方々に金品巻き上げられ、ついに蕩尽だけは成し遂げたのです。
 ご存知のとおり、神様は目にみえません。姿をもたないからです。僕にわかるのは「とにかく僕はその場にいるのだ」ということだけです。多くの方々が確約してくれたことですから、辿り着いたことだけは、火をみるよりも明らかだったのです。
 風雨荒れ狂う山頂でした。僕は願いどおり、たった一瞬だけではありますが、雷になったのです。
 黒焦げになった姿で目覚めてみれば、どうでしょう? あんなにあざやかで美しい雷だった僕は、われたお尻の持ち主に堕していたのです。
 ぷんぷん。
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