第2話 おじさんたちの、自然の慈しみ方

文字数 666文字

◇◇ おじさんたちの、自然の慈しみ方 ◇◇



―――怪しげな、売れそうもない題名ですが、ま、最後までお付き合いください。




炎天下、西会津の流紋岩を割る。

パカーン!

とたんに、ノーブル・オパールが現れ、鮮烈な七色の光を放つ。

突然飛び出した光の残像がツーンと糸を引く。鮮烈な'匂い'を残す。

炎天下、その鮮光にくらんで、目を瞑る。そして、その幻影に酔う..。



また、長野県木崎湖近くで、石英斑岩を割る。

ガツン!

新鮮な切り口から、ムーンストーンが青白い閃光を放つ。

強い日差しの下、石をくるくる回す。

青いネオンが、つぎつぎと変化し、その目くるめく妖しいきらめきに、心を奪われる。



高校の地学教師をしている友人と、伊豆に行った時のこと。
車を停めた、すぐ横の崖の一部に、石英とセリサイト脈があって、その中にパイライト(硫化鉄)とともに金の細粒が見られるようだ。
二人でルーペをもち、まるで岩を舐めるかのように、顔を路頭に近づける。硫化物の臭いがする。
つばでぬらしてみる。パイライトなら、輝きが沈むはずなのだが...

「あっ、きてますね。」

「こんな身近な場所に、金の露頭があるんですねえ。近くの○○鉱床の○○ひの続きですかね。」

「たぶん..。稼業できるかどうかは別として、ここは貴重です。ま、私有地でしょうし、黙っていましょう。」

「ええ..。」



こんな具合に、石好きのオジサンたちは、石を割って瞑目したり、石を回してニヤニヤしたり、露頭をなめるように顔を近づけたりして、自然の美を慈しむのです。

そう、中身は子供。永遠のロマンチストなのであります。




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