第5話 不具合

文字数 733文字

◇◇ 不具合 ◇◇


若いころ、友人のKが、憧れのドイツ車のB〇〇を手にした。

ところが、日本の多湿の気候が悪かったせいか、入手後、五年もたったころから、ちょこちょこ、不具合が出始めた...

イグニッションコイルに始まり、パワーウィンドウレギュレーター、パワーステアリング、オイル漏れ...と、際限がない。不具合のオンパレードだ。

その都度のしかかる、びっくりする修理代。

意気揚々としていたKも、すっかり意気消沈。顔もだんだん青ざめてきた。


見るに見かねて、彼を励まそうと、私は声をかけた。

「B○○持ってるなんて、すげーじゃん。俺なんか、オーナーになるのは10年は無理だな。腐っても鯛。羨ましいなあ...。」

すると、友人は

「『腐っても鯛』と『腐っている鯛』とでは、ちがう..」

思わず口から出た名言(迷言?)。

一拍おいて、二人で、顔を見合わせ、笑った。



また、ある時、病気の話になった。

「1000人に1人の病気が、仮に、1000種類あったら、一人1個ずつ持っていることになるんじゃないか?」

そしたら、Kは、また、面白いことを言った。

「そんなの、一人で何個も持っているやつがいるものなのさ」

うーん、それも真実なのかもしれないなと、妙に納得した。



不具合は、不均等なタイミングで、集中して発生する。

それは、ふつう管理限界に納まっていない場合がほとんどなので、理由の説明には事後的に「想定外の...」という便利な形容句が用いられる。
そのさい、不具合の具合(?)より、発生した「タイミングの悪さ」の面が強調される場合がある。劣化の想定はできるが、発生タイミングの想定は難しい。

貧乏くじを引くのはいやだが、不具合の発生自体は普遍的なこと。
けれど、外車の修理代は、財布にはイタイだろうなあ...。


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