第7話 根元には

文字数 857文字

◇◇ 根元には ◇◇


大昔、秩父の寄居というところで砂金取りをしたことがある。
河原でパンニングをしていると、地元の人が現れて、川がカーブする内側の草の「根元」の土を洗うといいヨ、と親切に教えてくれた。
やってみると、大部分は、砂金の細粒と紛らわしい金雲母(Mg>Feの黒雲母)。しかし、1時間やって、ようやく、食卓塩の塩の結晶の半分くらいの大きさの砂金が、2粒とれた。これでも自分にとっては、大きなお宝である。
以降、「根元には、お宝が眠っている」―――が、私の経験則となった。

旧石器時代の遺跡として、全国で一番早く国に指定された遺跡(岩宿ではない)を訪ねたときのこと。
「行っても何もないよ」と埋蔵文化財センターの人に言われたが、行ってみると、指定地域外の道路の法面に露わになっている木の根元の間に、黒曜石の石核が何個か露出していた。
そこまで、発掘は行われなかったのだろう。

また、源平の合戦のさい、食料基地となったという伝承のある神社を訪れた時のこと。
境内の朽ち果てた木の根元に、スレート片が顔をのぞかせている。拾い上げてみると、どうも、須恵器片のようだ。
市の埋蔵文化財センターに持っていき伺ったところ、
「ああ...、これは9世紀ごろの須恵器片ですね」といわれた。
須恵器片をもちながら、ああ、やはり、あの神社前の道は、古代の官道で、義経とか和田義盛とか梶原源太とか佐々木高綱とかが馬で通ったんだ...と、想像を膨らませた。掌(たなごごろ)に、地についた、実感としての歴史がある。

カワセミもそうだった。
写真撮影しようと、20km離れた'カワセミの名所'に5回通ったことがあったが、タイミングが悪かったせいか、会えずじまい。
ところが、後日、たった400m離れた近くの川で、カワセミをみつけた。



街中を流れる川なのに、3羽もいる。その後、家から50mしか離れていない町内の川でも見かけた。
なんだか、青い鳥のチルチルミチルを地で行く話だが、求める心があれば、幸せのカケラは、すぐ足元にも転がっているようである。


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