第17話 初めて気を失った時の話

文字数 720文字

◇◇ 初めて気を失った時の話 ◇◇


銀行に内定後、三浦半島の研修所で合宿が行われた。
入社試験と面接、そして合宿中の様子とで、配属先の店舗が決まるらしい。
ロール・プレイング、討論、グループ活動等々、すべての面で、評価される。


入浴時も、油断ならなかった。
湯船で、覚えたての社歌を、みんなで面白可笑しく、歌っていた。
自分も湯船につかって、合いの手を入れていたが、ふと、右をみたところ、湯けむりのむこうに、人事課長の顔があった。
うげっ!


最終目。マラソン。
研修所の周りは、起伏に富んだ三浦半島である。アップダウンがかなり激しい。
私は熱っぽかったが、そんなことは構っていられない。無謀にも、6KM走った。
それでも、全体の中で、前から1/4くらいでゴールした。
研修所前に戻ると、吐いた。吐いた。吐いた。そして、気を失って倒れた。
後は、記憶が飛んでいる。
研修所の玄関の天井が、一瞬の記憶に残っている。気付いたらベッドの上だった。38.5℃の熱があると告げられた。


結果、配属先は本店営業部ではなかったが、支店長が役員待遇の支店に配属された。

いまにして思えば、湯船で歌の輪に加わっていなかったら、逆に、問題になっていただろうし、また、ふつうに前から1/4でゴールしてても、アピール度(?)が中途半端だったかもしれない。

それにしても、無謀なことをしたものだ。

一年後、新入行員の新人研修のチューターになったところまでが、順調だった。

その後、いつの間にか、次長グループに組み込まれ、目立ちすぎたからか、他派閥からはあらぬ噂を流されるなど、いい勉強をさせてもらった。あっはっは。


あれ?...失ったのは、'気'ではなくて'正気'?

正気を失う図太さも、時に、必要かもしれぬ。


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