第6話 ちぐはぐな..

文字数 754文字

◇◇ ちぐはぐな.. ◇◇


ずいぶん、昔のこと。スピード違反で、捕まったことがある。


しまった!ネズミ捕りに捕まってしまった!

旗を持った警官に、路肩に誘導される。

「はい、速度オーバーね。」

  「どうも、すいません。」

「ここ、制限速度、何キロだと思ってんの?」

  「50キロ..」

「60キロ!!」

  「はあ...すいません..」

「はい、減点と、罰金、払ってくださいね!」

  「すいません、はい、どうぞ。」

私は、なけなしの1万円札を、恐縮の気持ちから、両手でサッと差し出した。

警官は、一瞬、目が点になり、次の瞬間、チッ!という表情をして

「あんた、違反したこと、ないの?」

警官は、あきれ顔だ。

声こそ出さないが、顔には―――この違反初心者(?)めがあ!―――という気持ちが、ありありと出ている。

私は、恐る恐る、

  「..はい、すいません..」

「振込み!振込ね!銀行か郵便局で。コンビニはだめ..」

  「ご丁寧に、どうも、ありがとうございます。」

私は頭を下げた。

「いや......気をつけて..。」

警官は、シブイ表情だ。まるで、毒気にあたったかのような..。


はたして、わたしは、警官をからかった確信犯なのか??




手術後の体験談もある。30年ほど前のことだ。

声帯ポリープの切除手術が終わった直後、麻酔から覚ますために、声をかけられた。

「○○(私の名前)さん、○○さん、起きてくださあい!大丈夫ですかあ?!」

頬をパシパシたたかれる。

半分、覚醒していた自分は、元気なところを見せなければ..と思い、

「はい、大丈夫です!」

周りの慌てること、慌てること。

「ああああ...声、出しちゃ、だめ!だめ!」


だったら、声のかけ方、考えろよと、思った。

以降、この話は、新しく会う医者との、話の枕に使うこととしている。

ここで笑う医者は、いい医者だ。




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