ミンチ多めのコロッケは美味い

文字数 1,834文字

 なんやかんやで地球防衛部に入部した宗介であったが、帰宅後に冷静さを取り戻しつつあった。
はぁぁ……。
(あーもうなんで地球防衛部なんてものに入ったんだろ。全然そんなつもりなかったのに……)
 下心である。
まったく……僕も冷静に考えてよ……。

あんな集団に入ったら僕まで変人扱いされかねないのに何してんだろ……。

どういうつもりだよホント……。

 下心である。
 ――ピンポー―ーン。
あ、帰ってたんだ。

お帰り、宗ちゃん。

ん。ただいま、栞姉。
 鈴沢栞はさも当然のように宗介宅に上がり台所へ向かう。

 その手には食材が入ったビニール袋が。

ちょっと待っててね。

すぐに夕ご飯作るから。

あ、僕も手伝うよ。
ありがとう。

じゃあ、ジャガイモを洗って茹でてくれる?

 二人は慣れた手つきで料理を作り、しばらくした後、食卓に座る。
うん!

今日もご飯が美味しい!

さすが栞姉!

ふふふ。

宗ちゃんが手伝ってくれたおかげだよ。

でもいつもごめんね。

わざわざ料理つくりに来てもらっちゃって……。

気にしないで。

私も家で一人だし、ついでみたいなものだから。

それに、桜さんからも宗ちゃんのお世話をお願いされているしね。
母さん……また図々しいお願いを……。
仕方ないでしょ?

家のことを宗ちゃんに任せてたら部屋中ゴミだらけ、洗濯物だらけになっちゃうし。

しかもご飯なんてカップラーメンばっかりだし……。

大丈夫。カップ焼きそばも食べてるから。

あれには野菜が入ってるから。

サラダ枠だから。

そんなこと言ってる人に食事管理は任せられません。
それはそうと……どうだった?
ん? 何が?
学校。
!!!
 宗介はこれでもかと言わんばかりに激しく動揺した。
ん? どうしたの?
い、いやぁ……なんでもないよ……ハハハ……。
(登校初日から地球防衛部に入部したなんて……言えるわけないよ……)
いい学校だから、きっとこれから楽しくなると思うよ。
明日からは一緒に登校しようね。
いや大丈夫だって。

それに……なんとなく、それってマズイ気が……。

 思春期の心は複雑なのである。
そんなことありません。

私には宗ちゃんをちゃんと育てる義務があるんだからね。

母親かな?
そんなわけないでしょ?

私は、宗ちゃんのお姉ちゃんですから。

まあ昔から栞姉にはお世話になってるけどさ……。
だからお友達が出来たらちゃんと紹介してよね。

変な人達じゃないか確認したいから。

やっぱり母親じゃん。
……あ、そうそう。

宗ちゃんに言っとかなくちゃいけないことがあるんだった。

うん?
基本的に宗ちゃんが誰とお友達になるかは自由なんだけどね……。
……備品室には、あんまり近付かないようにね。
!!!!!
 今日一番の動揺が心を貫いたが、悟られないようにと可能な限り冷静を装う宗介であった。
ど、どど……ど、どどど、どうして……かな?
まあちょっと事情があるんだけど……。
……って、大丈夫?

なんか顔が真っ青だよ?

おーけいおーけい……。

まだ大丈夫。平気。呼吸はできてる。僕は生きてる。生きてるから。うん。おーけい。

え? 本当に大丈夫?
ご、ごめんごめん……。

で? 備品室が……何かあるの?

うん……。

その……こういうこと言うのってあんまりよくないとは思うんだけど……。

ちょっとね……変な人が、よくいるのよ。
…………。
 めちゃくちゃ心当たりがある宗介である。
私も直接的には話したことないんだけど……その、悪い意味で有名っていうか……目立ってるっていうか……。

色々問題行動があってね……。

……例えば?
それについては色々噂があるよ。

他の生徒を拉致するとか、妙な宗教に入ってるとか、洗脳してくるとか……。

(……うん、概ね合ってる)

確か……地球防衛部、だったかな?

おかしな名前だよね。

そいつは笑えるネーミングセンスだね!

ヒューストンに知っているか聞いてみようか?

HAHAHA!!

急にどうしたの?
……とにかく、行動がすごく変でね。

突然校内放送をジャックしたり、全校集会中に壇上に上がって騒いだり……まあ、そういう感じの人なんだ。

そういう人と接すると、どうしても同じような目で見られちゃうからね。

変な噂を立てられたりすると学校生活にも支障が出るだろうし。

そりゃ……そうだよね……。
宗ちゃんって流されやすかったりするから心配なの。

だから……気を付けてね?

間違っても入部なんてしちゃダメだからね?

もっとも、地球防衛部なんて名前の部活にわざわざ入る人なんていないだろうけどね。

フフフ。

…………。
ミンチ多めのコロッケって美味しいよね。
 聞かなかったことにした。
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登場人物紹介

山田宗介。栄優学園1年。

本作の主人公。

なんやかんやで地球防衛部に入部する。

ツッコミ担当であるものの、時折暴走することも。

密かに、地球外敵性侵略者のスパイを探すことに。

桐島ひなた。栄優学園2年。

地球防衛部の創設者にして部長。

天真爛漫という名のお花畑。

正義のヒーローを夢見る。

姫野梓。栄優学園3年。

地球防衛部の副部長。

全てを包む慈愛の心を持つ女神。

桐島ひなたの数少ない理解者にして親友。

宗介を地球防衛部へ引き込んだ元凶。

鈴沢栞。栄優学園2年。

山田宗介の隣同士に住む幼馴染というより姉のような存在。

超過保護。

実はめちゃくちゃ金持ちであるが、宗介は知らなかったりする。

柊木ルシル。年齢不詳。

鈴沢家に仕えるメイドさん。

割と常識人で、辛辣なツッコミが冴える。

鈴沢栞とは主従関係にあるものの、むしろ友達に近くファーストネームで呼び合う。


須藤秋良。栄優学園1年。

何かしら部活に所属しなければいけないらしく、幽霊部員として入部。

あまり心を開かない感じ。

しかしながら、どうやら秘密があるようです。

エリカ・ミュラー。栄優学園2年。

外国からの留学生。

半片言を駆使するが、実は日本語ペラペラとの噂も。

美人ではあるが、時折裏の顔がチラホラと。

冴橋響。栄優学園1年。

地球外敵性侵略者の捜索を宗介に依頼した人物。

世界的組織の一員らしいが、詳細は不明。

ついでに実年齢も不明。

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