家族会議をしよう

文字数 1,577文字

 山田家、リビングにて。
宗ちゃん、お話があります。
急にどうしたのさ栞姉。

……っていうか、音もなく家に入るのはさすがにやめてほしい。

それは今はいいの!

家族会議を開催します!

母さんもいないのに家族会議って言われても……。
そう言うと思って、今日は連れてきたの。
はぁー……なんだって私まで……。
あー、ルシルさんお久しぶりです。
うん、久しぶり宗介。

ちょっと背が伸びた?

すぐにルシルさんを追い越して見せますよ。
言ってろ、ふふふ。
二人でイチャイチャしない!!

なんか私よりよっぽど姉弟っぽい感じも禁止!!

そんなこと言われてもねぇ……。
で? 

ルシルさんまで連れてきて、何を話すつもりなの?

当然、部活動のことです。
単刀直入に言います!

宗ちゃん! あんな部活、すぐに辞めた方がいいよ!

ホントに単刀直入だね……。

それについては、前に言ったはずだよね。

だ、だから改めてってことで……。
それなら改めて言うけど、今更抜けるつもりはないからね。
(今更退部なんてしたら、冴橋さんに何て言われるか……それに……)
 宗介の脳裏に、部員達の顔が思い浮かぶ。
…………。
(50億!!)
 彼は自分に正直なのである。
宗介、あんたもちょっとは考えなさいよ。
えええ……ルシルさんまで?
ルシル……。
部活が女子ばっかりになったから、栞は不安になってるの!

宗介が取られるんじゃないかって!

わぁーーわぁーー!!

な、何言ってるの!?

もういい加減まどろっこしいから私が全部言ってあげるわよ。

毎回こんなんに連れ出されてたんじゃ掃除もできないし。

それってあれ?

彼女ができるかもーみたいな心配?

意外に察しがいいじゃない。

実際に美人に美少女の女子ばっかりなんでしょ?

その可能性はないわけ?

ホントにズバズバいくね……。
確かに綺麗な人は多いけどさ。ぶっちゃけ、今はそれどころじゃないんだよね……。
(見えない恋より……見える金!)
 彼は現実主義であった。
そ、そっか……それなら……。
それなら、栞のことはどうなのよ。
 ルシルは一切の遠慮もなくフルスイングした。
ル、ルシルっ!!??
いや、栞姉も十分に綺麗でしょ。

そんなの聞くまでもなく。

そ、宗ちゃんったら……。
 まんざらでもない栞であった。
じゃあもう付き合っちゃえば――。
ルシル、ちょっといい加減にして。
 凄まじい圧が込められた声に、ルシルは舌を出して視線を逸らす。
付き合う……栞姉と?

うーん……。

 真面目に考え始める宗介に、栞達は困惑する。
ちょ、ちょっと宗ちゃん……?
これは意外な展開ね……。

こういうのって、不自然過ぎるくらい聞こえてないとか、聞かなかったフリして茶を濁すとかのが一般的じゃないの?

どこの一般なのさ、それ。

そこまで言うならそんなこと言わなきゃ良かったのに……。
僕も栞姉も高校生だし、もう少ししたら社会人になるわけだよね?

それなのに、ずっとこんな感じで過ごすわけにもいかないだろうし……。

宗介、あんたいくつなの?

達観し過ぎててちょっと引くわ。

 彼は現実主義であった。
そ、宗ちゃん……?

ちょっと……待って……。

僕なりに栞姉との今後の関係については、前々からちゃんと考えてるんだから。

それを踏まえて、今の段階での考えを言って欲しいなら言うよ。

僕は、栞姉と……――。
わ、私そろそろ帰る!!

またね宗ちゃん!!

 耐えきれなくなった栞は、慌てて山田家を飛び出して行った。
……あんた、こうなるって分かってて言ったでしょ。
さて、どうだろうね。
食えなくなったわね、宗介も。

……じゃあ、私もそろそろ帰るわ。

送ろうか?
すぐ隣だし必要ないわよ。

気持ちだけ貰っとくわ。

 そして、ルシルもまた帰っていった。
……はぁぁ、勘弁してよ……。
(そういうの、意識しちゃったら色々やりにくくなるんだしさ、ホントに……)
 確かに宗介は現実主義であるが……。
 ……思春期真っ只中にいることもまた、事実なのであった。
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登場人物紹介

山田宗介。栄優学園1年。

本作の主人公。

なんやかんやで地球防衛部に入部する。

ツッコミ担当であるものの、時折暴走することも。

密かに、地球外敵性侵略者のスパイを探すことに。

桐島ひなた。栄優学園2年。

地球防衛部の創設者にして部長。

天真爛漫という名のお花畑。

正義のヒーローを夢見る。

姫野梓。栄優学園3年。

地球防衛部の副部長。

全てを包む慈愛の心を持つ女神。

桐島ひなたの数少ない理解者にして親友。

宗介を地球防衛部へ引き込んだ元凶。

鈴沢栞。栄優学園2年。

山田宗介の隣同士に住む幼馴染というより姉のような存在。

超過保護。

実はめちゃくちゃ金持ちであるが、宗介は知らなかったりする。

柊木ルシル。年齢不詳。

鈴沢家に仕えるメイドさん。

割と常識人で、辛辣なツッコミが冴える。

鈴沢栞とは主従関係にあるものの、むしろ友達に近くファーストネームで呼び合う。


須藤秋良。栄優学園1年。

何かしら部活に所属しなければいけないらしく、幽霊部員として入部。

あまり心を開かない感じ。

しかしながら、どうやら秘密があるようです。

エリカ・ミュラー。栄優学園2年。

外国からの留学生。

半片言を駆使するが、実は日本語ペラペラとの噂も。

美人ではあるが、時折裏の顔がチラホラと。

冴橋響。栄優学園1年。

地球外敵性侵略者の捜索を宗介に依頼した人物。

世界的組織の一員らしいが、詳細は不明。

ついでに実年齢も不明。

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