女神の罪

文字数 1,936文字

手伝ってくれてありがとう、宗介くん。
いえいえ、このくらいのことはどうってことないですよ。
 とある日の昼休み、そこには、大量の資料を持つ梓と宗介の姿があった。
(これはチャンスだぞ山田宗介……梓先輩と仲良くなる、絶好のチャンスだ!)
梓先輩! 残りの荷物も……!
 その時、突然宗介の体は何かにぶつかり吹き飛ばされる。
ふぎゃああ!!
 倒れ込む宗介と、飛び散る資料。

 すると突然現れた男子生徒が、その資料を瞬く間に集め始めた。

姫野先輩!

その資料、俺が持っていきますよ!

え? で、でも……。
大丈夫ですって!

じゃあ!

 半ば強奪するように資料を手に取った男子生徒は、そのまま、職員室まで一直線に走り去っていった。
宗介くん、大丈夫ですか?
え、ええ……なんとか……。
とりあえず、資料運びも終わりましたので休憩しませんか?
そ、そうですね……。
では、飲み物を買って――。
 そこまで言ったところで、宗介は再び吹き飛ばされた。
うおっほぅ!?
姫野さん!

良かったらこのジュースどうぞ!

 湧いて出た男子生徒が飲み物を差し出す。
先輩!

俺のをもらってください!

お前ら引っ込んでろ!

姫野! このお茶の方が飲みやすいから!

 集まりまくる男子生徒と貢物のように差し出される飲み物。

 カオス極まるその光景は、まさに神を拝む使徒の如く。

 その後も、どこに行っても何をしてても梓の元には男子が寄りつき、その度に宗介は吹っ飛ばされ、供物だけが増え続けていった。
 そして宗介達は、やむなく部室へと避難する。
酷い目に遭った……。
大丈夫ですか?
え、ええ。なんとか……。
(しかし梓先輩の人気が、これほどとは……)
 これぞ姫野梓という超美人のなせる業か。

 地球防衛部という防波堤がなければここまで男子を狂わせるという事実を、宗介はしみじみ思い知る。

梓先輩って、前からこんな感じにされるんですか?
ええ……。

私も申し訳なくて断ろうとしているんですけど、いつも押し切られてしまって……。

それはまた、難儀ですね……。
宗介くんにも迷惑をかけてしまいましたね。

すみませんでした。

いえ、僕は大丈夫なんですけど……。
(あーでも、あれって思いっきり僕もしてたことだしな……)
 我が身を省みる宗介である。
……宗介くんは、ひなたのこと、どう思いますか?
どうって……どうしたんですか? 突然。
ふふふ、ごめんなさい。

でも、私も今年で卒業しますし、ひなたが他の部員の方を引っ張っていくことになりますよね?

でもあの子のことを理解してもらうのは、たぶん難しいので……。
……ちょっとだけ、心配なんです。
(まあ、言いたいことは凄くわかるなぁ……)
せっかく正式な部活動になったのに、来年にはなくなってしまうのは勿体ないですし……。
……でも、宗介くんがいれば、あの子もたぶん大丈夫な気がするので。
僕ですか?

あんなに嬉しそうに学校にいるひなたを見るのは、本当に久しぶりなんですよ?

ひなたの笑顔を取り戻してくれたのは、間違いなく、宗介くんですから。
そう……なんですかね?
はい。

できればこれからも、ひなたと仲良くしてあげてくださいね。

あの子の大切な、地球防衛部を守るためにも。

わかりました。

でも、それはちょっと違うかもしれませんよ?

違う、ですか?

もちろん梓先輩が来年にはいなくなってしまうのは事実ですけど……。

それでも、ひなた先輩が好きなのは、たぶん、ただの地球防衛部じゃないんだと思います。
梓先輩がいる地球防衛部が好きなんだと思いますよ、きっと。
そう、ですか……そうだと、嬉しいですね。

そうですよ!

僕も手伝うので……地球防衛部、頑張りましょう!

はい。

ありがとうございます、宗介くん。
 そして二人は、部室を出る。
 その瞬間、大量の男子が梓を取り囲んだ。
姫野さん、何か手伝うことはありませんか!?
先輩! 用件があるなら俺に!
 必死にアピールする男子達。
 すると梓は、優しく微笑んだ。
皆さん、ありがとうございます。

お気持ちは嬉しいですが……。

 そして梓は宗介の横に立つと、彼のことを見つめた。
せ、先輩……?


私には、彼がいるので……。
!!!???
!!!!
 梓を除くその場にいた全員が衝撃を受けた。
ですので、もうお手伝いは大丈夫――。
う、うわあああああ!!
嘘だああああああ!!
 そして集まっていた男子達は、一斉に逃げ帰ってしまった……。
……あら? みなさん、どうしたんでしょうか……。
 残された宗介は、茫然と梓を見る。
あ、あの……先輩?
これからもよろしくね、宗介くん。
……梓先輩、ちょっとたぶん、色々マズイです。
???
 今後のことを考えると真っ白になる宗介。
 ……彼の危惧する通り、この日、学園に超絶ビッグニュースが飛び交うこととなる。
 学園の女神こと姫野梓に、彼氏が出来たらしい……と。
ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)

登場人物紹介

山田宗介。栄優学園1年。

本作の主人公。

なんやかんやで地球防衛部に入部する。

ツッコミ担当であるものの、時折暴走することも。

密かに、地球外敵性侵略者のスパイを探すことに。

桐島ひなた。栄優学園2年。

地球防衛部の創設者にして部長。

天真爛漫という名のお花畑。

正義のヒーローを夢見る。

姫野梓。栄優学園3年。

地球防衛部の副部長。

全てを包む慈愛の心を持つ女神。

桐島ひなたの数少ない理解者にして親友。

宗介を地球防衛部へ引き込んだ元凶。

鈴沢栞。栄優学園2年。

山田宗介の隣同士に住む幼馴染というより姉のような存在。

超過保護。

実はめちゃくちゃ金持ちであるが、宗介は知らなかったりする。

柊木ルシル。年齢不詳。

鈴沢家に仕えるメイドさん。

割と常識人で、辛辣なツッコミが冴える。

鈴沢栞とは主従関係にあるものの、むしろ友達に近くファーストネームで呼び合う。


須藤秋良。栄優学園1年。

何かしら部活に所属しなければいけないらしく、幽霊部員として入部。

あまり心を開かない感じ。

しかしながら、どうやら秘密があるようです。

エリカ・ミュラー。栄優学園2年。

外国からの留学生。

半片言を駆使するが、実は日本語ペラペラとの噂も。

美人ではあるが、時折裏の顔がチラホラと。

冴橋響。栄優学園1年。

地球外敵性侵略者の捜索を宗介に依頼した人物。

世界的組織の一員らしいが、詳細は不明。

ついでに実年齢も不明。

ビューワー設定

背景色
  • 生成り
  • 水色