正義の心に目覚めし少年

文字数 1,639文字

ともかく! 僕はまだ地球防衛部に入るなんて一言も言ってませんから!

そんなぁ……。
…………。
ひなた、悪いんですけど、山田くんと二人で話をさせていただきませんか?
!!!

う、うん……。

わかった……。

 そしてひなたは一度部屋を出る。

 残されたのは宗介と梓。

 突然湧いて出た超美人とのマンツーマンに、宗介は絶賛ドギマギしていた。

え、ええと……どう、したんですか?

……今日は本当にすみません。

何も知らない田中くんを私達のことに巻き込んでしまって……。

い、いえ……。

僕の方こそ、先輩に変な期待をさせてしまって申し訳ないところもありますし……。

……ひなた、少し変わっているでしょ?

いえ、そうでも……
(……ないはずがないか)
 それだけは確信している宗介である。

ひなたは小学校の頃から知っているんですが、あの子、昔からああなんです。

だからなかなか友達もできなくて……悪い子じゃないんですけど……。

…………。

……入部の件について強制するつもりはありません。

ひなたには私から話をしますので、気にしないでください。

は、はぁ……。
 そしてひなたは再び部屋に戻る。

ひなた、山田くん、今日は帰してあげてくれませんか?

で、でも……やっと入部してくれそうな人を見つけたのに……。
…………。

あなたの気持ちはわかりますけど、入学したばかりの山田くんに無理を言ってはいけないでしょ?

…………。

大丈夫ですよ。きっと他にも入部してくれる人はいますから。私も一緒に探しますから。

だから……ね?
……うん、わかった……。
…………。

山田くん、今日はありがとうございました。

もしも少しでも興味を持ったら、ぜひ遊びに来てくださいね。

ほら、ひなたも。
うん……。
山田くん……またね。
(いやめちゃくちゃ帰りにくいんですけど!)
(え!? なにこれ!? なんか僕がめちゃくちゃ悪者じゃん! めちゃくちゃ期待裏切ってる感じなってるじゃん! めちゃくちゃ加害者じゃん! どうして!?)
(……ああもう! なんかホント! ごめんなさい!!)
 宗介は絶賛良心の呵責に苛まれていた。
……それはそうと、ひなた?

先日勝手に物品を発注しませんでしたか?

ふぇ?

……あー、そういえばしてたかも。

まったく……。

先生から連絡がありましたよ。正式な部活動じゃないのに勝手に発注したらダメじゃないですか。部費だってないのに。

届くまでに新隊員をゲットすればいいかなーって。
ダメです。

正式な部活動として立ち上げたいなら、きっちり予算を考えて計画的に発注してください。

仮に部費が下りたとしても、勝手に注文なんてしていたらあっという間になくなってしまいますから。

ごめんなさい。
仕方ないですね。

先生には私の方から謝っておきますから。

……それにしても、ラバースーツなんてどうするつもりだったんですか?
ユニフォームにしようと思って!

地球を守るヒーローの衣装は必要でしょ?

梓の分も頼んでたよ! 二人で着ようよ!

!!!!!
 宗介は両の眼をカッと見開く。
もう勝手なんだから……。

とにかく、部費が下りない以上返品するしかありませんので諦めてください。

はーい……。
……あの、ちょっといいですか?
はい? どうかしましたか?
あと1人……あと1人で、正式な部活動として申請できるんですよね?
うん、そうなんだけど……。
もしも正式な部活動になれば、部費も出るようになって活動の幅が色々広がるんですよね?
それはもちろん、そうですね。
…………。
……山田くん?
――……やります。

僕、地球防衛部に入部します。

入部させてください!

ほ、本当ッ!?

はい! よろしくお願いします! 隊長!
やったぁぁぁあああ!!
 ひなたは部屋の中を万歳しながら飛び回って喜びを爆発させた。

 

……あの、いいんですか?
はい。自分で決めたことなので。
もちろん私も嬉しいですし大歓迎ですけど……どうして急に?
……理由なんて、一つに決まってるじゃないですか。それは……。
それは?
――……地球を愛する心、ですよ。
 清々しい笑顔で迷わず嘘をつく宗介であった。
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登場人物紹介

山田宗介。栄優学園1年。

本作の主人公。

なんやかんやで地球防衛部に入部する。

ツッコミ担当であるものの、時折暴走することも。

密かに、地球外敵性侵略者のスパイを探すことに。

桐島ひなた。栄優学園2年。

地球防衛部の創設者にして部長。

天真爛漫という名のお花畑。

正義のヒーローを夢見る。

姫野梓。栄優学園3年。

地球防衛部の副部長。

全てを包む慈愛の心を持つ女神。

桐島ひなたの数少ない理解者にして親友。

宗介を地球防衛部へ引き込んだ元凶。

鈴沢栞。栄優学園2年。

山田宗介の隣同士に住む幼馴染というより姉のような存在。

超過保護。

実はめちゃくちゃ金持ちであるが、宗介は知らなかったりする。

柊木ルシル。年齢不詳。

鈴沢家に仕えるメイドさん。

割と常識人で、辛辣なツッコミが冴える。

鈴沢栞とは主従関係にあるものの、むしろ友達に近くファーストネームで呼び合う。


須藤秋良。栄優学園1年。

何かしら部活に所属しなければいけないらしく、幽霊部員として入部。

あまり心を開かない感じ。

しかしながら、どうやら秘密があるようです。

エリカ・ミュラー。栄優学園2年。

外国からの留学生。

半片言を駆使するが、実は日本語ペラペラとの噂も。

美人ではあるが、時折裏の顔がチラホラと。

冴橋響。栄優学園1年。

地球外敵性侵略者の捜索を宗介に依頼した人物。

世界的組織の一員らしいが、詳細は不明。

ついでに実年齢も不明。

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