決意の瞬間

文字数 1,765文字

さっそくですが、宗ちゃんは今この時をもって地球防衛部を辞めさせていただきます。
え、えええ~!?

なんで!? どうして!?

理由を述べよ!

あれ? なんか既視感。
確かに一度は入部したかもしれないけど、宗ちゃんは世間に疎くて断れない性格だし冷静に判断できなかったと思うから……。
でもでも!

いつもご飯を美味しそうに食べたり食器の後かたずけをしてくれたりもする優しい男の子なんだよ!

栞姉は何の話をしてるの?
……鈴沢栞さん、でしたか?
……そうですが……。
私は、地球防衛部の姫野梓です。


話を聞く限り、鈴沢さんは山田くんのことを大切に思っているんですね。
姉ですから当然です。
姉じゃないけどね。
宗ちゃんのことに関しては、まずは姉である私に話を通してください!
姉じゃないけどね。
ご心配をかけてしまったのなら謝ります。

ただ一つだけご理解してもらいたいのは、私達としても、入部や退部について強制するつもりはありません。

あくまでも、山田くんの意思を尊重するつもりなんですよ。
そうそう!

地球を愛する心が大切ってことだよね!

ひなた。

ちょっと黙ってて。

……姫野先輩、でいいですよね?

じゃあ入部はあくまでも宗ちゃんの意思であって、部は関係ないとでも?

そんなことを言うつもりはありません。

ただ、山田くんの気持ちを確かめてみては……という話です。

もちろんここでは山田くんも話しにくいでしょうから、今日はもう帰宅ということで、ご自宅に帰ってからでも……いかがですか?
……そうします。
はい。
……というわけで山田くん。

今日はもう帰宅してください。

はい……。
えええ~!?

山田くん帰っちゃうの!?

ダメですよ、ひなた。

部活動はご家族の許可をもらってからというのが条件ですから。

ちゃんとした部活にするためにも、山田くんは今日は帰します。

いい?

……はぁーい。
……とりあえず、お先に失礼します。
みなさん、さようなら。
 そして宗介と栞は部室の外へと出る。
良かったぁ……。

話が通じなかったらどうしようって思ってたから。

栞姉、さすがに部室に突撃するのはやり過ぎなんじゃないの?
そんなことありません!

そもそも、あれだけ関わっちゃダメだって言ったのに!

たった一日ですっかり噂になってるの、知ってるでしょ?
いやまあそうなんだけどさ……。
……ねえ宗ちゃん。

もしかして、戻りたいの?

戻りたい……うーん、どうだろう。

ただ一日で退部ってのも、なんかカッコがつかないなぁって……。

……宗ちゃんが意外に真面目ってのは知ってるけど、今度ばかりはお姉ちゃんの言う通りにしてて。

そんだけ評判は良くないんだから。

(確かに、長く在籍すればするほど、僕もそういう目で見られるだろうしなぁ……)
(……これを機に離脱するのも、ありっちゃありだよね)
 宗介が退部について前向きに考え始めた……その時だった。
 部室の扉の前にいた宗介の耳に、ふと、小さく声が聞こえた。
山田くん、もう来ないのかな……。

せっかく正式な部活になったのに……。

仕方ないでしょう?

部活をするとなると、山田くんだけの話じゃなくなってくるわけですし。

(先輩達の声……?)
ほら、ひなた。

そうやって落ち込んでいないで、今日の活動を決めて。

活動って言われても……。
あ、そうだ!

せっかく山田くんも帰ったし、試着してみない!?

ラバースーツ!
!!!!
 宗介は瞬時に全神経を耳に集中させる。
え、えええ?

今から?

もちろん今から!

梓!着てみてよ!

もう……仕方ないわね。

ええと……これ、どうやって……。

こう? ……あら?

……うぅーん……なかなか入らないわね……。

もうちょっとだから!

もうちょっとで入るよ梓!

…………。
あっ!

ピッタリじゃん!

うぅん……はぁ……。

ちょっと、苦しいわね……。

でもでも、すっごく似合ってるよ!
相変わらずスタイル抜群だね、梓!

体のラインがこんなにくっきりと!

!!!???
何してるの?

そろそろ帰りましょう?

…………。
……宗ちゃん?
……栞姉、先に帰ってて。
僕、部室に戻るよ。
え、えええ!?

あれだけ言ったし、宗ちゃんだってわかったはずだよね!?

これからも変な目で見られるんだよ!?

どうして……どうして地球防衛部なんかに戻るの!?
どうして?

……そんなの、理由は一つしかないよ。

地球の平和を

守りたいからさ。

 清々しいまでの満面の笑みで、真っ赤過ぎる嘘を吐き出す宗介であった。
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登場人物紹介

山田宗介。栄優学園1年。

本作の主人公。

なんやかんやで地球防衛部に入部する。

ツッコミ担当であるものの、時折暴走することも。

密かに、地球外敵性侵略者のスパイを探すことに。

桐島ひなた。栄優学園2年。

地球防衛部の創設者にして部長。

天真爛漫という名のお花畑。

正義のヒーローを夢見る。

姫野梓。栄優学園3年。

地球防衛部の副部長。

全てを包む慈愛の心を持つ女神。

桐島ひなたの数少ない理解者にして親友。

宗介を地球防衛部へ引き込んだ元凶。

鈴沢栞。栄優学園2年。

山田宗介の隣同士に住む幼馴染というより姉のような存在。

超過保護。

実はめちゃくちゃ金持ちであるが、宗介は知らなかったりする。

柊木ルシル。年齢不詳。

鈴沢家に仕えるメイドさん。

割と常識人で、辛辣なツッコミが冴える。

鈴沢栞とは主従関係にあるものの、むしろ友達に近くファーストネームで呼び合う。


須藤秋良。栄優学園1年。

何かしら部活に所属しなければいけないらしく、幽霊部員として入部。

あまり心を開かない感じ。

しかしながら、どうやら秘密があるようです。

エリカ・ミュラー。栄優学園2年。

外国からの留学生。

半片言を駆使するが、実は日本語ペラペラとの噂も。

美人ではあるが、時折裏の顔がチラホラと。

冴橋響。栄優学園1年。

地球外敵性侵略者の捜索を宗介に依頼した人物。

世界的組織の一員らしいが、詳細は不明。

ついでに実年齢も不明。

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