ハイパーなエージェント
文字数 1,383文字
動かない宗介。ざわつく教室。
ただ一人、響だけが首を傾げていた。
……これでよし。早退という大義名分が出来た以上、何も問題なかろう。
私というハイパーなエージェントを以てすれば、この程度の工作など容易く――。
先生、この子ちょっと病気なんで家まで送ってきます。
学校から少し離れた橋の下。
周囲に人の姿もないこの場所で、宗介達は足を止めた。
そういうセリフはもっと顔をときめかせてから言ってください。真顔で言われると恐怖を感じますよ。
もっとゆっくり進めるかと思ったが、けっこう。
だが急ぎ過ぎるな。
急げばいつか必ずボロが出る。焦らず、じっくりと、だ。
そもそもの話、先日の話を聞く限り、地球防衛部の内部に侵略者がいるかどうかもわからないんでしょ?
覚えていて何よりだ。
だが、やはり防衛部の動向を把握するには内部に入り込むことが確実であるが故、その可能性が最も高いと言わざるを得ない。
仮に内部にいるとしても、そんなちょっと話しただけで侵略者がわかってたら苦労はないですよ。
だが、山田くんにお願いするしかない。
引き続き頼む。
この任務を果たせた時、あなたもきっと、ハイパーなエージェントになっているはずだ。
ノーマルなスチューデントになりたいんですけどね、僕は。
って宗くん!こんなところにいるってことは、もしかして学校おさぼり!?
え、ええと……サボりってわけじゃないんですが……。
今日は私の体調が良くなくて、山田くんが送ってくれていたところなんです!
じゃあ私は学校に行くから!
宗くん、響ちゃんをお願いね!
……まさか、こんなところで桐島ひなたと遭遇するとはな。さすがに驚いた。
僕も脳がバグったのかと思いましたよ。ひなた先輩じゃなくて、冴橋さんに。
だから言ったはずだが?
私は、ハイパーなエージェントだと。
この程度の工作、朝飯前というやつだ。
工作っていうか多重人格を疑いました。まるっきり別人になってたじゃないですか。
何を言っている。
猫を被るなど、私に限らず誰でもしていることだろう。
特に女性は凄いぞ。裏ではそれはそれは凄まじい変貌をする女性も……。
女性不信になりそうなんでやめてください。
いやマジで。
ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)