今井 奈々《いまい なな》 三
文字数 678文字
夕陽が私を照らす。影が伸びて、まるで大巨人だ。これじゃ本当の化け物 だな。
難しいね、
赤い屋根の私の家が見えてきた。白い壁は、夕焼けに染まって、茜色になっている。
門を開けて、鍵を取り出す。ドアを開けると、ひょっこと覗く顔が見えた。
「わん!」
私がそう声を出すと、尻尾を振るムサシがまるで応えるように、わん! と吠えた。
ムサシは3年前に我が家に来た、柴犬。ボールとコタツが好きな、ちょっとアホな男の子だ。
ムサシという名は私がつけた。ホントは、ミヤモトと名付けようとしたが、お父さんから反対されたので、ムサシで妥協した。
「おー、よしよし。いい子だったかい〜」
玄関でわしゃわしゃと、ムサシの顔を撫でる。ムサシは笑っている。…気がする。
「お帰り」
突然頭の上に降ってきたような声に、背中がびくっと震えた。ゆっくりと首を横に向けると、そこには私を見下ろすお母さんがいた。
「た、ただいま」絞り出すように声を出す。
鋭い視線。この目、昔から苦手だった。しばらく私を見つめたお母さんは、小さなため息をついた。
「帰ったら、まず手洗いうがいをしなさい。いつも言っているでしょう。それから着替えて、ムサシのお散歩。帰ったらお風呂の掃除をしなさい。いいわね?」
「はい…。わかりました」
はあ…。ため息つきたいのはこっちだ。家なのに、まるでリラックス出来ないよ。
重い腰をあげる。
難しいね、
好き
って。それだけじゃ伝わらないこともあるんだな。赤い屋根の私の家が見えてきた。白い壁は、夕焼けに染まって、茜色になっている。
門を開けて、鍵を取り出す。ドアを開けると、ひょっこと覗く顔が見えた。
「わん!」
私がそう声を出すと、尻尾を振るムサシがまるで応えるように、わん! と吠えた。
ムサシは3年前に我が家に来た、柴犬。ボールとコタツが好きな、ちょっとアホな男の子だ。
ムサシという名は私がつけた。ホントは、ミヤモトと名付けようとしたが、お父さんから反対されたので、ムサシで妥協した。
「おー、よしよし。いい子だったかい〜」
玄関でわしゃわしゃと、ムサシの顔を撫でる。ムサシは笑っている。…気がする。
「お帰り」
突然頭の上に降ってきたような声に、背中がびくっと震えた。ゆっくりと首を横に向けると、そこには私を見下ろすお母さんがいた。
「た、ただいま」絞り出すように声を出す。
鋭い視線。この目、昔から苦手だった。しばらく私を見つめたお母さんは、小さなため息をついた。
「帰ったら、まず手洗いうがいをしなさい。いつも言っているでしょう。それから着替えて、ムサシのお散歩。帰ったらお風呂の掃除をしなさい。いいわね?」
「はい…。わかりました」
はあ…。ため息つきたいのはこっちだ。家なのに、まるでリラックス出来ないよ。
重い腰をあげる。
散歩
というワードに反応し、テンションMAXのムサシが、ちょっとウザかった。