朝日 夢莉《あさひ ゆうり》 三

文字数 602文字

 寒い。それに尽きる。

 私の住む町は、とにかく冬は本当に寒いんだ。冬は雪が降るし、地面は凍るし。

 雪が降って、ロマンチック。なんて言うけど、全然ロマンチックじゃないよ! もう雪かきホント大変だもん。

「ただいま〜」

 玄関はひんやりしている。冬の玄関と洗面所には、なるべく近づきたくない。

 一旦、リビングに顔を出す。中は暖かった。ダイニングの方を覗くと、奥のキッチンでママがご飯を作ってた。

「ママ、ただいま」

「あら、ゆーり、お帰り」

 ママは私に背中を向けたまま返事をした。夕飯の支度で忙しそうだ。着替えて早くお手伝いしなくちゃ。

 2階に駆け上がり、部屋に帰って鞄を放り出し、制服から着替える。

 今度は1階へ駆け下りて、急いでキッチンに向かう。

「ママ、ご飯作るの手伝うよ」

「あら、いつも悪いわね。じゃあ、お鍋の方お願い。私はサラダを仕上げちゃうから」

「うん。わかったー」


 グツグツと鍋の中が音を立てている。どうやら今日はシチューのようだ。こんな寒い日には、シチューを食べたくなる。なんだかお腹空いてきたよぉ〜。


 ぐ〜〜…


「ふふっ」
 

 ママの笑い声。馬鹿にされちゃった。恥ずかしい…。


「もうすぐだから、頑張ろうね〜」

「う、うん」


 ママはいつも優しい。優しくて、いっつも私の味方になってくれる。

 そんなママが大好きだ。
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