北条 瑠華《ほうじょう るか》 三

文字数 687文字

 澤木 大吾。彼はダンサーとして活動する高校生だった。
 腕っぷしも強かった大吾は、相手の方が体格が大きかったにも関わらず、三発くらいで相手をのしてしまった。
 私を助けてくれた大吾は、泣きじゃくる私にずっと付いていてくれた。
 何故だかわからないけど、不思議と心が許せた。大吾には人の警戒心を緩ませるところがあって、私はいつの間にか自分の身の上をすべて話していた。
 大吾は世界トップのダンスパフォーマーになるという夢を持っていた。なんの夢も持っていない私は、夢を語る大吾に素直に尊敬の念を抱いた。
 出会ってから、数時間。恋に落ちるのに時間はかからなかった。
 それからの私は、大吾に夢中になった。私は大吾の部屋で寝泊まりするようになり、彼の出場する大会を見に行ったり、レッスン場に足を運んだりした。
 大吾のレッスンを見ていると、トレーナーの先生にダンスに誘われた。背が高くて手足の長い私は、ダンスで映えるというお世辞みたいなものを真に受けたのだ。
 それほど乗り気じゃなかったけれど、ダンスをはじめた。理由はひとつ。大吾の世界に少しでも近づきたかったからだ。
 一緒にいられること。世界観を共有できること。それが嬉しかった。夢を語る大吾の横顔を、隣で見つめること。それが幸せだったんだ。

 でも、私の幸せは、またしても続かなかった。

 レッスン終わり。バイクで自宅に帰る途中で、大吾はトラックと衝突。病院に運ばれたけれど、そのまま帰らぬ人となった。
 幸せって、あっけないものだね。
 ドラマみたいな不幸に翻弄される私の人生。私はまた、

を失った。
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