朝日 夢莉《あさひ ゆうり》 四

文字数 985文字

【A-Project オーディション開催】

 そのワードが目に入ったのは、中学1年も終わりに差し掛かった頃だった。

 ネットで何かしらオーディション情報を検索するのが日課になっていた私は、そのワードに反応した。


 まってまって! A-Projectって言ったら、業界最大級のアイドルグループを運営する会社だよね⁉︎ Lumtère(リュミエール)とか、Sparkle(スパークル)とか、Caritas(カーリタス)なんかの有名ガールズグループが所属する、

A-Projectだよね⁉︎


 すごい有名どころだけど、倍率もめちゃくちゃ高いって聞いた。でもでも、グループ人数の多いA-Projectは、あまりオーディションを開催しないっていう噂も知ってる。


「ママーッ‼︎」


 二階の自室のベッドで横になっていた私は、勢いよく飛び起きると、タブレットを持って一階のリビングにいるママのもとへ走った。

 ママはパパと一緒にテレビを観ていた。パパがいたから話そうか迷ったけど、ママの隣に座ってタブレットの画面を見せた。

「ママ、これ」

「なあに?」

 ミルクティを飲もうとしていた手を止めて、ママが画面を覗き込んでくる。


「A-Project、オーディション…? あら、A-Projectって、あのA-Project?」

「うん、そうだよ」

 ママは私がオーディションを受けている影響もあって、芸能事務所にはそれなりの知識がある。


「オーディション? また受けるのか。もうよしなさい。こないだ落ちたばっかりだろ」


 私とママのやりとりを見ていたパパが口を出してきた。

 パパは私がアイドルになることに否定的だ。ママが言うには、芸能界に良いイメージを持ってないみたい。いつもテレビ観てるくせに。

「あなた、いいじゃない。こういうのは若い内にしか出来ないことだもの。やりたいって言うなら、経験させておいて損はないでしょ」

「また勝手なことを言うな。仮に入ったとしても、上手くいくとも限らないんだろ。夢莉の身に何かあったらどうするんだ」

 こんな感じで、パパとママの意見は真っ二つに割れている。普段は仲良しなんだけど。

 二人が言い合いしている横で、私の目はA-Projectオーディションに釘付けだった。




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