第六十六話

文字数 6,182文字

 学園長がまず行ったのは、河本をはじめとして、英雄として死んでいった卵たちの亡骸を、親の元へ帰らせてやることだった。ある程度死体は学園付属の一流医師団が縫合などで元あった形へ治すことで、痛々しかった死体を人の姿で見せてやることが出来た。
親として死に目に会えなかったこと。そして運命のいたずらによって殺された子供たちに泣きじゃくり、学校を批判する者が現れたものの。結局はそれ以外の『覚悟』をしていた親たちに諫められ、間を置かずに鎮静化する結果となった。
そして、生き残った裏切り者への処遇は、メディアで実名を出し報道、警察に突き出すことだった。どれほど自分たちが危険行為の片棒を担いでいたか、それをわからせるための処遇であったが、それを否定する者は裏切り者内にはいなかった。
今回の大騒動の結果、裏切り者たちも圧倒的な世界を垣間見てしまったがために、それ以上裏切り続ける強固な意志を保つことが出来なかったのだ。
その後押しをしたのは、待田と礼安、あるいはカルマの激闘。大した努力をすることも無く、今ある地位に文句を繕い続ける、そんな自分がどれほど愚かな存在かというのを思い知ったのだ。
どんな天才も、努力者には敵わない。ならば、その天才が今の地位に甘んじることなく努力を重ね続けたら。それこそ、まさに最強格と称された存在達。たった数人ではあるものの、彼ら、彼女らの偉大さを感じ取ったのだ。

「――本当、成り行きで始まったことだけど。結果的に……ギリギリ成功の範囲内かな?」
 学園長室で、今回の最たる功労者の礼安と信玄、そして『教会』の裏切り者である信之が集まっていた。信一郎はコーヒーを啜りながら柔らかな笑みを湛えるも、その場の空気は些か重苦しかった。ちなみに、礼安は病院から特別に抜け出している、病院服かつ車いす姿であった。
「……ごめんね、パパ。私……待田さんと戦っていた中で……ふと意識を失っちゃって」
 この場の全員、礼安が何者かによって操られ、挙句の果てに自分の体で待田を殺した――なんて、そんなこと言えるはずも無く。ただ何も出来なかったと勘違いをしている礼安を宥める以外にやれることはなかった。
 きっと、礼安の第六感である、胸中の嘘の色を感じ取る力によって、この場の全員が何か隠していることは理解していることだろう。しかし、それを特に追求しない彼女は、誰かを想う嘘が絡んでいるのだろう、そう考えていたのだ。
「――そうだ、信之君。これから……君はどうするつもりだい」
「……俺は、警察に出頭しようと思います。今まで……犯した罪は消えないわけですし」
 そんな信之の苦しそうな表情を見た信一郎は、引き出しから白紙の便箋とインクボトル、亡き妻からのプレゼントであり宝物の万年筆を取り出し、筆を取った。
 その場の全員が信一郎の行動の末が理解できなかったものの、それが理解できるのはものの数秒後。とんでもない速筆ぶりに驚きながらも、齎された結果に言葉を失うこととなる。
「これ、警察に行く際に持っていきな、こちら側として多少なりとも頑張ってくれた、そのお礼だよ」
 その便箋に記された内容は、減刑の嘆願状であった。
 信玄や信一郎の情報網から、ある程度信之の身の上は理解していた。信玄と信之、その兄弟間にあった格差、それによってもたらされた酷い虐待。それがきっかけとなり、結局は両親を殺害した。そこから多くの殺しを経験したものの、小学生高学年から中学生の頃に受けた心的外傷を加味して、情状酌量の余地があると考えたのだ。
「警察とか司法の人間に、ある程度マブがいるからね、犯した罪の重さからして減らされるのは、甘く見積もってもたかだか数年だろうが……君の頑張りのおかげで礼安は満足に戦えた。その戦いに敬意を表しようと思ってね。そんな頑張ってくれた人間を、死刑になんてさせるもんか」
 信之が受けた兄以外からの施しは、今までの人生をひっくるめてもただの一つもない。だからこそ、信之の目からは涙が溢れだしていたのだ。
「――無期懲役に近いものになるだろうが……それでもきっちり、刑期全うして。もしその時に英雄を目指したい、そう思えたら。ここに来るといいさ。その時になったら……英雄学園東京本校学園長として、君を迎え入れようじゃあないか」
 「助けて」の一言すら出せなかった、そんな信之の不器用な心。それは信一郎の優しさによって完全に融解された瞬間だった。礼安の働き掛けで防御壁は崩れ、父親である信一郎がそれを包み込む。蛙の子は蛙である。
「ありがとう――ございます……!!」
 泣き崩れる信之を、信玄が傍に寄って肩を抱き寄せる。亀裂が走り、一時期修復不可能なまで関係が崩壊していた二人が、再び『兄弟』に戻った瞬間であった。


 学生たちが、思い思いの活動を行う放課後。あの合同演習会を経験し、生き残った一年次は自主トレーニングにより精が出る。しかし、二年次の大体の生徒が死亡するか裏切ったか、そんな状況なため、二年次生徒の人数が著しく減少していた。
 どうしようか、と学園長室で一人きり思案している中。ドアを二度ほどノックする子気味良い音が聞こえてきた。「どうぞ」とだけ呟くと、入室する生徒。
 その生徒は、他でもない信玄と丙良であった。
「不破学園長、一つお聞きしたいことが」
「何だい丙良くん、改まっちゃって。この間私のこと電話口でさんざ罵ったこと謝りに来たとか?」
「いやそんな下らない話題じゃあないです」
 自身の尊厳にかかわる話題を生徒に「下らない」と一蹴されたことに心を痛めながらも、二人を高級なソファに座るよう促す。二人の表情は、信一郎のふざけた表情とは真逆の、真剣な表情であった。
「――それで、こんな放課後に一体どうしたんだい? 何か悩み事かな」
「ある意味そうかもしれませんね」
 その言葉と共に、提示されたのはとあるデータベース。そこに記されていたのは、あるプログラムを信一郎名義で不正に書き換えたとされる証拠。さらに、消去されたデータのゴミ山の中に見つかった、音声通話記録であった。
「回りくどいの苦手だから、俺っち単刀直入に聞くよ、慎ちゃん。学園長……今回の合同演習会、全て学園長自身が仕組んだもんだろ」
「一体何のことだか分からないなあ、私の名義使った誰かがやったかもしれないじゃあないか」
「信玄が提示したこれらの証拠以外にも、れっきとした証拠はあります」
 それは、内通者たちのメール。この合同演習会が始まってすぐに、学園長が目を付けた生徒たちに送られた、洗脳を無効化できる簡易バリアを展開できる、そんなインスタントアプリも添えて。
 それは、間違いなくその後の『展開』が分かり切っているからこそ、送られたもの。
 さらに、丙良が示した証拠は、学園長名義で送られた届き先不明のショートメール、そして電話の履歴。敢えて残した、そんなあからさまな履歴であったのだ。
 それらのデータを強調表示すると、提示された日付。それらのアリバイは、きっちり裏取り済みであった。
「貴方とあろう者が、学園内で仕事をしていた時間帯に、おめおめとハッキングなんてされるはずがない。それほどにセキュリティがしっかりしていなきゃあ、最高責任者たる貴方の責任問題になります」
「しかも発信元は、いずれもこの学園長室だった。メールも、電話も。言い逃れは出来ないはずだぜ」
 状況証拠と物的証拠。それらが揃っている中、信一郎に言い逃れは許されなかった。これらが見つからなかったら、のらりくらりと躱すかやり過ごすか、どちらかを選ぶ予定だった信一郎は、困ったように笑いながら白状し始めた。

 始まりは、一生徒からの目安箱への投書であった。最初はとりわけ疚しい考えは無かったものの、一つの妙案を思いついたのだ。
 それが、ただの合同演習会ではなく、『演出』を加えること。
 ただのくじ引きにも、ある程度の幅を持たせたい。しかし、素行不良の生徒と最強格が組んだところで底が知れている。この時から裏切りの可能性を思考していたがために、英雄・武器サイドのタッグはあらかじめ決めておいた。
それぞれがシナジーを生みだせる組み合わせであったが、しかし。その中身もイカサマ上等のものであった。
確実に裏切らない面子と、素行の問題で確実に裏切りそうな面子の二つに分けた。さらに、裏切った面子との戦いで確実に戦力になりそうなメンバーを固めた。それこそが、最強格のタッグ三組。裏切りばかりの疑心暗鬼ゲームとなった中でも、互いを確実に信じあえるような構成にした。
そして何より、裏切り者を凌駕する戦力を持った存在をタッグにすることで、多くの戦力が相手方に回っても、その戦いを収めることができる。組分けに関しては、主に『事後処理』を優先したが故の、アンバランスな組分け方であった。
そこについて回るのは、両方二年次の組み合わせであった鍾馗と加賀美の組み合わせ。信一郎自身、鍾馗の底の知れなさは他生徒よりも上であることを認識していた。さらに、そこに信一郎の第六感、というよりはただのヤマ勘が働き、あてがわれたのは加賀美であった。
組分けられた際、加賀美のデバイスにのみ信一郎はメッセージを送り、「困ったら丙良くんたちを頼ってくれたまえ」とだけ残していた。それは万が一、有象無象たちが裏切りを画策し、英雄陣営を襲撃した際のことを考えていたのだ。
 そして、原点の問題である「なぜ屋内実習場に『教会』が紛れ込み、あれほどの惨劇を生みだしたか」。
 その答えは至極単純、信一郎自身がおびき寄せたのだ。

「――あ、もしもし?? アンタに匿名でタレこみたいって言うか……」
 電話の応答主は、他でもない待田本人であった。
『匿名の人間が、この電話番号を知っている訳ァねェと思うんだがよ』
「まあまあ、そこは穏便に。誰から電話番号を教えられたかは……分かると思うなあ」
『……ウチの教祖か』
 その通り、とだけ笑って見せると、今現在企画している合同演習会の詳細を語り始めた。最初、待田は何のことか、そして電話の向こう側で楽しそうにしている、信一郎の底が知れなかった。しかし、次第に理解し始めたのだ。なぜルールを事細かに説明しつつ、ルールの穴を放置しているのかを。
「――ってな感じのゲームなんだよ。どうよ、待田招来君? このゲームなら、お宅の支部長の悶々とした、行き場のない復讐心も満たせるだろうし」
『……アンタ、仮にも英雄学園の学園長なんだろう? こんな性根の悪い催しごと企画して……何が目的だよ』
「簡単なことだよ、私の普段の立ち居振る舞いからして、待田君も理解できると思うなあ」
 その時、待田は電話の向こう側でけらけらと笑う不破信一郎……またの名を、瀧本信一郎という男に身震いした。たった一つの簡単な結論に至っただけで、こうも恐怖心を覚えるとは思わなかったのだ。
『――アンタ、まさか自分のところの学生を強くする、ただそれだけの純粋な目標のために……こんな血みどろの戦いを経験させようってのか』
「正解≪イグザクトリー≫! その通りだよ、待田君」
 そこに悪意は一切ない。英雄が強くなるには、近道などない。しかし回り道をしていてはいずれ敵にやられてしまう。近道以上の茨道こそ、実戦経験以外にない。
 ただ、その実戦経験以外にも、人間の醜悪な面が現れやすくなるルールをセッティングすることにより、裏切りや奇襲を常套手段として提示したのだ。英雄の正々堂々とした戦い方以外に、より幅広い戦い方、あるいは受け方を、身をもって学ぶ。本来の合同演習会の意味をそのままに、学生でありながら一人の英雄として接した結果であった。
「いつだってぬるま湯の中で手ほどきしていたら、いついかなる時も民衆を護る英雄的存在にはなれない。ダブルミーニングで弱い英雄なんて、世の中からはゴミ同然で扱われるだろうね。なら、学生時代から『かわいい子には旅をさせる』べきじゃあないか」
「――純粋な善意ってのは、純粋な悪意と表裏一体だな」
 皮肉めいた言葉をぶつけるも、当の本人には一切効いていない様子。待田は、改めて瀧本信一郎という男に恐怖した瞬間であった。

「――とまあ、これが私の白状。全ては君たち卵たちを成長させたい、ある種の親心さ」
 話を一通り聞いた二人は、信一郎の異常性を再確認した。それと同時に、信玄は怒りを露わにした。信一郎の胸倉を掴み、青筋を立てる。
「……そのために、茨城支部全体を焚き付けた、ってことかよ。信之を利用していた、ってことかよ」
「私は何も、彼らと違って殺す目的じゃあない、あくまで捕縛だよ。確かに誘い込みはしたが、それは警察と結託して支部を壊滅させていく目的が故だ。じゃあなかったら、信之君を更生させるために、減刑嘆願状なんてしたためないさ」
 逆に言うならば、そうでもしないと動かせなかったのだ。学生たち……特に、信玄を餌にしないと、信之は表舞台に出てこない。元々、信玄と信之の家庭環境は知っていた信一郎。信玄を餌にしつつ、普段そこまでやる気のないそぶりを見せる信玄の着火剤となれば、との思いで招致したのだ。
 胸倉から手を放す信玄。その表情は複雑そのものであった。
「――結局は、学園長の掌の上だった、ってことですか」
「流石に全部では無いよ、カルマの襲来に関しては、私は想定してなかった。合同演習会に部外者が乱入したなら、私が出る以外に他無い。アイツは前から知っている存在ではあったけど……正直現状だと、私以外に相対することのできる英雄はいない。私を引きずり出して少しでも感情を揺さぶりたかったんじゃあないかな」
 椅子に座りながらも、外を見つめる信一郎。今までの学園長としての、凛々しい表情から一変、今まで見たことないほどに、複雑な感情が混じっていた。その奥に隠された過去には、一切理解は及ばない。
 しかし、こちらを振り返ると、そんな複雑な表情は消え去り、学園長としての信一郎の顔がそこにあった。
「――もし気分を悪くさせたなら、申し訳なかったよ。でもこれだけは分かっていてほしい、私は君たち学生ファーストで動いている。今回の演習会も、君たちの実戦経験を積むために必要不可欠だったんだ」
 頭を下げる学園長に、その言葉に嘘が無いことを見抜いた信玄。それ以上、彼を責めることはやめた。
「……次、何かしらやりたいんなら、まず先に伝えて下さいや。そうじゃあないと……またこういった軋轢を生むことになる。サプライズ精神も悪ィことじゃあねえけど……今回は騙された気分になっちまう」
 「善処するよ」とだけ呟くと、申し訳なさそうに笑む信一郎。そしてその場で信玄に言い渡された事柄は、今回の働きを評価した礼として、礼安たちと同様『計画』の一員となることだった。
 先に学園長室から去る丙良であったが、信玄だけは残り続けた。
「――君に殴られても仕方はないと思う、一発なら思い切り殴ってもらって構わない。暴行罪でしょっ引く、なんてしないからさ」
「……いや、もうそんなこと望んだところで、結果は変わんねえっスよ。まあ……もやもやはするけど」
 信玄が残った理由はただ一つ。合同演習会勝利記念の願い事を聞き届けた。内容は『丙良といつかもう一度手合わせがしたい』とのことだった。
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登場人物紹介

瀧本 礼安≪タキモト ライア≫

「誰かの『助けて』って声が聞こえたなら、そこに現れるのが私! 私たちが来たからにはもう大丈夫、安心していいよ!」

性別……女子

年齢……十五歳

年次……英雄学園入学前→『英雄≪ヒーロー≫』科・一年一組

血液型……AB型

髪型……水色セミロング

因子……『アーサー王伝説』よりアーサー・ペンドラゴン

欲の根源……『赤の他人も友達も、総じて守るため


 自他ともに認める、究極のお人よし。

 過去自分が受けた災難を他人に経験してほしくないために、困っている人に迷わず手を差し伸べることのできる、揺ぎ無い正義感の持ち主。学園から支給されたデバイスドライバーをほぼ初見で扱った、イレギュラー的存在でもある。

 それには多少なり理由があり、現トレジャーハンターでもある父親が元々英雄で、幼いころから触れていた点にある。

 彼女の中にある因子は、『アーサー王』。

 アーサー王自体が持つ高いポテンシャルと、礼安の持つ天性のバトルセンスによって、強さが上位のものとなる。使用武器は様々であり、その場に応じた多種多様な武器を持つ。

 彼女が戦う理由は、『赤の他人も友達も、総じて守るため』。

 お肉とゲームが大好き。それでいて栄養が大体一部に行くのと、動きやすい引き締まった体形をしているため、少なからず疎ましく思う人間はいる。本人曰く、『太らない体質』だそう。


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エヴァ・クリストフ

強い意志がある限り、『武器の匠』として仕事をするだけさ

性別……女子

年齢……十六歳

年次……『武器≪ウエポン≫』科・二年一組

血液型……AB型

髪型……金髪ロング

因子……刀鍛冶師・『村正

欲の根源……『???』


 この世界における、あらゆる武器のメンテナンスや製造が可能な『武器の匠』≪ウエポンズ・マスタリー≫。

 両親から継承し、若くしてプロ英雄たちの武器の面倒を見ている。そのため多くのプロ英雄たちは彼女に頭が上がらない。

 しかし同時にかなりの変態。この世に遍く存在する武器たちや、英雄の中でも女子や女性をこよなく愛しており(無論一般人含む)、所謂レズビアン。

 そのため、男がいるか、あるいは新たな扉を開きたくない女性は、こぞって彼女から距離をとる。本人はそろそろ変態気質を治そうとしているものの、一向に治る気配はない。何なら礼安たちの影響でもっと酷くなった。

 過去のトラウマから、男性と銃が大の苦手。彼女から語ってくれるときは、もう少し先になりそう。

 普段は非戦闘員であるが、親から受け継いだ『鍛冶屋の小槌』を使役し、辺りの無機物や有機物を武器として扱うことが可能。そのため、並の英雄よりも戦える。

 実はかなり頭脳指数が高く、作戦立案もできるほど。眉目秀麗さも合わせ、初見時の印象は普通ならとてもいい。普通なら。作中の女性キャラの中でも、屈指の『ナイスバディ』であり、主要キャラの中で一番『デカい』。僅差で次点は礼安。

 武器科でありながら、自分の開発した『デュアルムラマサ・Mark3』を用いて変身することが可能。厳密には英雄ではないため、変身時の掛け声が唯一異なる。

 アメリカンな大盛り料理、バーベキューが大好き。元々アメリカ出身のため、そういった豪快な食文化に慣れた結果。しかしそれよりも大好きなものは女子、女性を食べること。食人ではない。


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真来 院≪シンラ カコイ≫

「王の御前よ、道を開けなさい!!

性別……女子

年齢……十五歳

年次……英雄学園入学前→『英雄≪ヒーロー≫』科・一年一組

血液型……O型

髪型……クリムゾンレッドのショート

因子……『ギルガメッシュ叙事詩』よりギルガメッシュ王

欲の根源……『己の誇り(礼安や、礼安の好きな場所)を護るため


 礼安とは腐れ縁のようなもの――と言いながら、早十五年。長い間礼安の側に居続ける、礼安にとって大事な存在。

 日本を代表する真来財閥の長女で、次期当主として家を背負う人間でもある。お嬢様言葉が崩れたようなラフな口調をよくしている。まあだいたい礼安のせい。

 礼安をとりわけ大事に思っており、少々過保護な面が垣間見える。しかし律するときはきっちり決めるため、周りからの人望は礼安同様厚い。本人はお人よしではない、と語っているものの、礼安ほどではないにしてもお人よしであり、おせっかい焼きである。見ず知らずの人間に対してもかなりのおせっかい焼きであるが、礼安が関わるとお母さんのようになる。

 彼女の中にある因子は、『ギルガメッシュ』。

 まだ力を制御しきれはしないものの、入学前の生徒としては異例。弓を主に使い、トリッキーな戦いを得意とする。

 彼女が戦う理由は、『己の誇り(礼安や、礼安の好きな場所)を護るため』

 実は、礼安と院は幼馴染ではなく、家族関係にある。礼安と同様、亡くなった母親に対して尊敬の念を抱いている。今は礼安の精神の安寧を保つため、父である信一郎と共に礼安のメンタルケアを行っている。

 大分スレンダー体型であるため、礼安の『一部分』を時たま羨ましく思うときがある。礼安はそんなありのままの院を「可愛い!」と語るが、院はそんな礼安を見て「私の礼安は私なんかよりももっと可愛い!!」と親バカ(?)っぷりをいかんなく発揮する。

 甘いものが好きで、礼安とそこ辺りの好みが合わないことが悲しいらしい。


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天音 透≪アマネ トオル≫

「俺が、最強だ!!

性別……女子

年齢……十五歳

年次……英雄学園入試主席入学→『英雄≪ヒーロー≫』科・一年一組

血液型……AB型

髪型……黒ベースに黄色のメッシュの入ったショート

因子……『西遊記』より孫悟空

欲の根源……『特になし』→『自分で自分を守れない、弱い奴を従えて誰も傷つかない世を創る


 英雄学園の一般入試を勉学方面、実技方面両方でほぼ満点をたたき出し、主席として新入生生徒代表である生徒。入学前時点での強さは、礼安と同格であった。

 しかし、礼安と院両人が神奈川支部との一件を経て、圧倒的な強さを得た上に、学園長の実の娘であることが発覚してから、『恵まれた存在』として両人を敵視していた。

 埼玉県内のスラム街出身であり、自力で生きる術を身に着けているため、家事能力や自分より下の年齢の子供の世話はお手の物。実際、血縁関係こそないものの、『ホロコースト事件』により両親を失った子供たち数名を疑似的な家族として匿って世話していた。

 埼玉支部(特にそこの支部長である、コードネーム・グラトニー)とは並々ならぬ因縁があり、元々はある程度恵まれた家庭であった天音家を、グラトニー自身の逆恨みによって崩壊させられたため、最初は殺意混じりに敵対していた。

 『勝気少女』編で礼安やエヴァから『英雄』としての心構えを説かれ、グラトニーへの復讐をすることは変わらなかったが、生きて罪を償わせる選択を取った。その際、敵対視していた礼安と完全に和解し、協力し合って埼玉の平和を勝ち取った。

 主要キャラ内で最もスレンダーであり、圧倒的モデル体型。貧困生活を送っていたため、贅肉などは無く、一番『小さい』。一人称も『俺』。弟妹達を食って行かせるため、厳しい世を若い中で渡り歩いてきたため、肝はかなり据わっている。

 側近である『剣崎奈央≪ケンザキ ナオ≫』と『橘 立花≪タチバナ リッカ≫』とは、同じスラムで育った幼馴染。二人が武器科に移った後も、弟妹たちと共に食事したり、遊んだりしているらしい。

 埼玉での一件が片付いた後から、礼安に対しては尊敬の念とほんのちょっぴり好意的な目を向けている。

 院と同様甘いものが好き。埼玉支部との一件後、二人でスイーツ巡りをしたり、可愛いものを集めたりしているらしい。


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丙良 慎介≪ヘイラ シンスケ≫

「英雄の時間≪ヒーロータイム≫と、洒落こもうか」

性別……男子

年齢……十六歳

年次……英雄学園入試主席入学→『英雄≪ヒーロー≫』科・二年一組

血液型……AB型

髪型……ダークブラウンのベリーショート

因子……『ギリシャ神話』よりヘラクレス

欲の根源……『???


 英雄学園東京本校にて、座学実技共に好成績を収めた、そんな一握りの存在が持てる『仮免許』を持つ、英雄学園の中でもかなりのエリート。

 一般人からの認知度も、英雄の中での知名度も高く、さらに立ち居振る舞いに嫌な点が見つからない、好青年の極み。そのため、両性から人気がある。決め台詞内の『英雄の時間≪ヒーロータイム≫』は、今は亡き丙良の先輩の決め台詞であった。

 かつての一年生時代に、入学前の生徒が見学していた丙良の先輩との実習授業内において、神奈川支部の襲撃が発生。その時点の未熟な力ではヘリオをはじめとした面々には敵わず、丙良は深い傷を負った。さらに丙良が庇われた結果、丙良の先輩とその入学前の志望生徒二人が目の前で皆死亡。

 首席で入学したから、と言って世の中は甘くない、さらに自分が敵わない存在などごまんといることに辟易した丙良は、ふさぎ込んでしまった。誰かと深く関わることで、その誰かが亡くなった際の精神ダメージを、もろに食らうことを恐れた結果、後輩や先輩、同級生において、深く関わる存在は実に少なくなってしまった。現時点において、彼と同級生で深い関係にあるのは、エヴァと信玄(『大うつけ者』編時点)のみ。

 しかし、神奈川支部との一件の中で、狂気的なほどに勇敢な礼安、そしてその礼安のお目付け役である院との出会いで、保守的な考えが一部改まっていく。『大うつけ者』編時点において、後輩内において深い関係を築き上げたのは礼安、院、透の三人となった。

 彼の中にある因子は、『ヘラクレス』。主要キャラ内で、最も防御力が高いため、より堅実かつトリッキーな戦いを好む。礼安とは能力的に相性が悪いと思われがちだが、『砂鉄』を操る能力を用いれば電気と土は共存できる。

 好物はピザ。特に安定と値段重視のマルゲリータ。

 礼安たちの『微笑ましいやり取り』に、一切介入しないようにしている。


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瀧本 信一郎≪タキモト シンイチロウ≫

「只今より、怪人○○の処刑を執行する」

性別……男子

年齢……五十歳

年次(?)……『原初の英雄』→私財を投じ『英雄学園東京本校』設立、同タイミングで学園長就任

血液型……AB型

髪型……紫色のロングを後ろで雑に束ねた雑ポニーテール

因子……『???

欲の根源……『???


 世に『英雄≪ヒーロー≫』の概念を生みだした張本人であり、世界を股にかけ自分の気に入った変なもの……もとい聖遺物を収集するトレジャーハンターでもあり、英雄学園東京本校学園長をはじめとして、世界中に様々な分校を作り名誉学園長となった、日本を代表する『原初の英雄』。

 現役時代、その圧倒的強さから『処刑人≪スィーパー≫』とまで語られる男である。

 しかし、今はその尖った異名などどこへやら、子煩悩かつ常時柔らかな笑みを絶やさない、柔和な人物に。五十歳とは思えないほどにしわが存在せず、全てを知らない人が彼を見たら二十代と空見してしまうほど。

 学園生徒と分け隔てなく接しているものの、実の娘である礼安と院に関しては目に見えてデレデレ。尋常でないほどの学内通貨をお小遣いとして支給している。週一のペースで。

 今も、来たるべく災厄の可能性を鑑みて、修行は怠らないようにしているものの、現役時代よりは戦力ダウン。本人はそれを酷く恥じている様子である。

 その理由が、何より礼安と院の母であり、信一郎の妻を亡くしたことに起因している。もう大切な存在を亡くしてしまわないように、いざというタイミングで自分も動けるようにしているのだ。

 他の英雄と異なり、デバイスドライバーの祖たる『デバイスドライバー・シン』を用いて変身する。デバイスドライバーと比べるといわゆるプロトタイプに位置するモデルだが、実際の出力量はデバイスドライバーの百倍ほど。力の暴走などのリスクを完全に取り払ったがゆえに、ニュータイプでありながらパワーダウンしている。『シン』は現状、信一郎以外に扱える者は完全に存在しない。

 今まで、数多くの事件を単独で解決してきたのだが、日本中を震撼させた『とある事件』は何者かと共に戦い勝利したらしいが、その人物は不明。

 ちなみに、それほどの功績を残しておきながら、生徒たちにはまあまあなレベルでイジられている。特に、一昔前の学園ドラマの熱血教師を夢見るがゆえに、時代錯誤とも思えるシーンを実現させたいと、本人は試行錯誤している。しかし生徒たちは「そんなの今のご時世ありえねー」と白眼視。透もその一人である。しかしそのイジリを本人も仕方ないと容認しているため、特に問題はない。


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