第十七話

文字数 6,712文字

 翌日。その日は一限目が実戦訓練であった。
 クラス中の雰囲気が、どうも重苦しかった。それはどんな未熟な英雄の卵であっても理解できた。そしてその重圧を作り出している存在は、このクラスのトップの実力を持つ二人であることも。
「……礼安」
「大丈夫、仲良くなるために――頑張る」

 あの礼安と透の二人の密会の後。礼安は院に全てを打ち明けた。放課後に起こったことすべて、彼女に話したのだ。
「全くもう……貴女それガッツリ校則違反じゃあないの」
「ごめんね、でも……天音ちゃんは一切ふざけてなかったんだ。真面目だったんだ。それに応えてあげることが……正解だと思ったんだ」
 深い、深いため息をついたのち。院が電話をかけた先は信一郎であった。
「――――もしもしお父様」
『どうしたんだい我が愛すべき娘よ、お小遣い欲しい?』
「声のトーンでそんな下らない話題じゃあないことくらい分かってくださいまし!!」
 実の娘のガチな叱責に、電話越しではあるものの信一郎は本気で落ち込んでいた。小声で「そうだよねえ……お父さん失格だよねえ……」と呟き続けていた。
「――私が提案したいのは、貴方の愛する実の娘が、そしてその実の娘が友達になりたい方が、校則違反にならないための『提案』ですわ」
『――――へえ、ちょっと楽しそうじゃあないか。良いだろう、事の顛末を全て聞かせてくれたまえ。それによっては……ちょーっとパパ、ワクワクしちゃうかも』

 一方、透の方は。取り巻きにすら一切話しかけない状態であった。取り巻きの二人は、その何とも言えない雰囲気を察知して、二人に近付こうともしなかった。
 透の体には、目新しい生傷が何か所もあった。礼安を負かすために、乱暴な手段でより力をつけていたのだ。
 それは全て、『最強』であるために。彼女自身のプライドがそうさせたのだ。
 担任の教師目白も、どうもやり辛い様子であった。一挙手一投足、全てが何ともぎこちなかった。
 一応教師陣も英雄としての力や知識を備えてはいるが、因子を備えた生徒たちとは異なり、それはあくまで付け焼刃のようなもの。教師陣で本当に強い存在は学園長ただ一人である。
「え、えーと……次の時間は初めての実践訓練ですね。一部生徒を除いて聖遺物のライセンス化を果たしていないため、デバイスと事前に用意してもらった聖遺物を持って、学園校庭に体操服姿で集合してくだっさいね」
 全員が、教師が、主に透から発せられる重圧に負け、教師の何となくな甘噛みをツッコむ暇はなかった。

 学園校庭、という名の広い競技場。圧倒的に一学園が所有している者とは思えないほどに広大である。
 トラック一周五千メートルはある主要フィールド、あらゆる武器≪ウエポン≫科や英雄≪ヒーロー≫科の生徒たちは千差万別であるために、トレーニングニーズに応えられるように、巨大プールやサバゲ―場、地球の数倍から数万倍まで可変可能な超重力空間などあらゆる設備が整った、究極のトレーニングフィールド。
 ちなみに、これを『造ろう』と提案した学園長は、生徒が使わない深夜時間帯で入り浸っているらしい。お気に入りは超重力空間フルパワーカスタム。それにチャレンジして十分間平気でいられたら、一生遊んで暮らせるほどの学園内通貨を贈呈されるらしいが、どれだけ特訓を重ねた上級生ですら、三十秒も満足にいられないらしい。
 そんなトレーニングフィールド、うち主要フィールドにて。そこに指導役として立っていたのは、青色のジャージに身を包んだ学園長自身であった。
「やあ皆!」
「「「何で!?」」」
 今までの重苦しい空気などどこへやら、遂に礼安たち以外の皆が総ツッコミをする、そんなレアな姿が見られた。
「いやね? どうやら進んで校則違反をしようとする不良ちゃんがいるなんてリークを信頼できるツテから貰ってね?? 本来の体育教師である小金井先生に頼んでオブザーバー……げふん、見張り役としてやって来た次第ね。あ、授業もしっかりやるよ!」
 そう、院が信一郎に頼んだことは校則違反にならないよう、私闘をちゃんとした決闘にするための元締め≪プロモーター≫となることであった。
「まあ、そうだね……今日はちょっと先生方に頼み込んでスケを大幅更新しているから……まずはしっかりとした授業タイムと行こうか!」
 重い雰囲気を取り払うべく、懐から怪しい聖遺物を取り出す信一郎。形式的に用意したものだろうが、そのものの胡散臭さが半端じゃあないために例として提示するには十分であった。
「じゃあ、早速聖遺物をライセンスへと昇華させるために……それぞれ今自分が一番『これがしたい』って欲を胸に抱くんだ。別に、口に出さなくてもいい、まあ口に出した方が確かではあるけどね!」
 それぞれ、生徒たちは聖遺物へ念じ始める。無言で念じる者がいれば、明確に願いや欲を口に出す者もいる。
 それぞれが欲の発露をする中、礼安と院、透は手持無沙汰であった。
 それを見た礼安は、透に話しかける。
「天音ちゃんは、せいきぶつ? に何を願ったの?」
「聖遺物だバカの極み乙女」
 訂正する透。一切礼安の方を向かずに、ライセンス誕生の経緯を呟く。
「――簡単な話だ、使えるものは何でも使う。『最強』の実現を果たすために、俺の力のバリエーションを広げるためだ」
 首を傾げる礼安に、深いため息を吐く透。
「――お前相手に嘘吐くと、すぐに見抜かれる。不利になるだけだ、嘘なんぞ吐く理由はねえよ」
 何とも渋い表情ではあったが、納得はした様子。しかし、透はどうも浮かない表情のままであった。
 それを見かねた院は、頑張りを見せる生徒たちを、優しく見守る信一郎に話題を振る。
「――そう言えば。お父様ライセンスお持ちでしたよね。どういった『欲』を願ったのですか?」
「んー? それは簡単な話だよ。礼安と院、二人を守りたいって純粋な物さ。親なら当然だろう?」
 しかしどうも礼安の浮かない表情は晴れないまま。透のことがよほど気になるのか、難しい表情は変わらなかった。
「礼安、貴女どうしたの?」
「んー……もやもやが色々ね? 何だろう……うーん」
 礼安の第六感は、明確に何が嘘の正体かどうか、と言うのは分からない。当人が嘘をついていることは理解できても、その嘘で覆い隠した真実の正体は分からない。しかも、礼安自身難しいことを言語化すること自体が難しいため、難儀なものである。
 そう礼安が悩んでいる間にも、クラスメイト達は次々にライセンスを生み出していく。多種多様なデザインで彩られたライセンス群は、初めて手にした当人を魅了していく。欲によって顕現したそれは、当人を惹きつける一番の即物的存在。
 それぞれが達成感で笑顔な中、礼安や院、透らは浮かない表情のままであった。

「よし、ではみんな疲れたことだろうし……早速、既にライセンスを生み出している一組トップ人の変身デモンストレーションと洒落込もうか。そこで決闘だとかなんだとか、やりたければやればよし、だね」
 皆が、礼安と透を爛々と輝く眼差しで見つめる。彼らもまた、手合わせを楽しむオーディエンスの一人であったのだ。たとえ重圧の渦中にいようと、自分たちよりも強い存在を見習おうと、英雄の卵として勉強する気であったのだ。
「――こうして見られんのも、上に立つ者としては当然の宿命か」
「なんだかむず痒い……数日前を思い出すなあ」
 院は見守る存在でありながら、学園長に対しこういった提案をしたことを正解に思っていた。こうも目立つ存在であるために、そして彼女自身の願いのために、校則違反だなんてつまらないことで躓いてはいられないのだ。
 何なら、礼安の眼前の存在、透にすら負けることは許されない。それは彼女自身も、無意識下で考えていることだろう。
「見せてやるよ、これが俺の欲の全て、俺の力の全てだ!!」
 デバイスを下腹部に当て、デバイスドライバーとして顕現させる。そんな透の手に握られているのは、西遊記の主人公『孫悟空』がデザインされた黄色のヒーローライセンス。
『認証、サイユウ珍道中、猿の巻! 不屈の闘志と無限の我欲を抱えた、欲張りヒーローの冒険記!』
 即座にドライバーに装填すると、無言で礼安に変身を促す透。この決闘の場を組んだ張本人であり、何より礼安を一番の障害として敵視するがゆえに、油断は無かった。変身し、強くなった礼安を打ち倒すことで、透の目標は達せられる。
「――それこそが、貴女が望んだことなら」
 多くのクラスメイトが固唾をのんで見守る中、院と信一郎はどこかリラックスしていた。
「どっちが勝つでしょうね」
「ま、分かりきってはいると思うよ、私の愛娘よ」
「何かその言い表し方実にキモいですわ」
 信一郎が娘の反抗期に対し盛大に落胆するのは知らぬまま、礼安もドライバーを展開し、実に慣れた手つきで認証、装填する。
『認証、アーサー王伝説! 多くの騎士を束ねた、円卓の騎士の頂点に上り詰めるまでの、成り上がり物語≪ストーリー≫!』
 それぞれがしっかりと距離を取り、礼安は見つめ、透は睨みつける。そしてそれぞれが体勢を整え、その時を待つ。
 ほんの一瞬の静寂、その後。一呼吸置き、
「「変身」!!」
 二人が、異なる姿へと換装されていくのだった。

 変身を果たした透は、くすんだ黄色の装甲を纏っていた。装甲の重さとしては、丙良のようなごつごつとした重厚感のあるものでは無く、礼安のように無駄のないシャープさで、実に身軽。全体的に風を思わせる意匠が凝らされており、彼女の首元には赤色のスカーフが巻かれている。
 手には孫悟空が所持していたとされている、かの有名な如意棒が握られていた。
「俺の力は風を司る。だから――」
 圧倒的風量で自分を押し出し、礼安に迫る透。
「こういう事だってできるんだよ、なァ!!」
 一瞬、如意棒の先がきらめいた瞬間。礼安の顔面をロックオンした如意棒が、圧倒的速度で伸長し迫りくる。
 ある意味、不意打ちに近い一撃。しかし、それを礼安は首をほんの少し傾けるだけで避ける。
 その瞬間に、只者では無いことを理解した透は、中国映画でよくみられるような棒術の要領で礼安に突貫していく。
 しかし、礼安は神聖剣エクスカリバ―を顕現させることなく、無手の状態で透の棒術を捌き倒していく。
「――んだよ、余裕の表れかよクソお人よし!!」
 苛立つ透は、礼安の眼前に拳を繰り出す――のを寸前でやめ、手のひらを見せ視界を遮る。
「こうすりゃあ、少しくらいは肉薄できんだろうがよォ!!」
 ほんの一瞬しか視認できない状況であれば、ダメージは避けられないはず。そう考えた透は、超高速で胴体を狙い伸長。風穴を開けるほどの覚悟で打ち放った。
 しかし。
 礼安は、透が瞬きをした瞬間に背後に回っていた。
 そしてその瞬間に、首元に手刀を当て実に冷たい声色で呟く。
「これで、一回目」
 だが礼安はそれ以上のことはせずに、飛び退いて再び透と距離を取る。
 透は、礼安に背を向けながら冷や汗を流していた。
(今、何が起こった――雷??)
 礼安の、迅雷の如き速度。目で追うことなど不可能であった。
 高速と光速。どちらが素早いかは、火を見るよりも明らかであった。
 しかしそれでも、透の心は折れなかった。己が信じる『最強』を体現するために、ここで負けるわけにはいかなかったのだ。
「――本当に、癪に障る!!」
 振り向きざま、突くと同時に伸長。標的は礼安の胴体部、その鳩尾。
 しかし、今度は一切動くことなくその攻撃を受けた。だが、一切ダメージを受けている様子はなかった。透自身も、実感として手ごたえの欠片も感じられなかったのだ。
 ほんの少し、後ずさるのみ。殺す、とまではいかなくとも、苦悶の表情を浮かべさせるくらいの意識で攻撃したのにも拘らず。
 その如意棒による攻撃をものともしなかった礼安は、如意棒を片腕で掴むと、ほんの一息でそれを引っ張る。
 圧倒的な膂力を発揮する代償として、踏ん張る足の影響でトラックがひび割れる。
 そこで透が如意棒から手を離せばいいのだが、それもできない。礼安が如意棒越しに放った微弱な電気によって、偽の電気信号を腕に送られているためであった。
 それにより引き起こされるのは、自らの意思にない行動を強制されてしまうこと。あの事件以降、礼安も自分に与えられた力の使い方を熟知していたのだ。
 圧倒的な力で引かれ、礼安の左ストレートを叩き込まれる、その寸前。如意棒と透の体にかかる慣性を右腕の力の身で完全に止め、それと同時に拳も掌底の形に。透の眼前で、礼安の左拳が完全に静止したのだ。
「これで、二回目」
 先ほどと同じ、底冷えするほどの声。普段の明るい天真爛漫な声を知っているからこそ、そのギャップが恐ろしかったのだ。
 正直、二回分殺された判定を下された、あの攻撃を避けられた時点で、格の違いを理解していた。埋められそうもないほどに、まるでマリアナ海溝かの如く深い溝。
 分かりたくない、しかしどう足掻いても差が分かってしまう。それが礼安と透であった。
「……これが、俺とお前の差かよ。――信じらんねえ」
「――もうやめよう、天音ちゃん。これ以上やっても、何も生まれないよ」
 勝負の行方を見守っていたクラスメイトが皆、どちらが実力で上か、理解してしまった。あの事件解決の功労者は、スタートラインに先ほど立った自分たちと比べ、圧倒的なものであった。同じ学年であることを恥じ、疑うほど。
 透は、如意棒を手から落とし、膝から崩れ落ちた。力の差から絶望に心を蝕まれ、対抗する心を失ってしまった。透にとっての敗北こそ、『心が折れた瞬間』。それこそが今であった。
「――――俺の、負けだ。現時点で、俺はお前に絶対に敵わねえさ」
 諸手を弱弱しく掲げた透による敗北宣言。それにより、対決の時間は終わりを告げたのだった。

 お互いドライバーを取り外して変身を解除し、勝負を終えた二人に対して、賞賛の拍手が送られる。しかし、周りが礼安と院を見る目は、いち友人という訳ではない、尊敬を超えた畏怖の対象そのものであった。
「――これで、とりあえず一組の意識改革は大丈夫かな。彼女の望みも達せられた、そして自分たちの近くにいる存在の異常性を理解できた。これで、よりこの子たちも英雄として勉強に励んでくれるだろう。礼安と院の二人も、自分が現在時点の頂点だからと言って、これに慢心せずに修練に励んでね!」
 そう言うと、実に楽しそうに手をひらひらと振り、スキップをしながら学園校舎に戻っていく信一郎。彼の思惑は合理的であったが、想像以上にえげつないものであった。
 なあなあで英雄間の競争社会を生き残ることはできない。万人の先駆者である信一郎が、誰よりもそれを理解していた信一郎が、この実の娘二人を交えたデモンストレーションを以って示したのだ。
 クラスメイト達は、礼安たちを羨望の目で見やる。それをどこか、礼安と院は居心地が悪いように感じていた。
「お父様、電話口では何か考えがある様子でしたが……こうだとは。見事にダシにされましたわ」
「皆……」
 授業前、授業中はどこか和気藹々としていた雰囲気も、こうまで重苦しくなるとは。礼安も院も、そうなることとは考えていなかった。想像力が足りない、と言われたらそれまでだが、こうなることまで見越していた信一郎が一枚上手であったのだ。
「強くならなきゃ……」「二人を見習わなきゃ……」「ライセンスを顕現させたくらいで満足してちゃあだめなんだ……」「一組の名に恥じない英雄にならなきゃ……」
 それぞれが、内に秘めた闘争心を湧き立たせ、暗い表情で教室に戻っていく。
 その時であった。
 突如として、生徒や教師陣の魔力とも異なる、歪な魔力を感知した礼安と院は、その対象に背を向けた状態で、敵意をむき出しにする。
「貴方、いったい何者なの」
 すると、その存在はけらけらと笑い、高価そうなシルクハットをひらひらと振る。
「やあやあ、英雄の卵諸君。唐突で悪いが、大人の世界は金がどうあってもいるだろう、高額融資の相談は如何かな?」
 礼安たちが振り返ると、そこにいたのは全体的に肥満然とした体格の男一人。心の底が知れない、薄気味悪い笑みを見せる。それによって露わになる総金歯となった歯。しかしフォルニカとは異なり、見た目はそう若くない、実に五十代ほどと見える。その成金じみたその見た目は、見る者によっては不快感しか呼び起こさないであろう。
 そして、何より不快感を面に出していたのは、
「お前は……グラトニー!!」
 他でもない、透自身であった。
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登場人物紹介

瀧本 礼安≪タキモト ライア≫

「誰かの『助けて』って声が聞こえたなら、そこに現れるのが私! 私たちが来たからにはもう大丈夫、安心していいよ!」

性別……女子

年齢……十五歳

年次……英雄学園入学前→『英雄≪ヒーロー≫』科・一年一組

血液型……AB型

髪型……水色セミロング

因子……『アーサー王伝説』よりアーサー・ペンドラゴン

欲の根源……『赤の他人も友達も、総じて守るため


 自他ともに認める、究極のお人よし。

 過去自分が受けた災難を他人に経験してほしくないために、困っている人に迷わず手を差し伸べることのできる、揺ぎ無い正義感の持ち主。学園から支給されたデバイスドライバーをほぼ初見で扱った、イレギュラー的存在でもある。

 それには多少なり理由があり、現トレジャーハンターでもある父親が元々英雄で、幼いころから触れていた点にある。

 彼女の中にある因子は、『アーサー王』。

 アーサー王自体が持つ高いポテンシャルと、礼安の持つ天性のバトルセンスによって、強さが上位のものとなる。使用武器は様々であり、その場に応じた多種多様な武器を持つ。

 彼女が戦う理由は、『赤の他人も友達も、総じて守るため』。

 お肉とゲームが大好き。それでいて栄養が大体一部に行くのと、動きやすい引き締まった体形をしているため、少なからず疎ましく思う人間はいる。本人曰く、『太らない体質』だそう。


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エヴァ・クリストフ

強い意志がある限り、『武器の匠』として仕事をするだけさ

性別……女子

年齢……十六歳

年次……『武器≪ウエポン≫』科・二年一組

血液型……AB型

髪型……金髪ロング

因子……刀鍛冶師・『村正

欲の根源……『???』


 この世界における、あらゆる武器のメンテナンスや製造が可能な『武器の匠』≪ウエポンズ・マスタリー≫。

 両親から継承し、若くしてプロ英雄たちの武器の面倒を見ている。そのため多くのプロ英雄たちは彼女に頭が上がらない。

 しかし同時にかなりの変態。この世に遍く存在する武器たちや、英雄の中でも女子や女性をこよなく愛しており(無論一般人含む)、所謂レズビアン。

 そのため、男がいるか、あるいは新たな扉を開きたくない女性は、こぞって彼女から距離をとる。本人はそろそろ変態気質を治そうとしているものの、一向に治る気配はない。何なら礼安たちの影響でもっと酷くなった。

 過去のトラウマから、男性と銃が大の苦手。彼女から語ってくれるときは、もう少し先になりそう。

 普段は非戦闘員であるが、親から受け継いだ『鍛冶屋の小槌』を使役し、辺りの無機物や有機物を武器として扱うことが可能。そのため、並の英雄よりも戦える。

 実はかなり頭脳指数が高く、作戦立案もできるほど。眉目秀麗さも合わせ、初見時の印象は普通ならとてもいい。普通なら。作中の女性キャラの中でも、屈指の『ナイスバディ』であり、主要キャラの中で一番『デカい』。僅差で次点は礼安。

 武器科でありながら、自分の開発した『デュアルムラマサ・Mark3』を用いて変身することが可能。厳密には英雄ではないため、変身時の掛け声が唯一異なる。

 アメリカンな大盛り料理、バーベキューが大好き。元々アメリカ出身のため、そういった豪快な食文化に慣れた結果。しかしそれよりも大好きなものは女子、女性を食べること。食人ではない。


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真来 院≪シンラ カコイ≫

「王の御前よ、道を開けなさい!!

性別……女子

年齢……十五歳

年次……英雄学園入学前→『英雄≪ヒーロー≫』科・一年一組

血液型……O型

髪型……クリムゾンレッドのショート

因子……『ギルガメッシュ叙事詩』よりギルガメッシュ王

欲の根源……『己の誇り(礼安や、礼安の好きな場所)を護るため


 礼安とは腐れ縁のようなもの――と言いながら、早十五年。長い間礼安の側に居続ける、礼安にとって大事な存在。

 日本を代表する真来財閥の長女で、次期当主として家を背負う人間でもある。お嬢様言葉が崩れたようなラフな口調をよくしている。まあだいたい礼安のせい。

 礼安をとりわけ大事に思っており、少々過保護な面が垣間見える。しかし律するときはきっちり決めるため、周りからの人望は礼安同様厚い。本人はお人よしではない、と語っているものの、礼安ほどではないにしてもお人よしであり、おせっかい焼きである。見ず知らずの人間に対してもかなりのおせっかい焼きであるが、礼安が関わるとお母さんのようになる。

 彼女の中にある因子は、『ギルガメッシュ』。

 まだ力を制御しきれはしないものの、入学前の生徒としては異例。弓を主に使い、トリッキーな戦いを得意とする。

 彼女が戦う理由は、『己の誇り(礼安や、礼安の好きな場所)を護るため』

 実は、礼安と院は幼馴染ではなく、家族関係にある。礼安と同様、亡くなった母親に対して尊敬の念を抱いている。今は礼安の精神の安寧を保つため、父である信一郎と共に礼安のメンタルケアを行っている。

 大分スレンダー体型であるため、礼安の『一部分』を時たま羨ましく思うときがある。礼安はそんなありのままの院を「可愛い!」と語るが、院はそんな礼安を見て「私の礼安は私なんかよりももっと可愛い!!」と親バカ(?)っぷりをいかんなく発揮する。

 甘いものが好きで、礼安とそこ辺りの好みが合わないことが悲しいらしい。


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天音 透≪アマネ トオル≫

「俺が、最強だ!!

性別……女子

年齢……十五歳

年次……英雄学園入試主席入学→『英雄≪ヒーロー≫』科・一年一組

血液型……AB型

髪型……黒ベースに黄色のメッシュの入ったショート

因子……『西遊記』より孫悟空

欲の根源……『特になし』→『自分で自分を守れない、弱い奴を従えて誰も傷つかない世を創る


 英雄学園の一般入試を勉学方面、実技方面両方でほぼ満点をたたき出し、主席として新入生生徒代表である生徒。入学前時点での強さは、礼安と同格であった。

 しかし、礼安と院両人が神奈川支部との一件を経て、圧倒的な強さを得た上に、学園長の実の娘であることが発覚してから、『恵まれた存在』として両人を敵視していた。

 埼玉県内のスラム街出身であり、自力で生きる術を身に着けているため、家事能力や自分より下の年齢の子供の世話はお手の物。実際、血縁関係こそないものの、『ホロコースト事件』により両親を失った子供たち数名を疑似的な家族として匿って世話していた。

 埼玉支部(特にそこの支部長である、コードネーム・グラトニー)とは並々ならぬ因縁があり、元々はある程度恵まれた家庭であった天音家を、グラトニー自身の逆恨みによって崩壊させられたため、最初は殺意混じりに敵対していた。

 『勝気少女』編で礼安やエヴァから『英雄』としての心構えを説かれ、グラトニーへの復讐をすることは変わらなかったが、生きて罪を償わせる選択を取った。その際、敵対視していた礼安と完全に和解し、協力し合って埼玉の平和を勝ち取った。

 主要キャラ内で最もスレンダーであり、圧倒的モデル体型。貧困生活を送っていたため、贅肉などは無く、一番『小さい』。一人称も『俺』。弟妹達を食って行かせるため、厳しい世を若い中で渡り歩いてきたため、肝はかなり据わっている。

 側近である『剣崎奈央≪ケンザキ ナオ≫』と『橘 立花≪タチバナ リッカ≫』とは、同じスラムで育った幼馴染。二人が武器科に移った後も、弟妹たちと共に食事したり、遊んだりしているらしい。

 埼玉での一件が片付いた後から、礼安に対しては尊敬の念とほんのちょっぴり好意的な目を向けている。

 院と同様甘いものが好き。埼玉支部との一件後、二人でスイーツ巡りをしたり、可愛いものを集めたりしているらしい。


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丙良 慎介≪ヘイラ シンスケ≫

「英雄の時間≪ヒーロータイム≫と、洒落こもうか」

性別……男子

年齢……十六歳

年次……英雄学園入試主席入学→『英雄≪ヒーロー≫』科・二年一組

血液型……AB型

髪型……ダークブラウンのベリーショート

因子……『ギリシャ神話』よりヘラクレス

欲の根源……『???


 英雄学園東京本校にて、座学実技共に好成績を収めた、そんな一握りの存在が持てる『仮免許』を持つ、英雄学園の中でもかなりのエリート。

 一般人からの認知度も、英雄の中での知名度も高く、さらに立ち居振る舞いに嫌な点が見つからない、好青年の極み。そのため、両性から人気がある。決め台詞内の『英雄の時間≪ヒーロータイム≫』は、今は亡き丙良の先輩の決め台詞であった。

 かつての一年生時代に、入学前の生徒が見学していた丙良の先輩との実習授業内において、神奈川支部の襲撃が発生。その時点の未熟な力ではヘリオをはじめとした面々には敵わず、丙良は深い傷を負った。さらに丙良が庇われた結果、丙良の先輩とその入学前の志望生徒二人が目の前で皆死亡。

 首席で入学したから、と言って世の中は甘くない、さらに自分が敵わない存在などごまんといることに辟易した丙良は、ふさぎ込んでしまった。誰かと深く関わることで、その誰かが亡くなった際の精神ダメージを、もろに食らうことを恐れた結果、後輩や先輩、同級生において、深く関わる存在は実に少なくなってしまった。現時点において、彼と同級生で深い関係にあるのは、エヴァと信玄(『大うつけ者』編時点)のみ。

 しかし、神奈川支部との一件の中で、狂気的なほどに勇敢な礼安、そしてその礼安のお目付け役である院との出会いで、保守的な考えが一部改まっていく。『大うつけ者』編時点において、後輩内において深い関係を築き上げたのは礼安、院、透の三人となった。

 彼の中にある因子は、『ヘラクレス』。主要キャラ内で、最も防御力が高いため、より堅実かつトリッキーな戦いを好む。礼安とは能力的に相性が悪いと思われがちだが、『砂鉄』を操る能力を用いれば電気と土は共存できる。

 好物はピザ。特に安定と値段重視のマルゲリータ。

 礼安たちの『微笑ましいやり取り』に、一切介入しないようにしている。


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瀧本 信一郎≪タキモト シンイチロウ≫

「只今より、怪人○○の処刑を執行する」

性別……男子

年齢……五十歳

年次(?)……『原初の英雄』→私財を投じ『英雄学園東京本校』設立、同タイミングで学園長就任

血液型……AB型

髪型……紫色のロングを後ろで雑に束ねた雑ポニーテール

因子……『???

欲の根源……『???


 世に『英雄≪ヒーロー≫』の概念を生みだした張本人であり、世界を股にかけ自分の気に入った変なもの……もとい聖遺物を収集するトレジャーハンターでもあり、英雄学園東京本校学園長をはじめとして、世界中に様々な分校を作り名誉学園長となった、日本を代表する『原初の英雄』。

 現役時代、その圧倒的強さから『処刑人≪スィーパー≫』とまで語られる男である。

 しかし、今はその尖った異名などどこへやら、子煩悩かつ常時柔らかな笑みを絶やさない、柔和な人物に。五十歳とは思えないほどにしわが存在せず、全てを知らない人が彼を見たら二十代と空見してしまうほど。

 学園生徒と分け隔てなく接しているものの、実の娘である礼安と院に関しては目に見えてデレデレ。尋常でないほどの学内通貨をお小遣いとして支給している。週一のペースで。

 今も、来たるべく災厄の可能性を鑑みて、修行は怠らないようにしているものの、現役時代よりは戦力ダウン。本人はそれを酷く恥じている様子である。

 その理由が、何より礼安と院の母であり、信一郎の妻を亡くしたことに起因している。もう大切な存在を亡くしてしまわないように、いざというタイミングで自分も動けるようにしているのだ。

 他の英雄と異なり、デバイスドライバーの祖たる『デバイスドライバー・シン』を用いて変身する。デバイスドライバーと比べるといわゆるプロトタイプに位置するモデルだが、実際の出力量はデバイスドライバーの百倍ほど。力の暴走などのリスクを完全に取り払ったがゆえに、ニュータイプでありながらパワーダウンしている。『シン』は現状、信一郎以外に扱える者は完全に存在しない。

 今まで、数多くの事件を単独で解決してきたのだが、日本中を震撼させた『とある事件』は何者かと共に戦い勝利したらしいが、その人物は不明。

 ちなみに、それほどの功績を残しておきながら、生徒たちにはまあまあなレベルでイジられている。特に、一昔前の学園ドラマの熱血教師を夢見るがゆえに、時代錯誤とも思えるシーンを実現させたいと、本人は試行錯誤している。しかし生徒たちは「そんなの今のご時世ありえねー」と白眼視。透もその一人である。しかしそのイジリを本人も仕方ないと容認しているため、特に問題はない。


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