第十話

文字数 5,319文字

 ざわつく渋谷、スクランブル交差点。人で普段からごった返すそこは、まるで日本がサッカー強豪国に勝ったかのように人で溢れかえっていた。それもそのはず、これからこの場で騒動が起きるというのだから、刺激を欲しがる大衆にとっては格好のタイミングであった。
 しかし、刻限である夜七時。待てども待てども、何も起きやしない。徐々に人が呆れ始め、ゆっくりと帰り始める人々が現れ始めた。
 すると、遠くの方で悲鳴が聞こえ始めた。
 どうせただの悪戯だ、馬鹿が構ってもらいたくて始めたことだろう、と興味関心のかけらも持ち合わせていなかった。
 だが、その実は大衆の予想のほとんどを裏切る。
 そこにいたのは、怒りを前面に押し出したフォルニカを筆頭とする、教会神奈川支部メンバーであった。
「悪いな、今俺はえらく気が立ってるからよ」
 少し間をおいてその場にいるメンバー全員がチーティングドライバーを起動させる。
「お前ら、夜はこっからだ。公序良俗に反しまくって、派手に乱れな」
 メンバーがその場にいる人々を襲い始めたのだ。
 好奇心が爆発しそうであった人々は、恐怖心を肥大化させ、一気に逃げ惑う。地震など起こっていないはずなのに、その場が、渋谷全体が人の歩みによって酷く揺れる。
 その場で人々を諫める規制線の役割を果たしていた警官たちが、人々の盾になり怪人となった教会メンバーたちに立ち向かうも、常人では到底歯が立たない。なすすべなくやられていく。
 ひとりのリーダー的存在である警官が号令すると、フォーメーションを変え、皆怪人に発砲する。後を顧みることなく、発砲許可を出したのだ。
「銃なんて無駄なんだよ、警察なんて無力でしかない」
 フォルニカは恍惚の笑みを浮かべながら、怪人たちを顎で使い一気呵成に攻め立てる。
 無力な警官たちは、それでも人々の安全を守るべく立ち向かうも、全く持って歯が立たない。
 逃げる人々が、己の死を覚悟し始めた、その時であった。
 突如、怪人の一人が弾き飛ばされ、フォルニカの側に倒れ伏す。
「……まさか、教会に楯突く大馬鹿野郎は、英雄たちとあのゴリラだけだと思ってたんだが」
 そこにいたのは、自身の死を覚悟して病院から飛び出した、青木であった。
「もう、多くの誰かを犠牲にしながら、自分だけ幸せを享受しているなんて御免被るわ」
「……そんな下らない考え、余程の大馬鹿野郎から教わったんだな」
 フォルニカはあからさま不快な表情を浮かべ、手下に指示を出す。
「アイツも敵だ、遠慮なく殺せ。――生きていることを後悔させながら、な」
 まるで、主の命を忠実に守る血の通わない無機物のように、機敏に動き出す手下たち。
「ど、けえぇえぇぇっ!!」
 今まで声を張ってあげた大声なんて、叫び声だけだった。
 しかし、今誰かのために動き出した青木が張り上げたその声は、正しく覚悟を決めた者の声であったのだ。
 右腕の剣で、次々に斬り裂いて道を切り開く。
 機敏ではあったが、単調な動きであったために、戦いにほぼ無縁であった青木でさえも戦えていた。後は、正気を失うことなく超常的な力を得たためか。
 見よう見まねであったものの、渾身の力を込めて手下を殴り飛ばす。
 なすすべなく倒れていく手下たち。命を顧みることなく特攻していくも、通常の怪人より自我を持ったことによって強くなった、青木の敵ではなかったのだ。
 徐々に苛立ちを隠さなくなったフォルニカ。しかし、そんな彼を囲むようにして激しいボディタッチを行う四人の美女。
「オーナー、あの子調子に乗ってるみたいだしぃ、アタシらが殺っちゃってもいーい?」
「オーナー、ウチらに任せとけば神奈川支部は安泰? ってやつっしょ」
「……僕チンたちは、オーナーの味方」
「ママの前で調子に乗る悪い子はぁ、めっ、ってしないとですねぇ?」
 それぞれが、陽気、軽薄、陰気、慈愛の二文字を現したような、露出度の高いドレスを着た女性であった。
 新宿は歌舞伎町、その夜の店でトップクラスの美貌と金を巻き上げる実力を兼ね備えた、神奈川支部の四幹部である。無論、腰にはチーティングドライバーを装着していた。
「構わない、全力で潰せ」
 オーナーの仰せのままに、と四人が笑うとそれぞれチーティングドライバーにライセンスを装填し、四人一斉に起動させる。
『Crunch The Story――――Game Start』
「「「「変身」」」」
 全員の姿、そして辺りの空間が歪み、全員が異形の怪人と化す。それぞれがフォルニカ怪人体と同じような見た目をしているが、今までの手下たちと比べると、それぞれに特徴があった。
 陽気は一対の槍、軽薄は両足が切れ味抜群な剣へと変わる。陰気は左腕全体がガトリング砲と化し、慈愛は巨大なハンマーを携えている。
 青木は雄叫びを上げ、四人に特攻する。
 右腕の剣で首を撥ねようとするも、陽気の槍に阻まれる。
 困惑する一瞬のスキを見逃すことなく、慈愛のハンマーががら空きの腹部を直撃する。
 成すすべなく吹っ飛ぶ青木に対し、一瞬にして背後に回り込み青木の肉体を易々と貫く、軽薄の剣。
 ずぷり、と多量の出血とともに引き抜かれる剣。そして一切の手加減なく、軽薄は青木の体をまるで子猫を捕まえるかのように、軽々と肉の盾として持ち上げる。
 そこを陰気のガトリング砲で追い打ち。特殊改造した銃弾は、全てが長距離狙撃銃に装填されるであろう12.7mm弾。邪魔な相手を殺すことに完全特化させた最悪の銃であった。
 怪人体の体が、それぞれのリンチともいえる攻撃によって、ぼろ雑巾のようなものへと変わる。出血も人間であれば即座に失血死になる十分な量。
「あれだけ意気込んでいたのにこの様ですか……ざまあないね」
「キャハハ! 本当、救えない裏切り者さんですねえ」
 青木は出血多量により、頭が正常な働きを起こすことが出来なくなっていた。気分を害するほど、脳内で反響する、自分を小ばかにする声。
 それでも、彼女の肉体は戦うことを諦めてはいなかった。
 軽薄を振り払って、何とか大将格であるフォルニカに一太刀入れようと、無我夢中で走り出した。
 しかし、その勇気とも無謀とも取れる行動を、無慈悲にも巨大なハンマーで顔面をとらえられる。
 陽気の使徒を除いた三人で死体蹴りを繰り返す。悪態をつかれながら、一人の勇気ある者、その命の灯が消えていく瞬間を、渋谷にいる一般人皆が見つめていた。皆、歯向かったことが哀れだと侮蔑の目線を送る。
 頭の機能が、体の機能が、徐々に死んでいく。頭はぼうっとし、体は芯から冷え、唯一碌に動くのは心臓のみ。その心臓も、動きが緩慢になってきた。
 それでも、青木はこうして立ち向かったことをどこか誇りに思っていた。
 誰かを傷つけ続けることで生きながらえることしか出来なかった二十数年よりも、誰かを救うために心を自由にし続けたほんの数十分の方が、満足感が高かったのだ。
 きっと、今までの自分に「無様だ」とほくそ笑まれることだろう。
 しかし、命を散らす覚悟を決めていた彼女は「これが生き様だ」と笑って見せる。
 あの時自分を二度も救ってくれた「彼女」は、きっとそうする。そう思えると、どこか満足気であったのだ。
「……ねえ、そいつ笑ってない? キモいんですけど」
「まあまあ、人間が死ぬほんの一瞬に、性行為より上の快感があるそうですしぃ、そこまでその裏切り者さんを悪く言わなくてもいいですぅ」
 そう言いつつも、全員が青木に対しての追い打ちをやめはしない。全員がそれぞれに特徴があるものの、結局のところ全員が残忍かつ冷酷、つまるところ最低最悪の性格であった。
 フォルニカが、まるでペットを呼ぶかのような気軽さで四人に号令をかける。
「お遊びももういいだろう、殺せ。我ら教会に歯向かった罰だ」
 三人が薄ら笑って無言の肯定をする。その場にいる人々が悲鳴やら何やらが入り混じった声を上げる。
 この場にいる誰にも、今のうねりを止めることはできない。青木は、死を待つばかりであった。
「た……すけ……て、ヒー……ロー」
 思わず漏れ出た言葉、それは今まで碌に口に出さなかった、絞り出すようにして出した心の底からの願いであった。
 そして、青木のささやかな願いは、即座に現実となる。
 その悲劇の渦を止めるように、漆黒の夜空を裂くかのように放たれる、四本の焔矢。それぞれ三人に刺さり、青木から飛び退かせる。
 青木にも少し遅れて一本の矢が刺さるも、その矢はじんわりと傷を温め治していく、治癒の矢であった。
 未だ揺らぐ視界の中、彼女は矢が飛んできたビル上を見上げると、そこにいたのは五人の影。それぞれ一対の小槌、焔弓、片手剣を持つ華奢な少女三人に、大剣を携えた青年が一人、そして何より、今まで行動を共にしていた筋骨隆々の男が一人。
「…………?」
 始め、彼女は理解できなかった。まさか、願い通りに自分を助けに来るなんてありえないと。二度も、こんな自分を救ってくれる聖人なんているわけがないと。教会が崇め奉る偽神ですら、ただの一回も救ってくれたことは無いのに。
 しかし、その不理解は――あの時、自分にかけてくれた優しい声で確信へと変わった。
「誰かの『助けて』って声が聞こえたなら、そこに現れるのが私たち! 私たちが来たからにはもう大丈夫、安心していいよ!」
 ニッと笑って見せるその顔に、青木は思わず涙が零れていた。血だまりの中、希望を見出していたのだ。

 英雄≪ヒーロー≫の登場に、渋谷の地が大いに沸いた。フォルニカたちを除いて。
「あれって確かこいつらが指名手配してた英雄たちだ!」「ナイスタイミングが過ぎる!」「こんな奴ら倒しちゃってー!」「英雄頑張れ!!」
 多くの人々から溢れ出る英雄コール。まさに期待されている証しであった。悪い気はしない、といった喜びの表情が、丙良から漏れだしていた。
「そう長いこと喜んではいられないかもよ、丙良君。誰かは知らないけど、仲違いした怪人の一人、結構深手を負っているっぽいから」
 誰か、というのをすぐ察知したのは礼安と院、クランであった。
「……院ちゃん、あの人、シスターの人だよ」
「分かっていますわ、色々、あったので」
 ぎろり、とクランを睨み付ける院。その突き刺さる視線にいたたまれない気分になるクランであった。
「……その際は、足止めだけと命じたんだが……許してくれとは言わないが、申し訳ない……事実だからな」
 怒りの色を一切隠すことなく、フォルニカは声を張り出す。
「よォ、人質持ってこっちから出向こうとも思ったんだが……来てくれて清々したよ」
 礼安はそんなフォルニカに対して、やはり顔をしかめた。しかし、これは不快感によるものでは無く、疑念によるものであった。
(……やっぱりだ、あの時と『違う』)
 そんな礼安の横顔を見て、クランはどこか厳しかった表情が緩み、安心しているようであった。最初出会った初心者ですらなかった姿が、かつての英雄とともに戦う一人の『ヒーロー』として見えたのだ。
 しかし、そんなことはお構いなしと言わんばかりに、フォルニカは英雄たちを巻き込んで、大衆の好奇心を煽り立てる。
 さながら、あの時の大会MCのようであった。礼安と丙良には『あえて』そうしたと分かるように。実際、二人はすぐに勘付いた。声の色が、全く持って一緒であったのだ。
「代表戦、と洒落込もうか皆ァ! 一対五でリンチしてもかまわないが、それじゃあ観客≪ギャラリー≫は面白くない。タイマンでのお楽しみと行こうかァ!!」
 その声は、人々の心を的確に打つ。打てば響く、音叉のように。スクランブル交差点中心点から人から人へと伝播する。やがてそれは、フォルニカたちを気味悪がった警官たちすらも巻き込んでいく。まるで、洗脳されていくように。
 狂ったように礼安たちを戦いの場へと煽る、今まで正気だったはずの大衆。
「……気味が悪い、これは。よく分からない洗脳電波でも流しているってのかい?」
「だったら、我々はどうなる。現にそうなってはいないではないか」
 むう、と口をとがらせる丙良。エヴァはそんなフォルニカを見て、礼安同様何かに勘付いた様子であった。
「……ふぅん、これは僕の中の因子にある程度守ってもらわなかったら……気持ち悪くって適わないなぁ」
 思い通りになるようでむず痒い気分ではあったが、礼安たちは動かざるを得なかった。
 前方に歩を進めた、その時であった。
 ひとりひとりが、黒の壁で分断されたのだ。音もなく、誰に気づかれるわけでもなく。
 しかし、礼安だけは一瞬の間に院にあるものを手渡す。何のことかわからなかったものの、院はその物を見て理解した。
 誰かに『頑張って』なんて言葉などかけられる余裕もなく、五人の英雄は完全に孤立させられてしまった。
 多くの人が熱狂する渋谷・スクランブル交差点の空中、その中心地に黒い箱≪ブラック・ボックス≫が現れる。大きさはそれぞれ五メートルほどの立方体。
「さぁ、英雄≪ヒーロー≫と俺ら教会神奈川支部!! どっちが強ぇか、地獄の対抗戦の始まりだ!!」
 人々の狂声と共に、最悪の対抗戦が始まった。
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登場人物紹介

瀧本 礼安≪タキモト ライア≫

「誰かの『助けて』って声が聞こえたなら、そこに現れるのが私! 私たちが来たからにはもう大丈夫、安心していいよ!」

性別……女子

年齢……十五歳

年次……英雄学園入学前→『英雄≪ヒーロー≫』科・一年一組

血液型……AB型

髪型……水色セミロング

因子……『アーサー王伝説』よりアーサー・ペンドラゴン

欲の根源……『赤の他人も友達も、総じて守るため


 自他ともに認める、究極のお人よし。

 過去自分が受けた災難を他人に経験してほしくないために、困っている人に迷わず手を差し伸べることのできる、揺ぎ無い正義感の持ち主。学園から支給されたデバイスドライバーをほぼ初見で扱った、イレギュラー的存在でもある。

 それには多少なり理由があり、現トレジャーハンターでもある父親が元々英雄で、幼いころから触れていた点にある。

 彼女の中にある因子は、『アーサー王』。

 アーサー王自体が持つ高いポテンシャルと、礼安の持つ天性のバトルセンスによって、強さが上位のものとなる。使用武器は様々であり、その場に応じた多種多様な武器を持つ。

 彼女が戦う理由は、『赤の他人も友達も、総じて守るため』。

 お肉とゲームが大好き。それでいて栄養が大体一部に行くのと、動きやすい引き締まった体形をしているため、少なからず疎ましく思う人間はいる。本人曰く、『太らない体質』だそう。


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エヴァ・クリストフ

強い意志がある限り、『武器の匠』として仕事をするだけさ

性別……女子

年齢……十六歳

年次……『武器≪ウエポン≫』科・二年一組

血液型……AB型

髪型……金髪ロング

因子……刀鍛冶師・『村正

欲の根源……『???』


 この世界における、あらゆる武器のメンテナンスや製造が可能な『武器の匠』≪ウエポンズ・マスタリー≫。

 両親から継承し、若くしてプロ英雄たちの武器の面倒を見ている。そのため多くのプロ英雄たちは彼女に頭が上がらない。

 しかし同時にかなりの変態。この世に遍く存在する武器たちや、英雄の中でも女子や女性をこよなく愛しており(無論一般人含む)、所謂レズビアン。

 そのため、男がいるか、あるいは新たな扉を開きたくない女性は、こぞって彼女から距離をとる。本人はそろそろ変態気質を治そうとしているものの、一向に治る気配はない。何なら礼安たちの影響でもっと酷くなった。

 過去のトラウマから、男性と銃が大の苦手。彼女から語ってくれるときは、もう少し先になりそう。

 普段は非戦闘員であるが、親から受け継いだ『鍛冶屋の小槌』を使役し、辺りの無機物や有機物を武器として扱うことが可能。そのため、並の英雄よりも戦える。

 実はかなり頭脳指数が高く、作戦立案もできるほど。眉目秀麗さも合わせ、初見時の印象は普通ならとてもいい。普通なら。作中の女性キャラの中でも、屈指の『ナイスバディ』であり、主要キャラの中で一番『デカい』。僅差で次点は礼安。

 武器科でありながら、自分の開発した『デュアルムラマサ・Mark3』を用いて変身することが可能。厳密には英雄ではないため、変身時の掛け声が唯一異なる。

 アメリカンな大盛り料理、バーベキューが大好き。元々アメリカ出身のため、そういった豪快な食文化に慣れた結果。しかしそれよりも大好きなものは女子、女性を食べること。食人ではない。


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真来 院≪シンラ カコイ≫

「王の御前よ、道を開けなさい!!

性別……女子

年齢……十五歳

年次……英雄学園入学前→『英雄≪ヒーロー≫』科・一年一組

血液型……O型

髪型……クリムゾンレッドのショート

因子……『ギルガメッシュ叙事詩』よりギルガメッシュ王

欲の根源……『己の誇り(礼安や、礼安の好きな場所)を護るため


 礼安とは腐れ縁のようなもの――と言いながら、早十五年。長い間礼安の側に居続ける、礼安にとって大事な存在。

 日本を代表する真来財閥の長女で、次期当主として家を背負う人間でもある。お嬢様言葉が崩れたようなラフな口調をよくしている。まあだいたい礼安のせい。

 礼安をとりわけ大事に思っており、少々過保護な面が垣間見える。しかし律するときはきっちり決めるため、周りからの人望は礼安同様厚い。本人はお人よしではない、と語っているものの、礼安ほどではないにしてもお人よしであり、おせっかい焼きである。見ず知らずの人間に対してもかなりのおせっかい焼きであるが、礼安が関わるとお母さんのようになる。

 彼女の中にある因子は、『ギルガメッシュ』。

 まだ力を制御しきれはしないものの、入学前の生徒としては異例。弓を主に使い、トリッキーな戦いを得意とする。

 彼女が戦う理由は、『己の誇り(礼安や、礼安の好きな場所)を護るため』

 実は、礼安と院は幼馴染ではなく、家族関係にある。礼安と同様、亡くなった母親に対して尊敬の念を抱いている。今は礼安の精神の安寧を保つため、父である信一郎と共に礼安のメンタルケアを行っている。

 大分スレンダー体型であるため、礼安の『一部分』を時たま羨ましく思うときがある。礼安はそんなありのままの院を「可愛い!」と語るが、院はそんな礼安を見て「私の礼安は私なんかよりももっと可愛い!!」と親バカ(?)っぷりをいかんなく発揮する。

 甘いものが好きで、礼安とそこ辺りの好みが合わないことが悲しいらしい。


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天音 透≪アマネ トオル≫

「俺が、最強だ!!

性別……女子

年齢……十五歳

年次……英雄学園入試主席入学→『英雄≪ヒーロー≫』科・一年一組

血液型……AB型

髪型……黒ベースに黄色のメッシュの入ったショート

因子……『西遊記』より孫悟空

欲の根源……『特になし』→『自分で自分を守れない、弱い奴を従えて誰も傷つかない世を創る


 英雄学園の一般入試を勉学方面、実技方面両方でほぼ満点をたたき出し、主席として新入生生徒代表である生徒。入学前時点での強さは、礼安と同格であった。

 しかし、礼安と院両人が神奈川支部との一件を経て、圧倒的な強さを得た上に、学園長の実の娘であることが発覚してから、『恵まれた存在』として両人を敵視していた。

 埼玉県内のスラム街出身であり、自力で生きる術を身に着けているため、家事能力や自分より下の年齢の子供の世話はお手の物。実際、血縁関係こそないものの、『ホロコースト事件』により両親を失った子供たち数名を疑似的な家族として匿って世話していた。

 埼玉支部(特にそこの支部長である、コードネーム・グラトニー)とは並々ならぬ因縁があり、元々はある程度恵まれた家庭であった天音家を、グラトニー自身の逆恨みによって崩壊させられたため、最初は殺意混じりに敵対していた。

 『勝気少女』編で礼安やエヴァから『英雄』としての心構えを説かれ、グラトニーへの復讐をすることは変わらなかったが、生きて罪を償わせる選択を取った。その際、敵対視していた礼安と完全に和解し、協力し合って埼玉の平和を勝ち取った。

 主要キャラ内で最もスレンダーであり、圧倒的モデル体型。貧困生活を送っていたため、贅肉などは無く、一番『小さい』。一人称も『俺』。弟妹達を食って行かせるため、厳しい世を若い中で渡り歩いてきたため、肝はかなり据わっている。

 側近である『剣崎奈央≪ケンザキ ナオ≫』と『橘 立花≪タチバナ リッカ≫』とは、同じスラムで育った幼馴染。二人が武器科に移った後も、弟妹たちと共に食事したり、遊んだりしているらしい。

 埼玉での一件が片付いた後から、礼安に対しては尊敬の念とほんのちょっぴり好意的な目を向けている。

 院と同様甘いものが好き。埼玉支部との一件後、二人でスイーツ巡りをしたり、可愛いものを集めたりしているらしい。


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丙良 慎介≪ヘイラ シンスケ≫

「英雄の時間≪ヒーロータイム≫と、洒落こもうか」

性別……男子

年齢……十六歳

年次……英雄学園入試主席入学→『英雄≪ヒーロー≫』科・二年一組

血液型……AB型

髪型……ダークブラウンのベリーショート

因子……『ギリシャ神話』よりヘラクレス

欲の根源……『???


 英雄学園東京本校にて、座学実技共に好成績を収めた、そんな一握りの存在が持てる『仮免許』を持つ、英雄学園の中でもかなりのエリート。

 一般人からの認知度も、英雄の中での知名度も高く、さらに立ち居振る舞いに嫌な点が見つからない、好青年の極み。そのため、両性から人気がある。決め台詞内の『英雄の時間≪ヒーロータイム≫』は、今は亡き丙良の先輩の決め台詞であった。

 かつての一年生時代に、入学前の生徒が見学していた丙良の先輩との実習授業内において、神奈川支部の襲撃が発生。その時点の未熟な力ではヘリオをはじめとした面々には敵わず、丙良は深い傷を負った。さらに丙良が庇われた結果、丙良の先輩とその入学前の志望生徒二人が目の前で皆死亡。

 首席で入学したから、と言って世の中は甘くない、さらに自分が敵わない存在などごまんといることに辟易した丙良は、ふさぎ込んでしまった。誰かと深く関わることで、その誰かが亡くなった際の精神ダメージを、もろに食らうことを恐れた結果、後輩や先輩、同級生において、深く関わる存在は実に少なくなってしまった。現時点において、彼と同級生で深い関係にあるのは、エヴァと信玄(『大うつけ者』編時点)のみ。

 しかし、神奈川支部との一件の中で、狂気的なほどに勇敢な礼安、そしてその礼安のお目付け役である院との出会いで、保守的な考えが一部改まっていく。『大うつけ者』編時点において、後輩内において深い関係を築き上げたのは礼安、院、透の三人となった。

 彼の中にある因子は、『ヘラクレス』。主要キャラ内で、最も防御力が高いため、より堅実かつトリッキーな戦いを好む。礼安とは能力的に相性が悪いと思われがちだが、『砂鉄』を操る能力を用いれば電気と土は共存できる。

 好物はピザ。特に安定と値段重視のマルゲリータ。

 礼安たちの『微笑ましいやり取り』に、一切介入しないようにしている。


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瀧本 信一郎≪タキモト シンイチロウ≫

「只今より、怪人○○の処刑を執行する」

性別……男子

年齢……五十歳

年次(?)……『原初の英雄』→私財を投じ『英雄学園東京本校』設立、同タイミングで学園長就任

血液型……AB型

髪型……紫色のロングを後ろで雑に束ねた雑ポニーテール

因子……『???

欲の根源……『???


 世に『英雄≪ヒーロー≫』の概念を生みだした張本人であり、世界を股にかけ自分の気に入った変なもの……もとい聖遺物を収集するトレジャーハンターでもあり、英雄学園東京本校学園長をはじめとして、世界中に様々な分校を作り名誉学園長となった、日本を代表する『原初の英雄』。

 現役時代、その圧倒的強さから『処刑人≪スィーパー≫』とまで語られる男である。

 しかし、今はその尖った異名などどこへやら、子煩悩かつ常時柔らかな笑みを絶やさない、柔和な人物に。五十歳とは思えないほどにしわが存在せず、全てを知らない人が彼を見たら二十代と空見してしまうほど。

 学園生徒と分け隔てなく接しているものの、実の娘である礼安と院に関しては目に見えてデレデレ。尋常でないほどの学内通貨をお小遣いとして支給している。週一のペースで。

 今も、来たるべく災厄の可能性を鑑みて、修行は怠らないようにしているものの、現役時代よりは戦力ダウン。本人はそれを酷く恥じている様子である。

 その理由が、何より礼安と院の母であり、信一郎の妻を亡くしたことに起因している。もう大切な存在を亡くしてしまわないように、いざというタイミングで自分も動けるようにしているのだ。

 他の英雄と異なり、デバイスドライバーの祖たる『デバイスドライバー・シン』を用いて変身する。デバイスドライバーと比べるといわゆるプロトタイプに位置するモデルだが、実際の出力量はデバイスドライバーの百倍ほど。力の暴走などのリスクを完全に取り払ったがゆえに、ニュータイプでありながらパワーダウンしている。『シン』は現状、信一郎以外に扱える者は完全に存在しない。

 今まで、数多くの事件を単独で解決してきたのだが、日本中を震撼させた『とある事件』は何者かと共に戦い勝利したらしいが、その人物は不明。

 ちなみに、それほどの功績を残しておきながら、生徒たちにはまあまあなレベルでイジられている。特に、一昔前の学園ドラマの熱血教師を夢見るがゆえに、時代錯誤とも思えるシーンを実現させたいと、本人は試行錯誤している。しかし生徒たちは「そんなの今のご時世ありえねー」と白眼視。透もその一人である。しかしそのイジリを本人も仕方ないと容認しているため、特に問題はない。


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