第六十七話

文字数 4,990文字

「――礼安っち、見舞いに来たよん」
「あ、森ししょー! さっきぶりだね、いらっしゃい!」
 たくさんの管が付いているため、そこまで豪快に手を振ることは出来なかったものの、まるで数日ぶりに主人が帰ってきたポメラニアンのような、そんな愛嬌のオーラが辺りに一瞬で満ちた。
 検査入院、という名目で学園都市内の病院に入院していた。実際は、学園長自身がそう騙るよう各所に口合わせをしておいたのだ。
 ただでさえ、待田との戦いの中で、四肢が粉砕骨折以上の状態にまで陥った。カルマが動きやすくする目的のために治療したとはいえ、魔力の残滓による悪影響が無いわけではない。大きな個人病室内でたった一人きり。ある程度の贅沢は出来るようになっているが、ベッドの上からは降りることのできない生活であった。
 実際、先ほど学園長室にいたのも特例中の特例。普通だったら医者に怒られてしまうが、せっかく顔を合わせて話をしたい、礼安たっての希望であったからだ。
 そんな味気の無い入院生活の中で、少しでも人との接点を作ってやりたい、その一心で信玄は花束とフルーツバスケットを持って見舞いに来たのだ。
 傍の花瓶に自身の持ってきた花束を優しく挿入すると、礼安はその生き生きとした花に目を奪われる。傍に置かれたフルーツバスケットの中から、リンゴとペティナイフを取り出し、慣れた手つきで捌き始めたのだった。
 なぜか礼安から、ニンニクとその他もろもろの、並大抵の女子からはにおわない、火力の高すぎる二郎めいた香りが漂っていることに疑問符を浮かべながら。
「入院生活、大したもん食えないだろ。だからフルーツ持ってきたよん。俺っちもフルーツ好きだし」
「甘いの基本的に苦手だけど、フルーツはまだイケるよ! 後、ベッドの上から出られないこと以外、不自由は無いよ? ご飯美味しいし! 昨日は麺量一キログラムの二郎系ラーメン全マシマシ食べた! お肉はやっぱり正義だよ!」
「入院中にそんな野郎でも食わないような火力全開なもん食うなよ!! だから滅茶苦茶ニンニク臭いのか!?」
「えへへー」
「いやえへへーじゃあねえし! 俺っちもそんな量食えねえって!? 胃袋ブラックホールかよ!!」
 礼安の天然さに気圧されながらも、綺麗な兎の形をした林檎を作り上げ、皿の上に乗せる。
「んな脂っこいものばっか食べてると胃袋死ぬぜ?」
「?? 胃袋は死なないよ??」
「――もういいや、ツッコむの疲れた……」
 日頃彼女の世話をしている、院たちの凄さを実感した信玄であった。

 二人で一玉の林檎を食べあい、一通り談笑していると、不思議と話題の流れは合同演習会の話に。信玄は最後まで食らいついていたものの、礼安は様々な事情が折り重なって後半の記憶を完全に無くしていた。
「……何をしたかも、待田さん相手にどこまでやれたのかも、何もかも忘れちゃったんだ。せっかく、丙良ししょー達がお膳立てしてくれたのに」
 そう悲観することはない、と言いかけたものの、自責の念が強い礼安にとって、その言葉ほど彼女を苦しめるものはない。気を遣われている、きっと彼女はそう思う事だろう。
「……掻い摘んで説明するとな。礼安っち……バケモンみてえな強さになって待田をボコボコにしちまったんだ。俺っちたちが敵わなかった、手配書で一億円の首を取ったんだ」
 嘘は言ってなかった。ただ大切な部分をぼやかしていただけ。そのため、礼安の第六感に引っかかることはなかった。
 実際のことを話してしまったら、きっと彼女はより自責の念に駆られることだろう。自分の体が、あろうことか『教会』トップにいいようにされてしまった事実。そんなこと、英雄としてあってはならない、どころか、通常ならそんな可能性すらあり得ない。
(一体、この子に何があるって言うんだ……?)
 怪訝そうな表情の信玄であったが、心配そうな礼安の表情を見やると、黒サングラスを動かして一瞬でいつもの飄々とした表情へ戻る。
「礼安っちはさ、あの戦いで何を学んだ?」
「――血の繋がりは何よりも大切な関係であること、そして『嫉妬』にまつわる知識かな」
「……俺はさ、努力し続けることの重要性っての、知れたよ。自覚こそしてないけど……きっと礼安っちも一緒だと思う」
 努力し続けるにも、才能がいる。故に世の中には『努力の天才』と言われる概念が存在する。礼安は元からある程度の才能があるはずなのに、徹底的に死地に赴いて多くの研鑽を重ねていた。実戦こそが自分を強くしてくれる、最高のトレーニングジム。
 生まれ育ったそばで、父親の大きな背中を見続けてきた礼安にとって、今まさに重ねている研鑽も、本人にとっては実に大したことのない、最低限の積み重ねなのだろう。学生が日ごろの授業内容を、懇切丁寧にノートに纏めていくように。
 もし、これらの努力を怠っていたとしたら。きっと、待田に見初められて生存する、なんてことはなく。大田区での攻防において命を落としていただろう。
 信玄もそう。本当なら、彼の性格上面倒くさがり屋の気が強い。弟に全ての道を譲り、自分の道を自分で閉ざしていたとしたら。弟にも見限られた結果、不良としてどんどん道を誤っていったことだろう。
 通常なら、マイナスの感情である『嫉妬心』。それは二人を大きく成長させたのだ。
「……どう足掻いても、一般人≪パンピー≫ってのは他責感情が強い。だからこそ誰かを憎み、誰かに嫉妬しなきゃあ自分を保っていられない。運命のいたずらで……周りよりちょっと優れているだけなんだ、俺っちたちは。だからこそ風当たりが望まないほどに強くなっちまう」
 礼安や信玄などを、酷く嫉妬していた裏切り者たちを擁護するわけではない。
裏切り者たちは皆、たまたま『周りよりも頭一つ優れていた』だけの、凄い力を持つ一般人なのだ。感性も何も、とりわけ芸術家のように秀でているわけではない、年齢が頭抜けて伸びているわけでもない。
故に悩み、故に染まり。少し境遇が違ったら、自分たちもああなっていた可能性があった。どれだけ努力しようと、芽が出なかったことによりそうなる可能性があった。
故に、努力し続けることはリスクを伴うのだ。自分を高めるとともに傷つけ続ける、最悪の地獄車。そこを抜け出し成功した人間を嫉妬するのは、当然である。
「私……まだこんなマイナスの感情は分からないけど、嫉妬は……良い感情なの、悪い感情なの?」
「正直――それは俺っちも分かんね。そこまで豊富な人生経験しているわけじゃあねえからさ……でも、これは言える。嫉妬されてる分、自分は優れているんだって。気負うことはせず、より皆を嫉妬させるくらいに伸びてやるのが、皆の成長のためにもなるんじゃあねえかな、って」
 嫉妬。上昇志向になりうるかどうかは、当の本人のこれからにしか分からない。しかし現在進行形でされている場合、それは自分が他よりも優れている証でしかないのだ。
 ここで日和って、委縮してしまったらその嫉妬は怒りへと変わる。その例がまさに過去の信玄と信之の関係性であった。中途半端に道を譲ることは、持たざる者への怒りを買う。恵まれたからには、その道を征くのみである。
「……だから、断言は出来ねえんだ。嫉妬心がマイナスの感情である、なんてことは」
「――そっか、難しいね」
 これより先は、ある種の哲学。その道の学問を学んでいるわけではないため、ただの持論である。しかし、並の高校生以上には辛い人生を歩んでいる存在なため、その含蓄はかなりのものであった。
「……難しいこと考えていたらお腹減っちゃった、森ししょーも何か食べようよ?」
「今さっき林檎食ったろ?? というか匂いの真新しさからして、二郎系ラーメン食ったのも俺の来る一時間以内の話だろ??」
「うん、来てくれる十分前くらいだよ!」
「トンデモねェスピード感だな全く提供されるのも食うのも!! この病院二郎系ラーメン屋か?!」
 ベッド横のデバイスで、メニューを開いて信玄に見せる礼安。通常なら食券制の店が多いが、まさかのデバイス内で全完結する、トッピングのマシやマシマシを指定できる驚異の便利さ。こんなところで実店舗以上の利便性を上げてどうなるのだろうか。学園長が指示したのだろうか。
そんなことはさておき、礼安は既に慣れた手つきで注文を終えており、横に注文待ちとして聳え立つのは、麺量一キロ五百グラムの全マシマシマシトッピング。マシマシまでしか選択肢は無かったはずなのに、ものの数日の間にデバイス操作をマスターしていたのだ。
「何で裏メニューみたいなの見つけてるわけ……?」
「違うよ、既に何回も頼んでるからってので特別に開放してもらったの!」
「ある意味裏メニューじゃあねえか!!」
 信玄は久しぶりの二郎系なため、麺量三百グラムの野菜マシ程度に留めておいた。礼安の病室で食い過ぎによる虹色の逆噴射、なんて情けない姿を晒したくはなかったのだ。
 その後、礼安と信玄の夕食が運ばれたのだが、礼安の一杯はどんぶりではなくまさかの巨大すり鉢。
「いやそれ器じゃあねえって!?」
 たった一時間程度。礼安と同じ空間にいただけで、ツッコミ力が上昇したような気がする信玄。ツッコミの努力より、戦闘面の努力を重ねたかったのだが。しかし、努力の大切さは身をもって知ることが出来た信玄であった。

 信玄に「食後の運動をしたい」と呼び出された丙良。その先で待っていたのは、学園長と信玄の二人きりが立つ校庭であった。
「何なの信玄、急に食後の運動がしたい……って、何で不破学園長がいるんです?」
「いやね、ついちょっと前に君たちよりも下級生が、校則違反の決闘によって反省文と学校窓磨きの罰が執行されたって話……知ってる? 不当な決闘をしないよう見張ってたんだ」
「それ礼安ちゃんと透ちゃんの話じゃあないですか」
 何のことやら、と言ったように、下手糞な口笛を吹きとぼける信一郎。そんなふざけた様子の学園長とは異なり、実に真剣な面持ちの信玄。何故かニンニクの臭いが強い。
「信玄……すっごいニンニク臭いよ。吸血鬼退治でもするの?」
「――文句は礼安っちに言ってくれ」
 何のことか理解できない様子であったが、真剣な雰囲気を察して信玄に超強力消臭剤だけ撒くと、紙切れ一枚と共に程離れた位置へ移動した信一郎。学園都市内で新たに開発された、一撒きするだけで全ての臭いを消せる、とんでもない代物である。
「……それで、何でこの場に呼び出したのかな? 一緒にトレーニング手伝ってくれ、ってこと?」
 しかし、その丙良の表情は、心の底では理解している、そう言いたげな柔らかな笑みを浮かべていたのだ。長いことコンビとして大暴れしていたからこそ、二人の間には見えない繋がりが存在するのだ。
 少し間を置きはした。しかし、何も分からなくなっているわけではない。寧ろ、ほんの少し距離を置いたことで、今回の合同演習会でより理解したのだ、本当に相性のいいタッグは別にいると。
それこそが、二人の眼前にいるお互いなのだ。
「――あん時は悪かった、怒鳴ったりして。慎ちゃんの事情も知らずにさ」
「……でも、あの時。久しぶりに信玄をあの渾名で呼んだ時。自分の悩みは……杞憂なんだって知れた。次いつ会えるかも分からない、そんな儚い存在である僕たちは……悩んでいちゃいけないんだ」
 失ってしまう可能性を考えて、よそよそしくした翌日。その人物がいなくなってしまうことを考えたら、非常にやりきれない気持ちで満たされてしまうだろう。
 丙良の行動は、『喪ってしまう可能性』に慎重になり過ぎた結果、『喪った時』のことを考え切れていなかったのだ。
 だからこそ、丙良は信玄に拳を向ける。お互い、今まで生きてきて年齢の割に多くの苦労を経験した。その疲れ、経験、痛み、そしてそれらで得た強靭さが込められた拳を、軽くぶつける。
「そんじゃあ改めて……食後の運動付き合ってくれるか? 『慎ちゃん』」
「……とはいっても、僕はまだ何も食べてないから、腹を減らすのにうってつけなレベルで試合おうじゃあないか――『ノッブ』」
 お互い、ロック・バスターと念銃を顕現させ、背を向けて程離れる。さながら荒野の決闘と言わんばかりに。
 夜の校庭。たった二人きりの、友情の交わし合いが行われるのであった。
「「変身!!」」
ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)

登場人物紹介

瀧本 礼安≪タキモト ライア≫

「誰かの『助けて』って声が聞こえたなら、そこに現れるのが私! 私たちが来たからにはもう大丈夫、安心していいよ!」

性別……女子

年齢……十五歳

年次……英雄学園入学前→『英雄≪ヒーロー≫』科・一年一組

血液型……AB型

髪型……水色セミロング

因子……『アーサー王伝説』よりアーサー・ペンドラゴン

欲の根源……『赤の他人も友達も、総じて守るため


 自他ともに認める、究極のお人よし。

 過去自分が受けた災難を他人に経験してほしくないために、困っている人に迷わず手を差し伸べることのできる、揺ぎ無い正義感の持ち主。学園から支給されたデバイスドライバーをほぼ初見で扱った、イレギュラー的存在でもある。

 それには多少なり理由があり、現トレジャーハンターでもある父親が元々英雄で、幼いころから触れていた点にある。

 彼女の中にある因子は、『アーサー王』。

 アーサー王自体が持つ高いポテンシャルと、礼安の持つ天性のバトルセンスによって、強さが上位のものとなる。使用武器は様々であり、その場に応じた多種多様な武器を持つ。

 彼女が戦う理由は、『赤の他人も友達も、総じて守るため』。

 お肉とゲームが大好き。それでいて栄養が大体一部に行くのと、動きやすい引き締まった体形をしているため、少なからず疎ましく思う人間はいる。本人曰く、『太らない体質』だそう。


※設定アイコンはイメージです

エヴァ・クリストフ

強い意志がある限り、『武器の匠』として仕事をするだけさ

性別……女子

年齢……十六歳

年次……『武器≪ウエポン≫』科・二年一組

血液型……AB型

髪型……金髪ロング

因子……刀鍛冶師・『村正

欲の根源……『???』


 この世界における、あらゆる武器のメンテナンスや製造が可能な『武器の匠』≪ウエポンズ・マスタリー≫。

 両親から継承し、若くしてプロ英雄たちの武器の面倒を見ている。そのため多くのプロ英雄たちは彼女に頭が上がらない。

 しかし同時にかなりの変態。この世に遍く存在する武器たちや、英雄の中でも女子や女性をこよなく愛しており(無論一般人含む)、所謂レズビアン。

 そのため、男がいるか、あるいは新たな扉を開きたくない女性は、こぞって彼女から距離をとる。本人はそろそろ変態気質を治そうとしているものの、一向に治る気配はない。何なら礼安たちの影響でもっと酷くなった。

 過去のトラウマから、男性と銃が大の苦手。彼女から語ってくれるときは、もう少し先になりそう。

 普段は非戦闘員であるが、親から受け継いだ『鍛冶屋の小槌』を使役し、辺りの無機物や有機物を武器として扱うことが可能。そのため、並の英雄よりも戦える。

 実はかなり頭脳指数が高く、作戦立案もできるほど。眉目秀麗さも合わせ、初見時の印象は普通ならとてもいい。普通なら。作中の女性キャラの中でも、屈指の『ナイスバディ』であり、主要キャラの中で一番『デカい』。僅差で次点は礼安。

 武器科でありながら、自分の開発した『デュアルムラマサ・Mark3』を用いて変身することが可能。厳密には英雄ではないため、変身時の掛け声が唯一異なる。

 アメリカンな大盛り料理、バーベキューが大好き。元々アメリカ出身のため、そういった豪快な食文化に慣れた結果。しかしそれよりも大好きなものは女子、女性を食べること。食人ではない。


※設定アイコンはイメージです

真来 院≪シンラ カコイ≫

「王の御前よ、道を開けなさい!!

性別……女子

年齢……十五歳

年次……英雄学園入学前→『英雄≪ヒーロー≫』科・一年一組

血液型……O型

髪型……クリムゾンレッドのショート

因子……『ギルガメッシュ叙事詩』よりギルガメッシュ王

欲の根源……『己の誇り(礼安や、礼安の好きな場所)を護るため


 礼安とは腐れ縁のようなもの――と言いながら、早十五年。長い間礼安の側に居続ける、礼安にとって大事な存在。

 日本を代表する真来財閥の長女で、次期当主として家を背負う人間でもある。お嬢様言葉が崩れたようなラフな口調をよくしている。まあだいたい礼安のせい。

 礼安をとりわけ大事に思っており、少々過保護な面が垣間見える。しかし律するときはきっちり決めるため、周りからの人望は礼安同様厚い。本人はお人よしではない、と語っているものの、礼安ほどではないにしてもお人よしであり、おせっかい焼きである。見ず知らずの人間に対してもかなりのおせっかい焼きであるが、礼安が関わるとお母さんのようになる。

 彼女の中にある因子は、『ギルガメッシュ』。

 まだ力を制御しきれはしないものの、入学前の生徒としては異例。弓を主に使い、トリッキーな戦いを得意とする。

 彼女が戦う理由は、『己の誇り(礼安や、礼安の好きな場所)を護るため』

 実は、礼安と院は幼馴染ではなく、家族関係にある。礼安と同様、亡くなった母親に対して尊敬の念を抱いている。今は礼安の精神の安寧を保つため、父である信一郎と共に礼安のメンタルケアを行っている。

 大分スレンダー体型であるため、礼安の『一部分』を時たま羨ましく思うときがある。礼安はそんなありのままの院を「可愛い!」と語るが、院はそんな礼安を見て「私の礼安は私なんかよりももっと可愛い!!」と親バカ(?)っぷりをいかんなく発揮する。

 甘いものが好きで、礼安とそこ辺りの好みが合わないことが悲しいらしい。


※設定アイコンはイメージです

天音 透≪アマネ トオル≫

「俺が、最強だ!!

性別……女子

年齢……十五歳

年次……英雄学園入試主席入学→『英雄≪ヒーロー≫』科・一年一組

血液型……AB型

髪型……黒ベースに黄色のメッシュの入ったショート

因子……『西遊記』より孫悟空

欲の根源……『特になし』→『自分で自分を守れない、弱い奴を従えて誰も傷つかない世を創る


 英雄学園の一般入試を勉学方面、実技方面両方でほぼ満点をたたき出し、主席として新入生生徒代表である生徒。入学前時点での強さは、礼安と同格であった。

 しかし、礼安と院両人が神奈川支部との一件を経て、圧倒的な強さを得た上に、学園長の実の娘であることが発覚してから、『恵まれた存在』として両人を敵視していた。

 埼玉県内のスラム街出身であり、自力で生きる術を身に着けているため、家事能力や自分より下の年齢の子供の世話はお手の物。実際、血縁関係こそないものの、『ホロコースト事件』により両親を失った子供たち数名を疑似的な家族として匿って世話していた。

 埼玉支部(特にそこの支部長である、コードネーム・グラトニー)とは並々ならぬ因縁があり、元々はある程度恵まれた家庭であった天音家を、グラトニー自身の逆恨みによって崩壊させられたため、最初は殺意混じりに敵対していた。

 『勝気少女』編で礼安やエヴァから『英雄』としての心構えを説かれ、グラトニーへの復讐をすることは変わらなかったが、生きて罪を償わせる選択を取った。その際、敵対視していた礼安と完全に和解し、協力し合って埼玉の平和を勝ち取った。

 主要キャラ内で最もスレンダーであり、圧倒的モデル体型。貧困生活を送っていたため、贅肉などは無く、一番『小さい』。一人称も『俺』。弟妹達を食って行かせるため、厳しい世を若い中で渡り歩いてきたため、肝はかなり据わっている。

 側近である『剣崎奈央≪ケンザキ ナオ≫』と『橘 立花≪タチバナ リッカ≫』とは、同じスラムで育った幼馴染。二人が武器科に移った後も、弟妹たちと共に食事したり、遊んだりしているらしい。

 埼玉での一件が片付いた後から、礼安に対しては尊敬の念とほんのちょっぴり好意的な目を向けている。

 院と同様甘いものが好き。埼玉支部との一件後、二人でスイーツ巡りをしたり、可愛いものを集めたりしているらしい。


※設定アイコンはイメージです

丙良 慎介≪ヘイラ シンスケ≫

「英雄の時間≪ヒーロータイム≫と、洒落こもうか」

性別……男子

年齢……十六歳

年次……英雄学園入試主席入学→『英雄≪ヒーロー≫』科・二年一組

血液型……AB型

髪型……ダークブラウンのベリーショート

因子……『ギリシャ神話』よりヘラクレス

欲の根源……『???


 英雄学園東京本校にて、座学実技共に好成績を収めた、そんな一握りの存在が持てる『仮免許』を持つ、英雄学園の中でもかなりのエリート。

 一般人からの認知度も、英雄の中での知名度も高く、さらに立ち居振る舞いに嫌な点が見つからない、好青年の極み。そのため、両性から人気がある。決め台詞内の『英雄の時間≪ヒーロータイム≫』は、今は亡き丙良の先輩の決め台詞であった。

 かつての一年生時代に、入学前の生徒が見学していた丙良の先輩との実習授業内において、神奈川支部の襲撃が発生。その時点の未熟な力ではヘリオをはじめとした面々には敵わず、丙良は深い傷を負った。さらに丙良が庇われた結果、丙良の先輩とその入学前の志望生徒二人が目の前で皆死亡。

 首席で入学したから、と言って世の中は甘くない、さらに自分が敵わない存在などごまんといることに辟易した丙良は、ふさぎ込んでしまった。誰かと深く関わることで、その誰かが亡くなった際の精神ダメージを、もろに食らうことを恐れた結果、後輩や先輩、同級生において、深く関わる存在は実に少なくなってしまった。現時点において、彼と同級生で深い関係にあるのは、エヴァと信玄(『大うつけ者』編時点)のみ。

 しかし、神奈川支部との一件の中で、狂気的なほどに勇敢な礼安、そしてその礼安のお目付け役である院との出会いで、保守的な考えが一部改まっていく。『大うつけ者』編時点において、後輩内において深い関係を築き上げたのは礼安、院、透の三人となった。

 彼の中にある因子は、『ヘラクレス』。主要キャラ内で、最も防御力が高いため、より堅実かつトリッキーな戦いを好む。礼安とは能力的に相性が悪いと思われがちだが、『砂鉄』を操る能力を用いれば電気と土は共存できる。

 好物はピザ。特に安定と値段重視のマルゲリータ。

 礼安たちの『微笑ましいやり取り』に、一切介入しないようにしている。


※設定アイコンはイメージです

瀧本 信一郎≪タキモト シンイチロウ≫

「只今より、怪人○○の処刑を執行する」

性別……男子

年齢……五十歳

年次(?)……『原初の英雄』→私財を投じ『英雄学園東京本校』設立、同タイミングで学園長就任

血液型……AB型

髪型……紫色のロングを後ろで雑に束ねた雑ポニーテール

因子……『???

欲の根源……『???


 世に『英雄≪ヒーロー≫』の概念を生みだした張本人であり、世界を股にかけ自分の気に入った変なもの……もとい聖遺物を収集するトレジャーハンターでもあり、英雄学園東京本校学園長をはじめとして、世界中に様々な分校を作り名誉学園長となった、日本を代表する『原初の英雄』。

 現役時代、その圧倒的強さから『処刑人≪スィーパー≫』とまで語られる男である。

 しかし、今はその尖った異名などどこへやら、子煩悩かつ常時柔らかな笑みを絶やさない、柔和な人物に。五十歳とは思えないほどにしわが存在せず、全てを知らない人が彼を見たら二十代と空見してしまうほど。

 学園生徒と分け隔てなく接しているものの、実の娘である礼安と院に関しては目に見えてデレデレ。尋常でないほどの学内通貨をお小遣いとして支給している。週一のペースで。

 今も、来たるべく災厄の可能性を鑑みて、修行は怠らないようにしているものの、現役時代よりは戦力ダウン。本人はそれを酷く恥じている様子である。

 その理由が、何より礼安と院の母であり、信一郎の妻を亡くしたことに起因している。もう大切な存在を亡くしてしまわないように、いざというタイミングで自分も動けるようにしているのだ。

 他の英雄と異なり、デバイスドライバーの祖たる『デバイスドライバー・シン』を用いて変身する。デバイスドライバーと比べるといわゆるプロトタイプに位置するモデルだが、実際の出力量はデバイスドライバーの百倍ほど。力の暴走などのリスクを完全に取り払ったがゆえに、ニュータイプでありながらパワーダウンしている。『シン』は現状、信一郎以外に扱える者は完全に存在しない。

 今まで、数多くの事件を単独で解決してきたのだが、日本中を震撼させた『とある事件』は何者かと共に戦い勝利したらしいが、その人物は不明。

 ちなみに、それほどの功績を残しておきながら、生徒たちにはまあまあなレベルでイジられている。特に、一昔前の学園ドラマの熱血教師を夢見るがゆえに、時代錯誤とも思えるシーンを実現させたいと、本人は試行錯誤している。しかし生徒たちは「そんなの今のご時世ありえねー」と白眼視。透もその一人である。しかしそのイジリを本人も仕方ないと容認しているため、特に問題はない。


※設定アイコンはイメージです

ビューワー設定

文字サイズ
  • 特大
背景色
  • 生成り
  • 水色
フォント
  • 明朝
  • ゴシック
組み方向
  • 横組み
  • 縦組み