After that.

文字数 513文字

 それから。
 集会場に町の人達を集めた。映画が完成したから、その上映会だった。老人達は、素人の作った拙い下手な映画に何を期待しているのか、心ときめかせてまるで少年少女の様だった。
 並んだパイプ椅子に座った人々、埃を払った机の上にノートパソコンを置いて明かりを消した。
 辰雄は何だか嬉しそうに楽しそうに、だけどちょっとだけ臆病そうに緊張して、少し震えていた。そんな手で再生ボタンを押す前に、

「なあ辰雄」

 晴敏は、声をかけた。

「何です?」

「居てくれてありがとな」

「え……あ、はい!」

 上映会が始まりカラーの映像が映し出され、辰雄と町の人達が画面を見始めると、晴敏はそっと外に出た。流れ星はもう燃え尽きて、星も見えない暗い夜。月は変わらずに浮いていた。
 家に帰って、乾燥大麻が詰まった段ボールをタントに積んだ。収穫すると、洋間の中は栽培道具だけが残されて、それ以外にはコンビニ飯やインスタントラーメンのゴミばかり。

(きっと、お化けも寄り付かない)

 例えば自分が死んでお化けになっても、こんな家には住み着かない。帰ってこない。
 運転席に座ってエンジンをかけてラジオをつけると、辰雄の好きななんとかプリンスとかいうアイドルの曲が流れた。
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