#15
文字数 1,507文字
「ただいま」
働き疲れて家に戻った僕はそう言ってドアを開けた。
そこに待っていたのは見たこともない景色だった。
まず、両親の態度が違っていた。いつもだったら僕の言葉を無視するか「うるさい」と怒鳴るはずだ。
しかし、今日はいつもは酒を飲んだいるお父さんとお母さんが揃って食卓につき、こちらにを見ていた。
「アレグレ。疲れたでしょう。さあ早く座ってご飯を食べなさい」
そう言うのは僕の母、ルアン・ドラド。彼女の羽は薄い黄色でどこか僕の色に似ている。
だからか、いつも僕を嫌っていた。
黄金色であると言う以外僕に価値を見出していなかったように思う。
彼女はいつもは父のジュルター・ドラドと共に酒を浴びるように飲んでいた。
そのせいか、声質は言葉に似合わずガサガサしている。
そしてかの女の隣に座っているのはジュルターだ。いつも通り喋る気はないようだが空気が普段とだいぶ違う。
何かあったのだろうか。怪訝な会をして首を傾げる僕にルアンが言う。
「今日はあなたの誕生日じゃないの。忘れちゃった?」
そうなのか。
僕は生まれてこのかた誕生日を祝われたことはない。僕に労働を強要する親は誕生日も当たり前のように祝ってくれなかった。だから僕は僕の誕生日を知らない。
忘れるも何も——。
声に出して言いたかったがやめておいた。せっかくのムードがぶち壊しになる。僕もこんな日を台無しにしたくはなかった。
食卓について料理を頬張る。ルアンは時々僕に話しかける。
「いつもいつも疲れるでしょう。今日くらいはゆっくりして」
全てあんたたちが強制しているんだろう。心の中では思っているが顔にも出さない。
なぜいきなりこんなに豪華のな食事を用意して祝うのが疑問でならなかった。僕の頭の中はその疑問でいっぱいだった。
食事を終えて、僕は寝ようと地面に座った布にくるまった。
するとまたもやルアンは僕に対して言った。
「そんなところでな寝ちゃ風邪引くでしょう。ちゃんとベッドで寝なさい」
誰のことばか疑いたくなった。僕を床に寝させてベッドに一切触れさせなかったのは誰だと思ってるんだ。
まさか都合よく記憶がきえている?
そんなことを想像してしまうくらいに家の中は異常だった。
そんな状況でもちろんぐっすり眠れるわけがない。ベッドに潜り込んでも僕は目を覚ましたままだった。
どれだけ経っただろうか。僕もうとうとし始めた頃だ。
リビングの方から声が聞こえてきた。
「——こいつの羽は高く売れる。裏社会の奴らはみんな金色の羽根で人生をやり直したいんだろう」
「記憶も無くなるからやり直しにはピッタリだしね」
心臓がバクバク動いている。
僕は一瞬にして悟った。
やはりあの豪華な食事も優しかった親たちも全てが僕から羽を奪い取るための策だった。
お父さんとお母さんは僕の羽を刈り取ろうとしている。
それに気づいて僕は慌ててベットからおり、リビングに出る。
寝ていると思っていたのだろう。驚いて反応できていない二人を横目に僕は家から逃げた。
はっ。そこで僕は目が覚めた。あたりは少し明るくなり始めていた。
見るとアセスナはまだ寝息を立てている。
両親の夢をみるのなんて何年振りなのだろう。
何かきっかけがあったのだろうか。
そんなふうに考えていくとあることに思い至った。
そして僕は彼女の金髪が輝く頭に手を乗せて起こさないように小さく呟いた。
「僕はね。実は君に隠し事をしているの。僕は君に羽を譲れるんだ。でもね、君に譲ってしまったら、君の記憶は消えてしまう。辛い記憶も無くなってきっと幸せの人生が歩めるはずだよ」
そうしてから僕は彼女にもたれかかり、再び眠ってしまった。
働き疲れて家に戻った僕はそう言ってドアを開けた。
そこに待っていたのは見たこともない景色だった。
まず、両親の態度が違っていた。いつもだったら僕の言葉を無視するか「うるさい」と怒鳴るはずだ。
しかし、今日はいつもは酒を飲んだいるお父さんとお母さんが揃って食卓につき、こちらにを見ていた。
「アレグレ。疲れたでしょう。さあ早く座ってご飯を食べなさい」
そう言うのは僕の母、ルアン・ドラド。彼女の羽は薄い黄色でどこか僕の色に似ている。
だからか、いつも僕を嫌っていた。
黄金色であると言う以外僕に価値を見出していなかったように思う。
彼女はいつもは父のジュルター・ドラドと共に酒を浴びるように飲んでいた。
そのせいか、声質は言葉に似合わずガサガサしている。
そしてかの女の隣に座っているのはジュルターだ。いつも通り喋る気はないようだが空気が普段とだいぶ違う。
何かあったのだろうか。怪訝な会をして首を傾げる僕にルアンが言う。
「今日はあなたの誕生日じゃないの。忘れちゃった?」
そうなのか。
僕は生まれてこのかた誕生日を祝われたことはない。僕に労働を強要する親は誕生日も当たり前のように祝ってくれなかった。だから僕は僕の誕生日を知らない。
忘れるも何も——。
声に出して言いたかったがやめておいた。せっかくのムードがぶち壊しになる。僕もこんな日を台無しにしたくはなかった。
食卓について料理を頬張る。ルアンは時々僕に話しかける。
「いつもいつも疲れるでしょう。今日くらいはゆっくりして」
全てあんたたちが強制しているんだろう。心の中では思っているが顔にも出さない。
なぜいきなりこんなに豪華のな食事を用意して祝うのが疑問でならなかった。僕の頭の中はその疑問でいっぱいだった。
食事を終えて、僕は寝ようと地面に座った布にくるまった。
するとまたもやルアンは僕に対して言った。
「そんなところでな寝ちゃ風邪引くでしょう。ちゃんとベッドで寝なさい」
誰のことばか疑いたくなった。僕を床に寝させてベッドに一切触れさせなかったのは誰だと思ってるんだ。
まさか都合よく記憶がきえている?
そんなことを想像してしまうくらいに家の中は異常だった。
そんな状況でもちろんぐっすり眠れるわけがない。ベッドに潜り込んでも僕は目を覚ましたままだった。
どれだけ経っただろうか。僕もうとうとし始めた頃だ。
リビングの方から声が聞こえてきた。
「——こいつの羽は高く売れる。裏社会の奴らはみんな金色の羽根で人生をやり直したいんだろう」
「記憶も無くなるからやり直しにはピッタリだしね」
心臓がバクバク動いている。
僕は一瞬にして悟った。
やはりあの豪華な食事も優しかった親たちも全てが僕から羽を奪い取るための策だった。
お父さんとお母さんは僕の羽を刈り取ろうとしている。
それに気づいて僕は慌ててベットからおり、リビングに出る。
寝ていると思っていたのだろう。驚いて反応できていない二人を横目に僕は家から逃げた。
はっ。そこで僕は目が覚めた。あたりは少し明るくなり始めていた。
見るとアセスナはまだ寝息を立てている。
両親の夢をみるのなんて何年振りなのだろう。
何かきっかけがあったのだろうか。
そんなふうに考えていくとあることに思い至った。
そして僕は彼女の金髪が輝く頭に手を乗せて起こさないように小さく呟いた。
「僕はね。実は君に隠し事をしているの。僕は君に羽を譲れるんだ。でもね、君に譲ってしまったら、君の記憶は消えてしまう。辛い記憶も無くなってきっと幸せの人生が歩めるはずだよ」
そうしてから僕は彼女にもたれかかり、再び眠ってしまった。