火星の人面

文字数 838文字

突然だが、僕の主張を聞いて欲しい

 ホーケイなのは僕のせいじゃない。


 それは僕の意思とは関係なく、剥ける事を許さなかった遺伝子のせいだ。


 この世に生まれ落ちてはや三十年。


 一度たりとも頑なに剥けなかったちんちんの皮。

いや、直接的すぎるネーミングよりポールレザーと言ったほうが良いか。


その方が高級な感じもするし。

 僕は今まで自分がホーケイである事に疑問を感じなかったし、その事に対して深く考えた事はなかった。


 でも今、風呂場で身体を洗っている時に若かった頃の檀ふみを思い出して勃起してしまい、これはいかんと無意識に伸ばした手からはみ出る皮をみるに至り、人生で初めて自分の皮の立ち位置を考えさせられた。

一体、何故勃起した本体より長いのか?

 長さで言えば、それはもう本体のちんちんより優れているという事で、それはつまり皮が本体であっても不思議ではないのと同義。


 今までちんちんこそが主役だと思っていたが、実はそこに覆い被さり守護している物こそが主役なのではなかろうか。


 興味の湧いた僕は、人生で初めて皮を剥いてみる決意を固めた。


 この先の地域は未開拓の未発見ゾーン。


 一体何が待ち受けているのだろうか。


 僕は恐る恐る皮に手を掛け、ゆっくりと下ろして行った。


 まずエロ動画で見たような桃色の亀頭が見え、次いで教科書に載っている羽柴秀吉の絵みたいな爺さんの顔が見えた。


 爺さんは急に光を当てられ眩しかったのか不機嫌そうに顔を歪め、僕に対してこう囁きかけてきた。

のう、お主。お主にはまだ早い

 それを聞いた僕は慌てて皮を戻し、何もなかった感じの平常心であろうとした。


 そう。平常心こそ大事なのだ。


 踏み込むべき時期ではなかったのに踏み込んでしまった自分の愚かさが恨めしい。


 もっと僕は悟りを開かなければいけない。


 それまで皮の中身を見るのは封印だ。


 いつかホーケイの、僕がホーケイであらねばならなかった真の意味が解った時。


 その時にもう一度実践してみよう。


 爺さんもきっとそう望んでいる筈だ。

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