非リアが異世界転生する前の話を端折らずに書いてみたら重くなった件

文字数 1,355文字

 ストレスの無い職場で働きたい

 誰もが思う事。


 しかし現実的にそんな職場は存在しない。


 人と関わる限りストレスは蓄積されて行く。

 私は怠惰で優柔不断で身勝手で、そして心が弱い。


 だからまた仕事を辞めてしまった。


 これで数十回目になる退職。


 しかし今回は今までと違う

 3年。


 それだけあれば何か掴めると思い、無駄遣いせず必死に貯めた貯金。


 私の環境で3年間生活できるギリギリの金額400万円。


 それを免罪符として新たな私が今ここに誕生した。

 ニートではない


 フリーニーターだ

 誰に迷惑をかける訳でもなく、ただ働かないだけなのだから。


 自由な時間が出来たのであれもこれもやりたいが、まず最初にやる事は決めていた。


 マックのバリューセットを食べるのだ。


 節約生活を歩んできて、ずっと食べたかったバリューセット。


 何度も誘惑に負けそうになりながら、それでもグッと堪え続けた日々。


 そんな努力の結晶を形にするのだ。

 でも私は怠惰で優柔不断

 バリューセットを食べに行く、それだけの行為だと心では解っていても身体が外へ向かおうとはしない。


 折角、念願のバリューセットを食べるのだからもっと何か感動的な演出が欲しい。

 1年。


 そう思いながら1年が経過した。


 バリューセットは未だ食べに行っていない。


 そしてこの1年で大きな問題が出来た。

 閉じこもりの生活を続けてきたので人気のある場所に出るのが怖くなってしまったのだ。

 億劫なのではなく怖いのだ


 人と会うのが怖いのだ


 人と話すのが怖いのだ


 ストレスを抱えるのが怖いのだ

 今の私は1日1食の生活で、その1食は深夜のコンビニで300円以内の物を買っている。


 帽子とマスクを被り、人相を特定されないような格好で人気のない時間にコンビニ。


 そんな生活を1年続けてきたため、それまでほんの少しだけあった自分のコミュニケーション能力がなくなってしまったと感じているのだ。


 錯覚かもしれない。


 でも現実かもしれない。

 最後に声を出した日が思い出せない

 今夜も人気のない自分だけの時間にコンビニへ向かう。


 人間関係のストレスは無くなったが、変わり映えのない生活が嫌というほど続いている。


 私は一体どうしたいのか。


 どうするのか。


 どうなるのか。


 誰の助けも得られない事は解っている。


 全て私の身勝手でこうなってしまったのだから。


 結局、私は物語の主人公にはほど多い人間だった。


 そういうこと。

 2年目になると色々考えるのもまどろっこしくて、ある意味機械のような生活を続けるだけになった。

 節約のためガスを止めた


 節約のため風呂に入らなくなった


 節約のため食事を2日に1回にした

 節約のため――体力の節約のため――1日10歩以上動かなくなった。

 もう誰の目から見ても私は駄目だろう。


 自分の目から見ても駄目なのだから。

 もう、終わるしか、ないか……

 その日の深夜は犬の鳴き声が煩さかった。


 そんなちょっとした事でもイライラするくらい視野も思考も狭くなっている。


 でも仕方ない。


 それが今の私なのだから変えようがない。

 元々怠惰なのだ

 コンビニの帰り道、トラックのライトを避けて道端に寄った。


 ライトに映し出されるのは負傷して動けないでいる子犬。


 私は怠惰なくせに、何故かその時は身体が勝手に……

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