転校生に余計な設定を足してみた

文字数 944文字

俺達は・私達は・体が入れ替わってしまった。


俗にいう転校生現象をリアルで体験してしまった。


でも俺達の場合、あの有名なリアクション、

あ、あるっ!
な、ないっ!
みたいな感じではなかった。


◆◇◆


高校生になった私は相変わらずモテている。


中学生の頃からモテ始め、町内一の美人ともてはやされ、告白された数は銀河中の星を足しても足りないほど。


でも私は頑なに彼氏を作らなかった。


彼氏を作れなかった。

私には秘密がある。


些細な事だと笑うかも知れないが、昔からもてはやされてきた私にとっては絶対に知られたくない秘密だ。

私の乳首は異常にデカい。


乳房でも乳輪でもなく乳首がデカいのだ。


しかも何か黒ずんでる。


処女なのにだ!

これが知られたらと思うと彼氏を作るどころじゃなかった。


◆◇◆


高校生になった俺は髪の毛を染めた。


それまで野暮ったい黒髪だったが、思い切って茶髪にした。


何だかひと皮むけて大人になった気がした。

でも実際は大人になったどころか、むけてもいない。


中学校の修学旅行や林間学校が嫌だった。


みんなと一緒に風呂に入るのが嫌だった。

俺は服を脱ぐ前にトイレへ行き、徐に皮をむいてから脱衣所へ戻る。


何食わぬ顔でパンツを脱ぎ、さもむけてますよ的な雰囲気を醸し出した。

でも風呂場で身体を洗ったり、シャワーのお湯がかかったり、そんな僅かな刺激で皮は元通りかぶってしまう。
その度、俺はさりげなくむき直し平然を装わなくてはならなかった!

俺には彼女がいない。


別段、顔も悪く無いと思うし、背が低い訳でも無い。


告白されたことも何度かあるが、その度、お断りさせてもらった。

だって、俺はむけてない!
その秘密を知られたらと思うと彼女どころじゃなかった。


◆◇◆


昼休み、俺は購買に急いでいた。


1日限定10食のカツ卵エビフライサンドを買うために。


階段を2段抜かしに飛び降りていたら前に人が現れた。


急に現れたものだから止まれず、俺はその相手とぶつかり、二人して階段を転げ落ちた。


◆◇◆


こんな感じで俺達・私達は体が入れ替わったのだが、お互い身体に違和感があったのでまずは色々確認してみた。
で、デカい!
あ、あったかそう!

それが俺達・私達が最初にとったリアクションだった。


お互いの秘密を知られた私達はその後めでたく――





(余計すぎてどーでも良い設定だった……)

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