第17話

文字数 594文字

駄目(だめ)だった?」

 今回(こんかい)()は、(ぼく)(なか)では自信作(じしんさく)だった。
 (ふか)海底(かいてい)宮殿(きゅうでん)があって、その(おく)(かがみ)がある。
 その(かがみ)装飾(そうしょく)(すく)ないけれど、綺麗(きれい)縁取(ふちど)りがついている。
 その鏡台(きょうだい)(した)に、(ちい)さな(あか)(いし)()ちている。
 (あか)(せき)が、(かがみ)()たって(かがみ)(ちい)さなヒビが(はい)っている。
 文字(もじ)にしてしまうと、それだけの()だった。

駄目(だめ)というか、自分(じぶん)想像(そうぞう)(ちが)っていて。……肖像画(しょうぞうが)かと(おも)ってたので」
「あれ? ()ってなかった? ごめんね!」
「いや、でも――」

 そうやって木戸口(きどぐち)さんは、まじまじと()(なが)めている。

「やっぱり……駄目(だめ)かな?」
「いや……、いいです。()れば()るほどいいです。()きです」
本当(ほんとう)?」
「なんだか、予想外(よそうがい)でしたけど、()れば()るほど、自分(じぶん)のことが()いてある()がしてきます」
「よかったぁ。(ぼく)のイメージを()()んでみたんだ」

 (ぼく)がそう()うと、木戸口(きどぐち)さんは、()から()(はな)した。

()いてもらってよかった……」
「え?」
「……なんでもないです」
「ええ? そう()われると、()になるよ」

 それでも木戸口(きどぐち)さんは(おし)えてくれない。
 木戸口(きどぐち)さんはしばらく(なや)んでいるようだった。
 そして、最後(さいご)にこう()った。

「――(さかな)(およ)いでる(とき)一番(いちばん)()()きとしてるし、(とり)()んでる(とき)一番(いちばん)(うつく)しいんです」
「え?」

 (ぼく)木戸口(きどぐち)さんを()た。
 ()()れかけだから、木戸口さんの表情(ひょうじょう)()えない。
 でも、そこに村口(むらぐち)さんに()(おんな)()はいなかった。
 ……ような気が、した。
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登場人物紹介

峯村太朗


主人公。

村口さんに告白したが失敗。

絵を描くのが得意。

川上瑠美


峯村を慰める、心優しい女子。

若干ギャルだが、根は真面目。

佐藤春美


峯村を慰める、心優しい女子2。

お気楽な性格は、ネガティブな本心の裏返し。

大園まりあ


峯村が所属する整美委員会の委員長。

背は低いけど、元気はいっぱい!

木戸口奈緒


中途半端な時期にやってきた転校生。

よく他の人に間違われる。

村口美音子


峯村の告白を断り、物語の始まりのきっかけを作った。

今はもう転校してしまった。

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