第4話

文字数 752文字

「もう(あき)だねえ」

 放課後(ほうかご)
 佐藤(さとう)さんがそう()った。
 (ぼく)は、佐藤(さとう)さんが風情(ふぜい)(かん)じれるのに、(おどろ)いた。

「そんなこと()うと、おばあちゃんみたいだよ」
「むう。(きみ)はつくづく失礼(しつれい)少年(しょうねん)だなぁ」
春奈(はるな)は、(わり)とおばあちゃんじゃん」
「じゃあ、()()はおじいちゃん!」
「どこが?」
説教(せっきょう)っぽいところ」

 余計(よけい)なこと()わなきゃいいのに、と(おも)った(とき)には、もう(おそ)かった。

「いたい! いたいーーっ!!」

 川上(かわかみ)さんは、佐藤(さとう)さんの(かた)にグーッと(ちから)()れて、(かた)()んでいた。
 佐藤(さとう)さんの悲鳴(ひめい)が、痛痛(いたいた)しい。
 それでも、川上(かわかみ)さんは、何秒間(なんびょうかん)か、佐藤(さとう)さんの(かた)を、()(つづ)けた。

「もう! (いた)いでしょ! 厳罰(げんばつ)すぎますぞ!」
春奈(はるな)があんなこというからでしょ」
「だからって、暴力(ぼうりょく)はよくなーい! この怪力(かいりき)少女(しょうじょ)!」

 佐藤(さとう)さんは、ほっぺたを(ふく)らませながら、(おこ)っている。
 けれど、川上(かわかみ)さんは、()()うつもりもない様子(ようす)だ。
 そして、(いか)りで(あば)れようとする佐藤(さとう)さんを(せい)しながら、川上(かわかみ)さんは、(ぼく)(ほう)()いた。

峯村(みねむら)は、まりあ先輩(せんぱい)のところに、()くんだよね?」
「うん。(すこ)(はな)して、用事(ようじ)()いてから、(かえ)るよ」
「ちょっとー、タロちゃん! 春奈(はるな)を、こんな凶暴(きょうぼう)()(もの)一緒(いっしょ)に、()いていくの!?」
「でも、()かなきゃだし」
「どのぐらいかかるの?」
「それが、わからないんだよね」

 大園(おおぞの)先輩(せんぱい)が、どうして、(ぼく)のクラスまで()たのかも、()かっていない。
 だから、どれぐらい時間(じかん)がかかるのか、という見立(みた)てもできなかった。

「ほら、今日(きょう)(かえ)るよ」
「あーん! 今日(きょう)はタロちゃんと(かえ)りたい気分(きぶん)なの!」

 佐藤(さとう)さんは、そのあとも駄々(だだ)をこねていた。
 けれど、川上(かわかみ)さんに()きずられるようにして、二人(ふたり)(かえ)っていった。
 二人(ふたり)姿(すがた)見送(みおく)ってから、(ぼく)準備(じゅんび)をした。
 そして、大園(おおぞの)先輩(せんぱい)がどこにいるかを()くために、生徒会室(せいとかいしつ)()かった。

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登場人物紹介

峯村太朗


主人公。

村口さんに告白したが失敗。

絵を描くのが得意。

川上瑠美


峯村を慰める、心優しい女子。

若干ギャルだが、根は真面目。

佐藤春美


峯村を慰める、心優しい女子2。

お気楽な性格は、ネガティブな本心の裏返し。

大園まりあ


峯村が所属する整美委員会の委員長。

背は低いけど、元気はいっぱい!

木戸口奈緒


中途半端な時期にやってきた転校生。

よく他の人に間違われる。

村口美音子


峯村の告白を断り、物語の始まりのきっかけを作った。

今はもう転校してしまった。

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