第15話
文字数 770文字
生徒会の物置となっている開き教室では、大園先輩が既に準備を進めてくれていた。
「なんで川上ちゃんが⁉ ……っは! 今日もおっきいねー!」
「まりあ先輩もかわいいですよ。……峯村が描くのを見ようと思って」
「そうなんだね!」
と、大園先輩は納得しかけた。
しかし、思い返したように、窓側に座っている女子生徒を見た。
「でも、菜緒ちゃんは大丈夫かな?」
「……大丈夫です。もう、緊張してるので」
木戸口さんは、前の学校のブレザーを脱いで、シャツだけになった状態で、椅子に座っていた。
木戸口さんは、水色のシャツを着ていた。
首元にはいつもの通り、リボンを結んでいる。
髪の揺れとシャツの淡い水色のグラデーションが海の色彩に似ている気がした。
「峯村クン、準備は終わったよ。あとはお水だけ!」
大園先輩はそう言って、腰に両手を当ててエッヘン。
「ありがとうございます。それじゃ水を取ってきます」
そう言って僕は、カバンを床に置くと、先輩の用意してくれた筆洗いを持って、部屋を出た。
★
「ねえ、木戸口さん」
「はい?」
「木戸口さんは、どうして描いて貰いたいと思ったの」
「わかりません。ただ――」
「ただ?」
「――峯村さんの気持ちが嬉しくて。いきなり絵を描かせて、って言われたときはびっくりしましたけど」
「あちゃー、タロちゃんのいつものパターンだにゃ」
「ね! 峯村クンってやっぱり優しい!」
「いつもの……?」
「私もね、同じようなことがあったの」
「あたしもー」
「わたしもだよ!」
「……なんとなく聞きました。やっぱり、峯村さんは優しいんですね」
「誰にでも優しい人だから、時に傷つけちゃうのにゃー」
「え?」
「春奈、余計なこと言わない」
「ごめんにゃー」
「木戸口さん。最後に一つ言っておくね」
「……はい」
「峯村の眼を見る時は覚悟してね」
「え――?」
★
「すいません! 遅れました」
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