第15話

文字数 770文字

 生徒会(せいとかい)物置(ものおき)となっている()教室(きょうしつ)では、大園(おおぞの)先輩(せんぱい)(すで)準備(じゅんび)(すす)めてくれていた。

「なんで川上(かわかみ)ちゃんが⁉ ……っは! 今日(きょう)もおっきいねー!」
「まりあ先輩(せんぱい)もかわいいですよ。……峯村(みねむら)()くのを()ようと(おも)って」
「そうなんだね!」

 と、大園(おおぞの)先輩(せんぱい)納得(なっとく)しかけた。
 しかし、(おも)(かえ)したように、窓側(まどがわ)(すわ)っている女子(じょし)生徒(せいと)()た。

「でも、()()ちゃんは大丈夫(だいじょうぶ)かな?」
「……大丈夫(だいじょうぶ)です。もう、緊張(きんちょう)してるので」

 木戸口(きどぐち)さんは、(まえ)学校(がっこう)のブレザーを()いで、シャツだけになった状態で、椅子(いす)(すわ)っていた。
 木戸口(きどぐち)さんは、水色(みずいろ)のシャツを()ていた。
 首元(くびもと)にはいつもの(とお)り、リボンを(むす)んでいる。
 (かみ)の揺れとシャツの(あわ)水色(みずいろ)のグラデーションが(うみ)色彩(しきさい)()ている()がした。

峯村(みねむら)クン、準備(じゅんび)()わったよ。あとはお(みず)だけ!」

 大園(おおぞの)先輩(せんぱい)はそう()って、(こし)両手(りょうて)()ててエッヘン。

「ありがとうございます。それじゃ(みず)()ってきます」

 そう()って(ぼく)は、カバンを(ゆか)()くと、先輩(せんぱい)用意(ようい)してくれた(ふで)(あら)いを()って、部屋(へや)()た。



「ねえ、木戸口(きどぐち)さん」
「はい?」
木戸口(きどぐち)さんは、どうして()いて(もら)いたいと(おも)ったの」
「わかりません。ただ――」
「ただ?」
「――峯村(みねむら)さんの気持(きも)ちが(うれ)しくて。いきなり()()かせて、って()われたときはびっくりしましたけど」
「あちゃー、タロちゃんのいつものパターンだにゃ」
「ね! 峯村(みねむら)クンってやっぱり(やさ)しい!」
「いつもの……?」
(わたし)もね、(おな)じようなことがあったの」
「あたしもー」
「わたしもだよ!」
「……なんとなく()きました。やっぱり、峯村(みねむら)さんは(やさ)しいんですね」
(だれ)にでも(やさ)しい(ひと)だから、(とき)(きず)つけちゃうのにゃー」
「え?」
春奈(はるな)余計(よけい)なこと()わない」
「ごめんにゃー」
「木戸口さん。最後(さいご)(ひと)()っておくね」
「……はい」
峯村(みねむら)()()(とき)覚悟(かくご)してね」
「え――?」



「すいません! (おく)れました」
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登場人物紹介

峯村太朗


主人公。

村口さんに告白したが失敗。

絵を描くのが得意。

川上瑠美


峯村を慰める、心優しい女子。

若干ギャルだが、根は真面目。

佐藤春美


峯村を慰める、心優しい女子2。

お気楽な性格は、ネガティブな本心の裏返し。

大園まりあ


峯村が所属する整美委員会の委員長。

背は低いけど、元気はいっぱい!

木戸口奈緒


中途半端な時期にやってきた転校生。

よく他の人に間違われる。

村口美音子


峯村の告白を断り、物語の始まりのきっかけを作った。

今はもう転校してしまった。

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