第14話

文字数 800文字

「タロちゃん、(かえ)ろー」

 放課後(ほうかご)、HR(ホームルーム)が()わった(あと)
 佐藤(さとう)さんは、一目散(いちもくさん)(ぼく)川上(かわかみ)さんの(もと)()てから、そう()った。
 はいはい、と川上(かわかみ)さんはカバンを()った。
 けれど(ぼく)は、(すわ)ったままでいる。

「どうしたの?」

 川上(かわかみ)さんは()(かえ)りつつ、そう()った。

「ごめん、今日(きょう)予定(よてい)があって。二人(ふたり)とも(さき)(かえ)ってて」

 (ぼく)は、川上(かわかみ)さんを見上(みあ)げた。
 川上(かわかみ)さんと()()う。
 川上(かわかみ)さんの緑玉色(エメラルドグリーン)()が、ギラッと(ひか)った()がした。

「……なんで?」
木戸口(きどぐち)さんと約束(やくそく)があるんだ」

 川上(かわかみ)さんは一瞬(いっしゅん)()(はず)して、また(ぼく)視線(しせん)(もど)した。
 (もど)ってきた(とき)には、緑玉色(エメラルドグリーン)のギラツキは()えていた。

()くんだ」
「……うん」

 どうしてわかったのか、わからない。
 川上(かわかみ)さんは、(ぼく)態度(たいど)雰囲気(ふんいき)から、(ぼく)木戸口(きどぐち)さんを()こうとしているのを予測(よそく)したらしい。

「どこで()くの?」
大園(おおぞの)先輩(せんぱい)に、生徒会(せいとかい)倉庫(そうこ)使(つか)わせて(もら)ってる」
(まえ)から準備(じゅんび)してたんだ?」
「うん。一週間前(いっしゅうかんまえ)から」
「タロちゃんってば、用意周到(よういしゅうとう)だにゃあ」

 佐藤(さとう)さんはそう()って、(ぼく)(かた)()っついた。

春奈(はるな)(わたし)たちも()こう」
「「え?」」

 (ぼく)佐藤(さとう)さんは(おな)反応(はんのう)をした。

「それはちょっとぉ……」
「いや、()こう。峯村(みねむら)()いてるのを()よう」
()てどうするの?」
(たし)かめるの。(わたし)たちに、木戸口(きどぐち)さんがどう()えるか」
(なに)を?」

 と(ぼく)()いた。
 けれど、黙殺(もくさつ)れた。
 そうして、(ぼく)()()りにして、会話(かいわ)(なが)れていく。

()()さ、()えなくなったの?」
「いいや。でも、()えなくなった(ほう)がいいのかも()れない」
「それは、遠慮(えんりょ)? 決別(けつべつ)?」
「それを()めるために()こ」

 会話(かいわ)終着点(しゅうちゃくてん)()いたようで、佐藤(さとう)さんは川上(かわかみ)さんに同意(どうい)したらしい。

()()真面目(まじめ)すぎるにゃあ」
「でも、これが(わたし)だから」

 そう()って、川上(かわかみ)さんと佐藤(さとう)さんが目配(めくば)せをした。

「じゃあ、()こう」
「う、うん」

 川上(かわかみ)さんに(うなが)されて、(ぼく)は、画材(がざい)でいっぱいのカバンを()って()()がった。
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登場人物紹介

峯村太朗


主人公。

村口さんに告白したが失敗。

絵を描くのが得意。

川上瑠美


峯村を慰める、心優しい女子。

若干ギャルだが、根は真面目。

佐藤春美


峯村を慰める、心優しい女子2。

お気楽な性格は、ネガティブな本心の裏返し。

大園まりあ


峯村が所属する整美委員会の委員長。

背は低いけど、元気はいっぱい!

木戸口奈緒


中途半端な時期にやってきた転校生。

よく他の人に間違われる。

村口美音子


峯村の告白を断り、物語の始まりのきっかけを作った。

今はもう転校してしまった。

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