第7話

文字数 1,059文字

「どういうこと?」
「だから――」

 翌日(よくじつ)
 (ぼく)は、川上(かわかみ)さんと佐藤さんの二人(ふたり)に、昨日(きのう)事件(じけん)(はな)していた。

()ってる意味(いみ)はわかるんだけど」
大変(たいへん)だったんねぇ」

 けれど、二人(ふたり)とも心底(しんそこ)どうでも()さそうだ。
 (たし)かに、二人(ふたり)にはどうでもいい(はなし)だとは(おも)っていたけど……。
 (ぼく)溜息(ためいき)をついた。
 (ぼく)のその様子(ようす)()て、川上(かわかみ)さんが(はなし)()ってくれた。

峯村(みねむら)から()たら、その(ひと)村口(むらぐち)さんそっくりに見えたんだ」
「うん」
「それだったら、まりあ先輩(せんぱい)が、その(ひと)峯村(みねむら)が、()てるっていうのはおかしいね」
「そうなんだよ」

 (ぼく)は、(はげ)しく(くび)()って、その(とき)(おどろ)きを、再現(さいげん)しようとする。

「それでまりあちゃんは、タロちゃんのそっくりちゃんの、どこが()てるって()ったんだっけ?」
雰囲気(ふんいき)()てるって」
雰囲気(ふんいき)じゃあ、わからないにゃあ」
「そうなんだよね……」

 (ぼく)(はな)していることは、(ただ)しいはずだ。
 昨日(きのう)のことを正確(せいかく)説明(せつめい)していると(おも)う。
 けれど、その内容(ないよう)がわけのわからない(はなし)だから、何度(なんど)(はな)しているうちに、(ぼく)もわけがわからなくなってきた。

()()はどう(おも)う? タロちゃんが間違(まちが)えてるのかな?」
「わからない。……けど、まりあ先輩(せんぱい)が、峯村(みねむら)女子(じょし)()間違(まちが)えてる(ほう)()になる」
「だよねぇ。タロちゃんは(べつ)(おとこ)()ってわけでもないしねぇ。
 昨日(きのう)(じつ)は、放課後(ほうかご)(じょ)(そう)してた?
 (かく)女装癖(じょそうへき)?」
「してないよ!」
「やっぱりかぁ」

 と()って、佐藤(さとう)さんはケラケラ(わら)った。

(ぼく)()間違(まちが)えてたのかな?」
()間違(まちがえ)えてた可能性(かのうせい)(たか)いのは、まりあ先輩(せんぱい)だと(おも)うけどね。普通(ふつう)(かんが)えると」
()()辛辣(しんらつ)だねぇ」
「でも、そうじゃない?」
「……まあ、タロちゃんとまりあちゃんだったら、タロちゃんを(しん)じるかなぁ」
「ほらね」

 そんな調子(ちょうし)で、(ぼく)たちの(はな)()いは(すす)まずに、環状(かんじょう)(せん)をぐるぐる周回(しゅうかい)する。
 すると、佐藤(さとう)さんが、突如(とつじょ)として()()がった。

「タロちゃん! その木戸口(きどぐち)さんとやらの写真(しゃしん)は、()っとらんのだね?」
「……()ってないよ」
「ほんとかにゃぁ。(じつ)はこっそり(かく)してるんじゃないのかい?」
「してないってば!」
「にゃはは! ならば、方法(ほうほう)(ひと)つしかあるまい! ()()こう!」
「えぇ⁉」

 (ぼく)は、唐突(とうとつ)()ぎる提案(ていあん)に、呆気(あっけ)()られた。
 しかし、川上(かわかみ)さんは、はあぁと(ふか)溜息(ためいき)をついた。

「これはもう! 確認(かくにん)するしかないよ! (わたし)たちの()()て!」
「でも……」
「でもも、だってもなーい! ()くぞ少年(しょうねん)! 真理(しんり)()つけに!」

 と佐藤(さとう)さんが()ったその(とき)

HR(ホームルーム)(はじ)めるぞー。(せき)(すわ)れー、佐藤(さとう)
「あ、はい」

 時刻(じこく)午前(ごぜん)の8()(はん)(ごろ)
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登場人物紹介

峯村太朗


主人公。

村口さんに告白したが失敗。

絵を描くのが得意。

川上瑠美


峯村を慰める、心優しい女子。

若干ギャルだが、根は真面目。

佐藤春美


峯村を慰める、心優しい女子2。

お気楽な性格は、ネガティブな本心の裏返し。

大園まりあ


峯村が所属する整美委員会の委員長。

背は低いけど、元気はいっぱい!

木戸口奈緒


中途半端な時期にやってきた転校生。

よく他の人に間違われる。

村口美音子


峯村の告白を断り、物語の始まりのきっかけを作った。

今はもう転校してしまった。

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