第12話 双頭の悪魔
文字数 2,204文字
正室は
元老院でも一、二を争う名家の出身。
「動機などいくらもあるだろう。己に問うてみよ。卑しい家令の分際で、我の陛下を奪いおった」
「そもそも、まだこどもの蛍石が女皇帝として振る舞えたのも、我と我が一門あってのこと。しかも、あの月の雫は、我が公主にと思っておったもの。それを家令の子を産んだ乳母風情に下賜する等正しくないだろう」
なるほど、と
「皇后陛下。
そもそも自分の管理下にある女官についてあれこれと意見や判断等されるというのが不敬。
「更に、こちらの書面の内容は先程私の署名捺印を持ちまして実行されるものです。これより、こちらは封ぜられます」
ガタガタという音が聞こえて、
「こちらの扉は私が施錠致します」
「何をバカな事を!皇后を
「殿下、これは冷宮と言うものです。後宮において罪を犯した
冷宮措置になった后妃に下手に近づけば、己の身すら危い事になる。
元老院長だろうが、皇帝すら意見は出来ないのだ。
完全な孤立。
「家令の分際で、王夫人になどなってみろ!息子共々、殺してやる!」
「・・・やはり正しい処置のようです。
五位鷺は、
継室は二人。
二妃は
兄弟の継室は、正室に
普通に考えれば、正室がそうであったように正室や継室の子を押し除け、総家令が王夫人となり、いずれ銀星を後継にするのではないかと言う危惧からの犯行ではないかと思ったが。
実際は、二妃付きの女官の単独の犯行。
二妃との間に子供がいる事が分かった。
二妃は、彼女の妊娠を認めず、人知れず処置をするよう命じたが、彼女は従わなかった。
休暇を願い出て、親類を頼り一人で子供を産み、その後は復職し、また二妃付きの女官として仕えていた。
彼はすっかり、女官が子供の処置を済ませたのだと思っていたらしい。
自分に危うきを及ばせない心得のいい女と言う事で、更にお前を信用しようと言ったそうだ。
そして、女官は、自分と子の不遇を呪い犯行に及んだ。
継室である
自分もまた、認められて妻や恋人どころか罪でしかない。
なのに、女皇后の恋人の総家令の子は、かつてない程に愛され、総家令は王夫人として官位どころか一代爵位まで賜るのではないかと噂されている。
悲しみは怒りや恨みとなって、
「どっちも冷宮送り?」
「妃は実家に返して、お取り潰しするのが妥当じゃない?」
「お前達は、妥当だと思うか?」
問われて双子の姉妹が怒り出した。
「そんなわけないじゃない!」
「どれだけの事したと思ってるのよ!」
そうだな、と
決定的な何かを得たくて泳がせたのはこっちだが、よりにもよってやってくれたなという気分。
無惨なゆりかごの残骸を見た時に久々に頭に血が昇った。
更に、総家令発で厳しく取調べが始まり、
度々出かけては、およそ宮廷の妃として相応しくない会合に出席参加していたそうだ。
「女官長以下五役は更迭ね」
「当たり前だわ。何のためにいるのよ」
継室達は、五役のうち数名とも特定の関係にあったようだ。
「後宮ではままある話だし。表沙汰にならないならあれこれ言うのもヤボだけど。あくまで皇帝陛下の瑕疵や不名誉にならないようにするならばよ」
「あいつらいるだけで不名誉じゃないの。ねぇ、お兄様、やっぱり後宮にも家令を入れた方がいいわ。首に鈴どころか、電流の有刺鉄線が必要よ」
基本的に後宮は女官のみが出入りし仕切っているのだが、考え直さなければならないと
さて、これをどう始末しようか。
この姉妹ならばうまくやるだろう。
「・・・今でなくともいい。いずれの話だが。お前達、速やかにな」
「私達、そんなに仕事遅くないわ」
「そうよ、ぱぱっとよ」
そう言うと、双子家令は微笑んで女家令の礼をした。
可憐で賢く、生まれながらの女家令。
しかし、双頭の悪魔と呼ばれる程には、やはり不穏で凶悪な姉妹でもあった。