第5話 十一《じゅういち》
文字数 1,967文字
大国同士、また周辺の中小国家同士が睨み合う、防衛の最前線。
現在の皇帝が女性と言う事もあり、代理で総家令が度々、視察として訪れる機会が多い。
対応はめんどくさいが、女皇帝が用意させたと言う品物は部下の兵士達を喜ばせるだろうと
必要な予算を議会に上げてもその半分も通った事は無いが、家令を通すとすんなりとそれ以上のレスポンスがある。
「家令め・・・」
こんなに有益で便利なもの、もはや害悪ではないだろうか。
特に、格別に優秀で女皇帝の信頼も篤いこの総家令はいつか足元を
この男は、元老院筋の正室すら女皇帝から遠ざけたのだから。
「不足分があれば後で
そう言って
「いや、いい、十分。あっちもこっちも足りなくて往生していたところだから助かる」
「軍隊を養うには金がかかるからな。城の人間はスポーツやレースと一緒だと思っているフシがあるから、ただ睨み合ってるだけの今の状況じゃちょいちょいいいニュースが無いとそりゃ予算なんかつかんわ。大体、こんなに書類を上げたり下げたりしち面倒くさいことしないで、お前が城に家令で入れば予算なんか通るのに」
「冗談じゃない。家令なんて願い下げだ」
鳥の名前を持つ家令にあらず、しかし近しいもの。
「たまのバイトだって嫌で仕方ないんだ」
人員確保で時たま宮城の遣いをさせられたり、
自分が属する軍に置いて多少の融通が効くから、家令業務の下請けをしているだけ。
大きな箱に赤と緑と金色のリボンで華やかなクリスマス風のラッピングがしてある。
クリスマスプレゼントかと
ワインやチーズやチョコレート、色とりどりの
どれも品質が良く、趣味の良さを感じる品物。
海外の古いぶどう
販売輸入元に国内の企業の名前があり、意外だと頷いた。
「
カエルマークは嗜好品を広く扱う企業で、輸入したり輸出したりする卸問屋かつ小売店だ。
「そうらしい。木の病気の心配ももう無いようだよ。このカゴは奥さんから。このカードは陛下から」
「は?」
聞き慣れぬ単語に
いかにもなデザインの可愛らしいカードだが、内容は脅迫状である。
内容は、"48時間後に、
「は?
分からない事が多すぎる。
「うん。まず、カエルマークの
「・・・はあ、変わってんな。確かに、今の当主は双子だわな」
昔、城の式典で見かけた事があった。
同じ顔で同じ服で現れたものだから、紛らわしくて仕方なかったが、前々帝の水晶女皇帝が同じ顔だと面白がっていたのを覚えている。
「で、この度、その
「へぇ。それは別にいいけど。よく蛍石様が許したな」
「蛍石様のアレンジだからな。実は蛍石様が残雪にご執心なんだ」
「はあ?」
「継室候補群の家とは言えまさか女を継室に上げるわけにもいかないし、公式寵姫も無理だ。それに次ぐ何か立場を与えて官位を与えなければ城には上がれないだろ」
「総家令夫人で官位なんか取れるか?」
「そっちはオマケ。いずれ残雪は乳母として城に上がる」
「乳母?蛍石様はご懐妊されたのか?お前、もう子供がいるのか?」
「いや、だから、これからだ」
いよいよ困惑する。
「首尾良く行ったら、
「都合のいい時だけいい様に使いやがって」
「お互い様だろ」
ご機嫌な様子で