第56話 御伽話《フェアリーテイル》
文字数 2,716文字
「呆れたわ。早く出てお行き。・・・・それとも、死刑を前倒しにしたいの」
お前の生殺与奪は自分次第と
「・・・では、陛下にお知らせをお二つ。そうしたら私、急いで帰ります。
「・・・お前、なんのつもり・・・」
「陛下。まずは。・・・陛下を退けての廃太子様の擁立のお話は、結構、現実的なものになっているようです」
「・・・どうして、お前がそんな・・・」
「私のような身分の者からしたら、王族方の廃するという考え方は不思議な習慣ですね。廃するって退職するみたいなものかと思ったら、もうその生死を問わない、という意味ですものね。廃妃に廃太子。廃皇帝と言う表現は聞いた事はないけれど、結局まあ、あるのでしょうね」
貴族達の噂話や湾曲表現として自分の誹謗中傷を聞いた事はあるが、こう明らかにしていく言い方には、恐怖さえ覚える。
まるで、あの母や、
「
だから自分は愛されないのだとでも言いたいのか。
「・・・
「・・・何の為にかはお分かりになりますか」
「皇帝に寵愛されているのを見せつけたかったのでしょう。あんな大袈裟なもの。・・・母王もそれでいい気になってご満悦。バカバカしい。神とやらに何が出来るの。出来ることの多さで言ったら、私のほうが多いわ」
「・・・半分当たって、半分ハズレですわ。まずひとつ。さすがのご推察。
「謙虚?あの男が?」
「そうです。・・・私達の為に。・・・・陛下。
「・・・A国というのは小国がとりあえずまとまって出来た国だったのはご存知の事と思います。大きな惑星に寄るようにその時々の損得に合わせて集ったようなもの。今やA国の国体は崩れ、さて、彼らは何を考えるか・・・。まだ、もう一度何かを拠り所に
嫌悪や不愉快ではなく、もう暴力に嬲られている気分だ。
なぜ総家令である
本来なら、自分を守る為にこの女をこの場で切り捨てても良いはずだ。
今、ここに
自分が、こんなに悲しく辛く苛まれるような事から、彼はきっと守ってくれるのに。
いつだって、そうだったように。
「・・・だから急ぎませんとね、そのタイミングで廃太子の擁立が前倒しにされてしまうでしょうから。・・・そういう時、
突然、
自分がまさに彼のことを考えていたものだから、余計に心がざわついた。
「・・・・
「陛下、廃太子擁立に関して動いているのは、
信じられない思いで総家令を見ると、
まさか。あの男が。
自分が正当な皇位に就いた以来、いつでも適切に自分を護り、導いて来たあの男が。
「・・・それから、陛下のお望みの可愛らしい赤ちゃん。何より必要なものなのでしょう?」
「私、このいくつかのご心配についてご協力できるかもしれません」
「・・・・お前などに協力を必要とする謂れはありません」
「こんな物語はいかがでしょう?・・・あるところに、女王様をお守りする伯爵がおりまして。彼は新たに結婚の予定がありました。それはすてきな大きなダイヤモンドを贈られた美人の婚約者」
「・・・お止め。不愉快よ・・・」
「あら、
失礼千万な事を言い、
「・・・女王様がとても困難な状況にありました時、伯爵は女王陛下を助ける事にしました。神様に自分がお仕えするからどうか愛する大切な女王様が幸せになるようにとお願いしました。おかげで女王様には赤ちゃんが産まれて、国も平和になりました。人々は女王様への伯爵様の愛情の深さをいつまでも忘れずに幸せに暮らしました。めでたしめでたし」
あら、結構いい話にまとまったわ、と笑いながら
庭にまた東からの風が吹き抜けたのを心地良さそうに受ける。
「・・・殿方は手間勝手ではありますけど。女はそれ以上に現実的。どう現実をお作りになりたいかお考えになられてもよろしいかもしれませんことよ。・・・それでは陛下、どうぞご静養くださいませ。・・・先程の
まるで、一陣の嵐だ。
翌日、