第15話 1月3日 第1章 午後の事情聴取 第2節 損得勘定

文字数 612文字

「警察の方、僕はどうしたらいいんですか」

 「ちょっと待ってください。
今書いてます」
 女性警察官が、調書を書いていた。

 「気持ちいことたくさんしてあげたのに、
なあんであんなに怒るんですかね」
 ベムは言った。

◇◇◇

 「これに従ってください」
 警察は言った。

 「3か月間の自宅謹慎?
無理ですよ、そんなことは。
教会運営はどうなるんですか」

 「教会の他の神父や関係者には、
我々から説明させていただきます」


 「なあんで、こんなことに」

 教会で洗礼、
別名『楽園天国』ができなくなったことに、
ベムは不服だった。

 「洗礼を受ける信者に、気持ちいこと
してあげなくちゃいけないんだよぉ」


 「直ちに100万ゴールド、
返すことはできないとのことですが」
 ベムの意向を、
女性警察官がテレヌに伝えた。

 「早く返してほしいです」
 テレヌは、早くお金を返してもらって、
ベムとは縁を切りたかった。

◇◇◇

 「慰謝料込みで、
300万ゴールドぐらいを
想定していてください」

 女性警察官が、
状況も、テレヌの気持ちも、
よく理解していないベムに、
テレヌがどれほど傷ついたのかを、
このような形で伝えた。

 「そんなばかなあ。
だって詐欺罪で起訴するんだから、
お金は返さなくていいんでしょ。
何のために起訴されるんですか」

 「罪を償うためです」

女性警察官は、
テレヌの心と躰の痛みを理解しろ、
と言っているのだ。

 「お金を返さなきゃいけないんなら、
在宅起訴なんて選択するんじゃなかった」
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登場人物紹介

ベム:キリスト教の亜流、ダレム教の最上位神父。ゼップル県ルイク市の中堅神父時代を経て、ニュウベラス県ピュク町のダレム教会最上位神父に昇格して現在に至る。人生哲学が独特で、女性に対して残忍である。

テレヌ:ベムの現在の恋人。ベムに名前を『ロン』と偽られている。ベムに結婚の約束をされていて、100万ゴールドを貸している。以前はアダルトビデオに出演していたこともある性依存症の女性である。

ロン:ニュウベラス県ピュク町のダレム教会の中堅神父。ハンサムなので女性信者のファンが多い。ベムに嫉妬されていて、身体的虐めを度々受けている。ベムを軽蔑している。

パレ:ニュウベラス県ピュク町のダレム教会の神父。ベムの複雑かつ権威主義的心理を理解し、ベムの神経を逆なですることはない。ベムに気に入られて可愛がられている。神父としての昇格を狙っている。

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