第17話
文字数 645文字
病院に行き注射を打っても、正直何が変わったのかわからなかった。現に、首の痣は消たし、血液検査の結果も陰性だったようだが。
学校が始まっても、特に変わったことはなかった。友達と呼べる人は存在しなかったし、八代は相変わらずワンピースが好きだった。けれど、もう藤原たちに冷ややかな目で見られても気になることはなかった。
きっと、八代にも藤原にも、彼らなりの「普通」が存在するのだろう。それが相違しているだけなのだ。僕と樹の「普通」すら、違っているのだから。そして、自分の普通の範疇からはみ出たからといって、攻撃する権利は誰にも無い。それでも、彼らが「普通」を武器にして、樹を酷い目にあわせるようなことがあれば僕は許せないかもしれないな。
いや、そもそも普通なんてものは、最初からどこにも存在しないものかもしれない。
そして、屍喰症が根絶に近付いていくにつれ、差別意識は薄れていった。忘れられていくのかもしれない。けれど、僕は絶対に忘れたりしない。あの頃の僕は、紛れもなく僕なのだから。
こういうことを「諸行無常」とか言うのかな。前に樹が、そう話していたような気がする。
高校生になったら一緒にアルバイトをして刺青を入れよう、と樹と約束をした。かっこいい木の刺青を、首筋に入れるのだ。
守られるかどうかもわからない、ふざけた約束だった。でも、そんなことは大した問題じゃない。僕たちが木になれるかどうかなんて、僕たちにすらわからないのだから。なろうと思ってなるものではないのだから。
学校が始まっても、特に変わったことはなかった。友達と呼べる人は存在しなかったし、八代は相変わらずワンピースが好きだった。けれど、もう藤原たちに冷ややかな目で見られても気になることはなかった。
きっと、八代にも藤原にも、彼らなりの「普通」が存在するのだろう。それが相違しているだけなのだ。僕と樹の「普通」すら、違っているのだから。そして、自分の普通の範疇からはみ出たからといって、攻撃する権利は誰にも無い。それでも、彼らが「普通」を武器にして、樹を酷い目にあわせるようなことがあれば僕は許せないかもしれないな。
いや、そもそも普通なんてものは、最初からどこにも存在しないものかもしれない。
そして、屍喰症が根絶に近付いていくにつれ、差別意識は薄れていった。忘れられていくのかもしれない。けれど、僕は絶対に忘れたりしない。あの頃の僕は、紛れもなく僕なのだから。
こういうことを「諸行無常」とか言うのかな。前に樹が、そう話していたような気がする。
高校生になったら一緒にアルバイトをして刺青を入れよう、と樹と約束をした。かっこいい木の刺青を、首筋に入れるのだ。
守られるかどうかもわからない、ふざけた約束だった。でも、そんなことは大した問題じゃない。僕たちが木になれるかどうかなんて、僕たちにすらわからないのだから。なろうと思ってなるものではないのだから。