第１８話

　いずれあいつも死ぬだろう… 見紛うことなく！ 何号室だっけ… こんな小説チックに仕立てようとする試みはあまりしたことないのでね… そもそも何階建てなのかね？ 情景、風景描写は？ 登場人物は？ 誰が主人公？ 時代設定は？ 場所は？… 時間は、季節は？
　話を進めよう… あいつは餓死を狙っている… まわりを恨んでもいない、これは自分の運命だと言っている… 誰のせいにも何のせいにもしていない！ 窮状にある時、よく人は自分以外のせいにしがちだが！
　あいつは運命だとしている、誰のせいでも何のせいでもないと！
　流れだと… それも〈私〉の流れだと、〈私〉の流れだと！

　民主主義？ 共同墓地の民主主義？
　「どうしてですか！ 民主主義でなかったら独裁ですよ！ ヒットラーですよ中国ですよ北朝鮮ですよ…」
　… 対象がなければ成り立たない、比べるものがなけりゃ美化できない民主主義… そんなもん単なる戦争の火種だろう…
　いつだって戦争だ爭いだ諍いだ、それを求めているんだ人間は…
　自律できない民主主義！
　落ち着け、呼吸を整えろ… 季節は夏だ、場所はどこでもない、人が一人一人、牢屋みたいな〈集合住宅〉に住んでいる… 仕切られた部屋の中にも壁がある、仕切られている、一人一人の間に空気の壁が！
　テレビのあった時代が懐かしいもんだ！ ちゃぶ台… もぐもぐ… 一つ所に集まって… テレビを見ながら… 欽ちゃんに笑い、歌謡曲！ クイズ！ みんなで見ていたものだ、一億総白痴化？ とんでもない！ いまや一人一人がそれぞれのスマホへ──
　一家に一台どころじゃない、一人一台、スマホ様！ AI万歳、Google万歳！
　広告万歳、電通万歳、国土交通省万歳！ この流れに逆らっちゃあ生きてけないよ、ありがたく思えと来たもんだ！
　落ち着け、冷静に！ お前だけじゃない… みんながそうなんだ、みんなが！
「お前は独りじゃない」悪魔のささやき、なんとやさしい…
　人間支配なんて簡単なもんだ！
　話を進めよう、話を！