18.帰還
文字数 7,951文字
「ただいま、花」
ジョンミンが長い兵役を終え、再び日本に降り立った。空港で待ち構えていた花香は、彼の姿を見付け、すぐさま走り寄った。
「おかえりなさい、ジョンミンさん」
ジョンミンは、がっちりとひと回り大きく、逞 しく、そして大人っぽくなっていた。言葉には言い表せなかった苦労も、元気を装うような疲労もあったであろう。辛く厳しい訓練だったに違いない。花香もまた、不安に駆られ、恋しさに泣いて過ごした夜もあった。ふたりはこの日をひたすら待ち続け、ようやく再会の日を迎えた。
「寂しかったけど、たくさん勉強して、お料理も練習して、ずっとジョンミンさんを待っていました」
「僕も会いたかった。花・・・・きれいだ。僕、日本語苦手になってる。この気持ちを伝える、相応 しい言葉が見つからないよ。もう一度勉強し直さないと。また教えてくれる?」
「もちろん!」
花香は満面の笑みを浮かべる。すると、ジョンミンがスーツケースから手を放し、両腕を大きく広げてはにかみながら言った。
「花、抱き締めてもいいですか?」
花香はこくりと頷き、両腕の中に包まれた。
「あぁ、花・・・・ホッとします」
「私も、ホッとします」
空港から都心までバスで移動し、一緒にランチタイムを過ごすことにした。
「久しぶりの、日本の風景だ」
「ご家族とは、ゆっくりできた?」
「うん。母のご飯をたくさん食べました。父とは、お酒を一緒に飲んで。でも、早く花に会いたくて。『もっとゆっくりしていきなさい』と母に言われたけれど、『日本で待ってる人がいるんだ』と言って、出て来てしまいました」
「あぁ、お母さん心配しなかった? 相手が日本人だってこと・・・・」
「うちの親は、こだわらない。むしろ、興味津々で、質問攻めでした」
ジョンミンはそう言って、表情を和ませる。
ランチタイムのピーク時を迎える前の、閑散 としたファミリーレストランの前を通りかかり、「ここにしようか」とふたりは店内に入る。
「どれにする? 僕は、これにしようかな」
「じゃあ、私はこれにします」
ふたりは、ランチプレートのAとBをそれぞれ注文し、ドリンクバーから飲み物を用意した。気楽な雰囲気の店内で、飲み物を手に向かい合う。
「・・・・あの時、花が空港にいたなんて、とても驚いた」
「私、ジョンミンさんに『待ってます』ってすぐに言えなかったこと、とても後悔しました」
「しかたないさ。戸惑って当然です。そして、三人で食事した時、先輩が君を誘っていることには気付いていた。『花はどういう選択をするだろう?』って考えて、焦っていた自分もいました」
「実を言うと、私は高校時代、裕太さんに憧れていました。でも接点は全く無くて。だけど、先輩を目の前にしたら、とても動揺した。正直、悩んで姉にも相談して、それでもジョンミンさんを思う気持ちの方が大きいことは、疑いのない事実でした。『あなたの帰りを、ずっと待ってる。私を信じて!』、って自信を持って言える自分になりたかった。だから、先輩と会って自分の気持ちをしっかり再確認した上で、先輩に直接お断りしないといけないと思ったの。食事の後、『私の心の中にいるのはジョンミンさんです』って先輩にはっきり言いました。でも、裕太先輩、私と付き合うって・・・・」
「先輩の嘘 、僕は信じてしまいました。だけど、先輩の言うことはもっともだと思ったんだ。『花香を二年間もひとりにさせて平気なのか?』と言われて、僕は何も言い返せなかった。君のそばにいられない僕は、君の気持ちに頼るしかない。でも、ひょっとしたら花も先輩のことが好きなのかも、と思った。裕太先輩の思いの強さも感じた。完全に僕は不利だと、とても不安だったんだ・・・・。だから、裕太先輩に君を託して、僕は身を引いて、黙って韓国に戻るのが君のためだと思った。それで・・・・『花香をお願いします』、と裕太先輩に伝えたんだ」
ジョンミンは、途中から韓国語で、日本語では伝えきれないその時の複雑な思いを言葉にした。
「あの日、美桜さんも空港でジョンミンさんを見送っていて、てっきり美桜さんの告白を受け入れたのかと・・・・」
「健介さんに尋ねられて、出発の便を教えたけど、美桜さんとは何もありません。でも、彼女は、電話魔? ものすごい数の着信が、ありました。出られないのに」
「掛けなおしたの?」
「いいえ・・・・。実は、今日は内緒で、帰国しました」
花香は少し安心した。
ふたりの前に料理が届く。
「花、食べようか。いただきます」
ジョンミンが手を合わせる。
「いただきます!」
「花・・・・本当に僕でよかったの? 僕、最近覚えた日本語があるよ。『隣の芝生 は青い』。ほんとに大丈夫?『やっぱりこっちにすればよかった! こっち食べたかったぁ!』なんて、後悔しない?」
ジョンミンが、自分の料理のプレートを指差して、ちょっぴりいたずらっ子のような表情を見せる。
「ジョンミンさん、意地悪! 私はジョンミンさんを選んだの。そして、これを食べたいの」
「ゴメン。冗談。怒った?」
「ジョンミンさんだって・・・・美桜さんのようにアプローチする人、たくさんいるんじゃないですか? モテモテでしょ?」
それを聞いて、彼は白い歯を見せて微笑んだ。
「美桜さんは、妹みたいな感じ。恋愛対象ではない。それに、僕に興味を持つ人はいても、モテる訳ではありません」
「そう?」
「花は知ってたかなぁ? 僕、お店で働く君を見て、君に会いたくて通い詰めたんだ」
「えっ? そうなの? 『アア』のためじゃなくて?」
「うん! 『アア』も美味しかったけど、君は、凛 としていて瞳がきれいで、まるでそこに一輪の花が咲いているかのようだった。美しかった。合コンで会った時は、感激で思わずガッツポーズしたよ」
「私も、いつもジョンミンさんがお店に来るの、楽しみに待っていました。その時は、かわいらしい方だな、って思ったんだけど、今、目の前にいるジョンミンさん、逞しくなって、カッコ良すぎます」
「あぁ、この伸びかけの、中途半端な髪の毛のせいかなぁ?」
ふたりは、思わず吹き出し、笑い合った。
初めて打ち明けた胸の内に、ふたりは少し照れながら、この恋に奇跡を感じた。ちょっぴり掛け違えてしまったボタン。ひとつずつ掛け直し、不安な気持ちが解消されると、これから待ち受けるはずのいろいろな困難も、お互いを信じて乗り越えられる気がした。
そして新学期が始まる前の、ある日曜日、ふたりは春風吹く代々木公園の木陰で、ピクニックのお弁当箱を広げた。
「わぁ、美味しそうだね!」
ジョンミンが感嘆の声を上げる。
「花のお弁当、すごく楽しみにしてたんだ。いただきます」
「たんぱく質多めで作ってみたの。筋力維持の役に立てるかな?」
「プロテインよりずっとうれしい。わぁ、このから揚げ、美味しい! お料理上手なんだね」
花香は、はにかんでほほ笑んだ。
「下味をしっかり付けて、揚げ焼きしてからオーブングリルで焼くから、油が落ちて脂肪分少なくてヘルシーなの」
「へえ、工夫してくれたんだね。あっ、これは、トッポッキだぁ。大好物だ!」
「これは、桜マスのバターソテー、チーズちくわの磯辺揚げ・・・・」
ジョンミンの箸が止まらない。花香も、うれしそうに彼を見つめながら一緒に食べる。
すると、急に、彼はかしこまり、花を見つめた。
「僕、こうして君との時間、重ねていきたい。いつも、君の隣にいたい」
「うん。私も、あなたの隣にいたい」
「いつか、ふたりのずっと未来まで、この道が繋がっているといいです」
花香も同じ思いだった。そして、道を拓くには、いくつかの困難を解決しなければならないこともわかっていた。
「ジョンミンさん・・・・、今度、父に会ってもらえる?」
「お父さん? もちろん! 僕も君のご両親にご挨拶したい。ちょっと緊張するけれど」
「父は・・・・、乗り越えなければならない壁かもしれません」
「お父さん、韓国人は嫌いですか?」
「そういうことではなくて、純粋にただ娘を心配してるの」
「そうだよね・・・・」
そう言えば、ジョンミンに、家族の相撲に関わる話をしたことが無かった。相撲のイメージや文化を正しく理解してもらえるか、少しだけ心配だったからだ。
「あの・・・・私の父は元力士でちゃんこ鍋のお店を経営していて、姉も女子相撲をやっているの」
「ちゃんこ鍋?」
「ちゃんこ鍋は、たくさんの野菜やお肉で作った力士を育てるための鍋料理なの」
「相撲! 力士! すごいな。花の家族は強いんだね。僕、投げられないかな?」
「投げられる・・・・かもね」
「え~~⁈ ほんとに⁈」
花香は、ジョンミンの驚いた表情にしばらく笑いが止まらなかった。
「花、ひどいよ~!」
「ごめん! 大丈夫、投げたりしないよ」
笑いを堪 えながら、花香が言う。
「そうだ、韓国にも相撲に似た格闘技があるよ。『シルム』って言うんだ」
「私もそれ知ってる! お父さんもその話聞いたら、きっと興味持ってくれるかも。その話題で行きましょう! ジョンミンさん」
「うん。いつでも花の家族に会いに行くよ。ちゃんこ鍋も食べてみたいなぁ。でも、僕には作ってくれないかな?」
「私がご馳走する!」
ふたりは、楽しく花香の思いのこもったお弁当を味わい、それから公園を散策した。
「とっても美味しくて、お腹いっぱいで幸せです」
「また、いつでも何度でもお弁当作るから、またピクニックしましょう!」
その時、ジョンミンの唇が、花香の頬に触れた。まばたきほどの一瞬の出来事だった。
「わ~! 花香に先越された!」
「そよちゃん、声大きいよ!」
ガサゴソと斜め後方の生垣 の向こう側で騒ぐ人影に、ふたりは気付いて驚く。
「ん? ちょっとぉ! お姉ちゃんたちでしょ! そこで何してるの⁈」
花香が、舞香と颯香を見付けて叫んだ。
舞香が、生垣の影からおずおずと立ち上がり姿を見せると、花香がとても険しい表情をしてこちらを向いている。
「私たちもここでピクニック・・・・って、ごめん花香。ジョンミンさんとのデート、一目見たくて・・・・」
呆 れている妹に理由を正直に明かし、姉はお行儀よくお辞儀をし、挨拶した。
「アンニョンハセヨ・・・・」
颯香も姉の隣に慌てて起立し、お辞儀をする。
「ちょっとぉ、お姉ちゃんたち、こっち来て!」
花香はふたりを呼び付け、とりあえず彼に姉たちを紹介した。
「『ステラ』でご飯食べた時以来ね。私の姉たちです」
「こんにちは。僕は、ユン・ジョンミンです。花香さんとお付き合いさせていただいています」
「やっぱり? やっぱり終わってなかった。よかった!」
颯香が興奮している。
「ジョンミンさんって、すごく優しそう。ふたり絵になるね。花香、お似合いだねぇ」
「お姉ちゃんたち、どうしてわかったの?」
「花ちゃんの様子見てたらわかるわよ。一時の沈んだ花ちゃん、見てるの辛かったもの。それが、最近はなんだか、明るさを取り戻してウキウキだったもの」
「そうそう。花香が早起きして朝ごはん作ってる! 豪華な朝ごはんだぁ! って思ったら、お弁当出来上がってるし。花香ね、お料理の腕上げたのよ。ジョンミンさんのために」
「そよ姉! そんなこと言ったって無駄だからね。デートの邪魔した罰に、何か奢 ってもらおうかなぁ。ねっ、ジョンミンさん!」
それから数日経ち、ジョンミンと花香は、父のちゃんこ屋を訪れた。夜の立て込んだ時間を避け、少し遅い時間に訪れたが、まだ店内は少し混み合っていて、スーツ姿のサラリーマンや作業服姿の男性グループが、ビールと共にちゃんこ料理を味わっていた。
「こんばんは」
「いらっしゃい。おぉ、花香か」
「お父さん・・・・あの・・・・こちらがジョンミンさんです」
「はじめまして。僕はユン・ジョンミンといいます」
父は、ハッと驚いた表情を見せたが、平静を装い、
「うん。腹、減ってるか? 夕飯は?」と問いかける。
「まだ、だけど」
「まあまあ、空いてるところに座りなさい。花香、メニュー教えてあげなさい。ご馳走するから」
あの時、激昂 した父とは違い、今日はちょっぴりウェルカムモードだ。
「あら、花香。彼が、ジョンミンさん? こんばんわ。座って座って」
母もふたりを笑顔で迎えた。賑わう店内で、両親は忙しく動いていた。ふたりは、空いているカウンター席に座る。
「私のオンマ(母)」
「あぁ、きれいなお母さんですね」
「苦手な食べ物ある?」
「何でも食べます。日本の食事は何でも美味しい。これチキン入っているの? このちゃんこ鍋、食べてみたいな」
ジョンミンは、壁に貼られたちゃんこ鍋定食の写真を指差した。
美紗子は、料理が出来上がると、少し緊張しながらも意を決し、ふたりの元に料理を運び挨拶した。
「花香の母です。娘がお世話になってます。バタバタしていてごめんなさいね。ゆっくり召し上がって」
「お母さん、こちらこそお世話になっています。いただきます」
彼は、席から立ち上がり一礼した。
栄一は第一印象で、ジョンミンが好青年であると感じた。美味しそうにきれいに食べる
姿も好印象だ。他の客の注文料理を調理しながら、ジョンミンの様子を観察してみる。普段は皿を手に持たず、スプーンで口に食べ物を運ぶ食習慣の韓国だが、今日の彼は日本流に取り皿を持ち、箸を上手に使っている。
「花香、ジョンミン君に日本のマナー教えたのか?」
栄一が小声で尋ねる。
「ジョンミンさん、自分で勉強してきたそうよ。私も感心しちゃった」
「そうか、偉いな」
間もなく客が退店し始め、話ができる時間も持てるようになった。
「お父さん、僕は、兵役を終えて日本の大学に戻って来ました。花香さんとお付き合いさせていただいています」
「うん。ちゃんこ、どうだ? 口に合うか?」
「とても美味しいです」
「そりゃあよかった」
「お父さん、私たち、お父さんを失望させたりしないから」
「わかってるさ。花香のがんばりを見てた。黙々と、スキルアップに取り組んでた。彼もこうして、立派に兵役を終えて来たんだろう? 逞しい好青年じゃないか」
「ジョンミンさん、お茶どうぞ。熱いから気を付けてね」
美紗子も温かい番茶を注ぎ足しながら、彼の苦労を労う。
「お疲れ様でした。韓国って、男性には厳しい社会のようね。進学も就職も、日本以上に競争よね。勤勉で偉いわ」
「みんな乗り越えています。僕もがんばらないといけません。韓国では、自分の住まいを持つこともなかなか大変ですが、しっかり勉強して就職して自立して、自分の両親と、そしてお父さんとお母さんを、安心させたいです」
「うん。まぁ、ゆっくり食べなさい」
「はい」
花香とジョンミンの緊張は解け、やっと食事がすんなり喉 を通り始めた。
「お父さん、韓国にも『シルム』っていう相撲に似た伝統スポーツがあるんですって」
花香が話のきっかけを作る。予想通り、父はこの話題に食い付いてきた。日本の相撲廻しのように、シルムも腰と腿 周りに布を巻き付けて縛り、それをお互い手に掴み取って、相手を投げたり倒したりする格闘技だ。日本の相撲と違い、土俵外に押し出すだけでは勝利にならず、膝から上の体の一部が地面に触れたら負けとなる。
「日本の大相撲に比べると、シルムは存続の危機も噂 される程、選手も観客も少ないんですが、ユネスコの無形文化遺産に指定されました」
「なるほどな。相撲の起源は『日本書記』の中に書かれている力比べらしい。韓国のシルムも、確か古い古墳に力比べの絵が描かれていて、原始の頃からあったと考えられているんだよな。古代から人は、そうして強い力を周囲に示して来たんだな。時に勝者は実権を握り、一族を守り、生き残ってきたってことかな」
花香が、父の話を韓国語に翻訳 し、ジョンミンに所々補足しながら説明している。
「花香、それ韓国語か? お父さんにはチンプンカンプンだ」
栄一は感心した。美紗子もまた、ふたりの関係性が、とてもお互いを尊重し合い、信頼し合っているのだと感じられた。するとジョンミンは、元力士である花香の父の姿を見つめ、自分の細い上腕をポンポンと叩きながら言った。
「お父さん強そうですね。腕の力こぶ、すごいです」
「だろう? 今でもトレーニングは欠かさない。どうだ? 力比べしてみるか?」
栄一は自信満々の表情で、腕相撲の動きをして見せる。
「あっ、はい!」
「よし!」
父が客席側に出て来ると、ジョンミンとの腕相撲大会が始まった。目の前の若者の手の平は、栄一の大きく屈強 な手に比べると、とても小さく柔らかく頼りなげだが、なかなかに力強い。なかなか勝負がつかなかったが、
「さすがです。強い」
ぷるぷる震えるジョンミンの腕が、ぱたりと倒された。
「あぁ、お父さんすごい! 僕、まだまだトレーニング不足でした」
「だろう? まだまだ負けないぞ」
栄一は、顔を真っ赤にし、呼吸を荒げている。
「お父さん、息上がってるよ! 大丈夫?」と花香。
しばらく皆の笑い声が絶えなかった。
ジョンミンは、食事をお腹いっぱいきれいに食べ終えた。店も閉店時間だ。ジョンミンは、真剣なまなざしで栄一に話し掛ける。
「お父さん、ご馳走様でした。僕、お父さんお母さんに信頼してもらえるように、安心してもらえるようにがんばります。花香さんは、お互いの夢を一緒に育てて、一緒に歩んで行きたい人です。ふたりの未来が拓けるように、大学生活を有意義に送ります」
目の前の青年は、しっかりと娘との未来を見据えている。彼の中に、強い意志を感じた。
「君も、花香と同じビジョンを持っているようだね」
「花香さんを、ずっと大切にします」
「うん。だが、親としては、ゆくゆく君の国と家族に、温かく花香が迎え入れられるのかどうか、そこが心配だ。大事な娘だ。俺たちの宝物なんだ。文化も違うし、いずれ花香は、韓国に嫁いで行くこともあるのかと思うと・・・・」
栄一は、腕を組み、口を真一文字に閉じて少し考えた。
静かに聞いていた花香が、口を開く。
「私の覚悟は、できてるよ。お父さん」
「うん。そうかも知れないがな・・・・。花香、初めはお前が、ただ韓流アイドルへの憧れだけで、何となく彼に惹かれただけなんじゃないかと、お父さん、見くびっていた。だが、今日分かった。本物だな。困難も当然あると思う。焦らず、今のお互いの気持ちを大事にしなさい。その上でだな・・・・やっぱり二人でいることが、何か違うと感じたら、一緒にいるのが難しいと判断したら、その気持ちも見過ごしてはいけないんだ」
ふたりは、神妙な面持ちで頷きながら聞いている。
「相撲は押しの一手だが、大きな体がぶつかり合うだろう? それにはとても危険が伴う。だから、闘争心だけではだめで、だからこそ相手を敬う気持ちや礼節が大切な競技なんだ。今は、好きな気持ちが先行して燃え上っているだろう。『愛は盲目』とも言う・・・・。お互い必要以上の我慢も無理強 いもするなよ。時には、引くこともまた愛情なんだと思う。お互い、相手を想うのと同じく、自分も大切にして欲しい。わかってくれるか?」
「はい」
今のふたりは、そんなことはあり得ないと思った。でももし、これからお互いを深く知り合っていく中で、相手が自分の国の文化や風習、または人間関係や職場環境などに馴染 めず、苦しむようなことがあれば、それは、互いにとって不幸なことだ。ふたりは栄一の言葉を心に刻んだ。
傍 らで聞いていたアルバイトの太一 は、店内をふきんできれいに拭き上げながら、どこか娘を思う父親になったような気持ちで、栄一に感動していた。言葉ひとつひとつの重みを噛み締め、栄一は父親の鑑 だと尊敬し、自分の大将を誇らしく思った。
ジョンミンが長い兵役を終え、再び日本に降り立った。空港で待ち構えていた花香は、彼の姿を見付け、すぐさま走り寄った。
「おかえりなさい、ジョンミンさん」
ジョンミンは、がっちりとひと回り大きく、
「寂しかったけど、たくさん勉強して、お料理も練習して、ずっとジョンミンさんを待っていました」
「僕も会いたかった。花・・・・きれいだ。僕、日本語苦手になってる。この気持ちを伝える、
「もちろん!」
花香は満面の笑みを浮かべる。すると、ジョンミンがスーツケースから手を放し、両腕を大きく広げてはにかみながら言った。
「花、抱き締めてもいいですか?」
花香はこくりと頷き、両腕の中に包まれた。
「あぁ、花・・・・ホッとします」
「私も、ホッとします」
空港から都心までバスで移動し、一緒にランチタイムを過ごすことにした。
「久しぶりの、日本の風景だ」
「ご家族とは、ゆっくりできた?」
「うん。母のご飯をたくさん食べました。父とは、お酒を一緒に飲んで。でも、早く花に会いたくて。『もっとゆっくりしていきなさい』と母に言われたけれど、『日本で待ってる人がいるんだ』と言って、出て来てしまいました」
「あぁ、お母さん心配しなかった? 相手が日本人だってこと・・・・」
「うちの親は、こだわらない。むしろ、興味津々で、質問攻めでした」
ジョンミンはそう言って、表情を和ませる。
ランチタイムのピーク時を迎える前の、
「どれにする? 僕は、これにしようかな」
「じゃあ、私はこれにします」
ふたりは、ランチプレートのAとBをそれぞれ注文し、ドリンクバーから飲み物を用意した。気楽な雰囲気の店内で、飲み物を手に向かい合う。
「・・・・あの時、花が空港にいたなんて、とても驚いた」
「私、ジョンミンさんに『待ってます』ってすぐに言えなかったこと、とても後悔しました」
「しかたないさ。戸惑って当然です。そして、三人で食事した時、先輩が君を誘っていることには気付いていた。『花はどういう選択をするだろう?』って考えて、焦っていた自分もいました」
「実を言うと、私は高校時代、裕太さんに憧れていました。でも接点は全く無くて。だけど、先輩を目の前にしたら、とても動揺した。正直、悩んで姉にも相談して、それでもジョンミンさんを思う気持ちの方が大きいことは、疑いのない事実でした。『あなたの帰りを、ずっと待ってる。私を信じて!』、って自信を持って言える自分になりたかった。だから、先輩と会って自分の気持ちをしっかり再確認した上で、先輩に直接お断りしないといけないと思ったの。食事の後、『私の心の中にいるのはジョンミンさんです』って先輩にはっきり言いました。でも、裕太先輩、私と付き合うって・・・・」
「先輩の
ジョンミンは、途中から韓国語で、日本語では伝えきれないその時の複雑な思いを言葉にした。
「あの日、美桜さんも空港でジョンミンさんを見送っていて、てっきり美桜さんの告白を受け入れたのかと・・・・」
「健介さんに尋ねられて、出発の便を教えたけど、美桜さんとは何もありません。でも、彼女は、電話魔? ものすごい数の着信が、ありました。出られないのに」
「掛けなおしたの?」
「いいえ・・・・。実は、今日は内緒で、帰国しました」
花香は少し安心した。
ふたりの前に料理が届く。
「花、食べようか。いただきます」
ジョンミンが手を合わせる。
「いただきます!」
「花・・・・本当に僕でよかったの? 僕、最近覚えた日本語があるよ。『隣の
ジョンミンが、自分の料理のプレートを指差して、ちょっぴりいたずらっ子のような表情を見せる。
「ジョンミンさん、意地悪! 私はジョンミンさんを選んだの。そして、これを食べたいの」
「ゴメン。冗談。怒った?」
「ジョンミンさんだって・・・・美桜さんのようにアプローチする人、たくさんいるんじゃないですか? モテモテでしょ?」
それを聞いて、彼は白い歯を見せて微笑んだ。
「美桜さんは、妹みたいな感じ。恋愛対象ではない。それに、僕に興味を持つ人はいても、モテる訳ではありません」
「そう?」
「花は知ってたかなぁ? 僕、お店で働く君を見て、君に会いたくて通い詰めたんだ」
「えっ? そうなの? 『アア』のためじゃなくて?」
「うん! 『アア』も美味しかったけど、君は、
「私も、いつもジョンミンさんがお店に来るの、楽しみに待っていました。その時は、かわいらしい方だな、って思ったんだけど、今、目の前にいるジョンミンさん、逞しくなって、カッコ良すぎます」
「あぁ、この伸びかけの、中途半端な髪の毛のせいかなぁ?」
ふたりは、思わず吹き出し、笑い合った。
初めて打ち明けた胸の内に、ふたりは少し照れながら、この恋に奇跡を感じた。ちょっぴり掛け違えてしまったボタン。ひとつずつ掛け直し、不安な気持ちが解消されると、これから待ち受けるはずのいろいろな困難も、お互いを信じて乗り越えられる気がした。
そして新学期が始まる前の、ある日曜日、ふたりは春風吹く代々木公園の木陰で、ピクニックのお弁当箱を広げた。
「わぁ、美味しそうだね!」
ジョンミンが感嘆の声を上げる。
「花のお弁当、すごく楽しみにしてたんだ。いただきます」
「たんぱく質多めで作ってみたの。筋力維持の役に立てるかな?」
「プロテインよりずっとうれしい。わぁ、このから揚げ、美味しい! お料理上手なんだね」
花香は、はにかんでほほ笑んだ。
「下味をしっかり付けて、揚げ焼きしてからオーブングリルで焼くから、油が落ちて脂肪分少なくてヘルシーなの」
「へえ、工夫してくれたんだね。あっ、これは、トッポッキだぁ。大好物だ!」
「これは、桜マスのバターソテー、チーズちくわの磯辺揚げ・・・・」
ジョンミンの箸が止まらない。花香も、うれしそうに彼を見つめながら一緒に食べる。
すると、急に、彼はかしこまり、花を見つめた。
「僕、こうして君との時間、重ねていきたい。いつも、君の隣にいたい」
「うん。私も、あなたの隣にいたい」
「いつか、ふたりのずっと未来まで、この道が繋がっているといいです」
花香も同じ思いだった。そして、道を拓くには、いくつかの困難を解決しなければならないこともわかっていた。
「ジョンミンさん・・・・、今度、父に会ってもらえる?」
「お父さん? もちろん! 僕も君のご両親にご挨拶したい。ちょっと緊張するけれど」
「父は・・・・、乗り越えなければならない壁かもしれません」
「お父さん、韓国人は嫌いですか?」
「そういうことではなくて、純粋にただ娘を心配してるの」
「そうだよね・・・・」
そう言えば、ジョンミンに、家族の相撲に関わる話をしたことが無かった。相撲のイメージや文化を正しく理解してもらえるか、少しだけ心配だったからだ。
「あの・・・・私の父は元力士でちゃんこ鍋のお店を経営していて、姉も女子相撲をやっているの」
「ちゃんこ鍋?」
「ちゃんこ鍋は、たくさんの野菜やお肉で作った力士を育てるための鍋料理なの」
「相撲! 力士! すごいな。花の家族は強いんだね。僕、投げられないかな?」
「投げられる・・・・かもね」
「え~~⁈ ほんとに⁈」
花香は、ジョンミンの驚いた表情にしばらく笑いが止まらなかった。
「花、ひどいよ~!」
「ごめん! 大丈夫、投げたりしないよ」
笑いを
「そうだ、韓国にも相撲に似た格闘技があるよ。『シルム』って言うんだ」
「私もそれ知ってる! お父さんもその話聞いたら、きっと興味持ってくれるかも。その話題で行きましょう! ジョンミンさん」
「うん。いつでも花の家族に会いに行くよ。ちゃんこ鍋も食べてみたいなぁ。でも、僕には作ってくれないかな?」
「私がご馳走する!」
ふたりは、楽しく花香の思いのこもったお弁当を味わい、それから公園を散策した。
「とっても美味しくて、お腹いっぱいで幸せです」
「また、いつでも何度でもお弁当作るから、またピクニックしましょう!」
その時、ジョンミンの唇が、花香の頬に触れた。まばたきほどの一瞬の出来事だった。
「わ~! 花香に先越された!」
「そよちゃん、声大きいよ!」
ガサゴソと斜め後方の
「ん? ちょっとぉ! お姉ちゃんたちでしょ! そこで何してるの⁈」
花香が、舞香と颯香を見付けて叫んだ。
舞香が、生垣の影からおずおずと立ち上がり姿を見せると、花香がとても険しい表情をしてこちらを向いている。
「私たちもここでピクニック・・・・って、ごめん花香。ジョンミンさんとのデート、一目見たくて・・・・」
「アンニョンハセヨ・・・・」
颯香も姉の隣に慌てて起立し、お辞儀をする。
「ちょっとぉ、お姉ちゃんたち、こっち来て!」
花香はふたりを呼び付け、とりあえず彼に姉たちを紹介した。
「『ステラ』でご飯食べた時以来ね。私の姉たちです」
「こんにちは。僕は、ユン・ジョンミンです。花香さんとお付き合いさせていただいています」
「やっぱり? やっぱり終わってなかった。よかった!」
颯香が興奮している。
「ジョンミンさんって、すごく優しそう。ふたり絵になるね。花香、お似合いだねぇ」
「お姉ちゃんたち、どうしてわかったの?」
「花ちゃんの様子見てたらわかるわよ。一時の沈んだ花ちゃん、見てるの辛かったもの。それが、最近はなんだか、明るさを取り戻してウキウキだったもの」
「そうそう。花香が早起きして朝ごはん作ってる! 豪華な朝ごはんだぁ! って思ったら、お弁当出来上がってるし。花香ね、お料理の腕上げたのよ。ジョンミンさんのために」
「そよ姉! そんなこと言ったって無駄だからね。デートの邪魔した罰に、何か
それから数日経ち、ジョンミンと花香は、父のちゃんこ屋を訪れた。夜の立て込んだ時間を避け、少し遅い時間に訪れたが、まだ店内は少し混み合っていて、スーツ姿のサラリーマンや作業服姿の男性グループが、ビールと共にちゃんこ料理を味わっていた。
「こんばんは」
「いらっしゃい。おぉ、花香か」
「お父さん・・・・あの・・・・こちらがジョンミンさんです」
「はじめまして。僕はユン・ジョンミンといいます」
父は、ハッと驚いた表情を見せたが、平静を装い、
「うん。腹、減ってるか? 夕飯は?」と問いかける。
「まだ、だけど」
「まあまあ、空いてるところに座りなさい。花香、メニュー教えてあげなさい。ご馳走するから」
あの時、
「あら、花香。彼が、ジョンミンさん? こんばんわ。座って座って」
母もふたりを笑顔で迎えた。賑わう店内で、両親は忙しく動いていた。ふたりは、空いているカウンター席に座る。
「私のオンマ(母)」
「あぁ、きれいなお母さんですね」
「苦手な食べ物ある?」
「何でも食べます。日本の食事は何でも美味しい。これチキン入っているの? このちゃんこ鍋、食べてみたいな」
ジョンミンは、壁に貼られたちゃんこ鍋定食の写真を指差した。
美紗子は、料理が出来上がると、少し緊張しながらも意を決し、ふたりの元に料理を運び挨拶した。
「花香の母です。娘がお世話になってます。バタバタしていてごめんなさいね。ゆっくり召し上がって」
「お母さん、こちらこそお世話になっています。いただきます」
彼は、席から立ち上がり一礼した。
栄一は第一印象で、ジョンミンが好青年であると感じた。美味しそうにきれいに食べる
姿も好印象だ。他の客の注文料理を調理しながら、ジョンミンの様子を観察してみる。普段は皿を手に持たず、スプーンで口に食べ物を運ぶ食習慣の韓国だが、今日の彼は日本流に取り皿を持ち、箸を上手に使っている。
「花香、ジョンミン君に日本のマナー教えたのか?」
栄一が小声で尋ねる。
「ジョンミンさん、自分で勉強してきたそうよ。私も感心しちゃった」
「そうか、偉いな」
間もなく客が退店し始め、話ができる時間も持てるようになった。
「お父さん、僕は、兵役を終えて日本の大学に戻って来ました。花香さんとお付き合いさせていただいています」
「うん。ちゃんこ、どうだ? 口に合うか?」
「とても美味しいです」
「そりゃあよかった」
「お父さん、私たち、お父さんを失望させたりしないから」
「わかってるさ。花香のがんばりを見てた。黙々と、スキルアップに取り組んでた。彼もこうして、立派に兵役を終えて来たんだろう? 逞しい好青年じゃないか」
「ジョンミンさん、お茶どうぞ。熱いから気を付けてね」
美紗子も温かい番茶を注ぎ足しながら、彼の苦労を労う。
「お疲れ様でした。韓国って、男性には厳しい社会のようね。進学も就職も、日本以上に競争よね。勤勉で偉いわ」
「みんな乗り越えています。僕もがんばらないといけません。韓国では、自分の住まいを持つこともなかなか大変ですが、しっかり勉強して就職して自立して、自分の両親と、そしてお父さんとお母さんを、安心させたいです」
「うん。まぁ、ゆっくり食べなさい」
「はい」
花香とジョンミンの緊張は解け、やっと食事がすんなり
「お父さん、韓国にも『シルム』っていう相撲に似た伝統スポーツがあるんですって」
花香が話のきっかけを作る。予想通り、父はこの話題に食い付いてきた。日本の相撲廻しのように、シルムも腰と
「日本の大相撲に比べると、シルムは存続の危機も
「なるほどな。相撲の起源は『日本書記』の中に書かれている力比べらしい。韓国のシルムも、確か古い古墳に力比べの絵が描かれていて、原始の頃からあったと考えられているんだよな。古代から人は、そうして強い力を周囲に示して来たんだな。時に勝者は実権を握り、一族を守り、生き残ってきたってことかな」
花香が、父の話を韓国語に
「花香、それ韓国語か? お父さんにはチンプンカンプンだ」
栄一は感心した。美紗子もまた、ふたりの関係性が、とてもお互いを尊重し合い、信頼し合っているのだと感じられた。するとジョンミンは、元力士である花香の父の姿を見つめ、自分の細い上腕をポンポンと叩きながら言った。
「お父さん強そうですね。腕の力こぶ、すごいです」
「だろう? 今でもトレーニングは欠かさない。どうだ? 力比べしてみるか?」
栄一は自信満々の表情で、腕相撲の動きをして見せる。
「あっ、はい!」
「よし!」
父が客席側に出て来ると、ジョンミンとの腕相撲大会が始まった。目の前の若者の手の平は、栄一の大きく
「さすがです。強い」
ぷるぷる震えるジョンミンの腕が、ぱたりと倒された。
「あぁ、お父さんすごい! 僕、まだまだトレーニング不足でした」
「だろう? まだまだ負けないぞ」
栄一は、顔を真っ赤にし、呼吸を荒げている。
「お父さん、息上がってるよ! 大丈夫?」と花香。
しばらく皆の笑い声が絶えなかった。
ジョンミンは、食事をお腹いっぱいきれいに食べ終えた。店も閉店時間だ。ジョンミンは、真剣なまなざしで栄一に話し掛ける。
「お父さん、ご馳走様でした。僕、お父さんお母さんに信頼してもらえるように、安心してもらえるようにがんばります。花香さんは、お互いの夢を一緒に育てて、一緒に歩んで行きたい人です。ふたりの未来が拓けるように、大学生活を有意義に送ります」
目の前の青年は、しっかりと娘との未来を見据えている。彼の中に、強い意志を感じた。
「君も、花香と同じビジョンを持っているようだね」
「花香さんを、ずっと大切にします」
「うん。だが、親としては、ゆくゆく君の国と家族に、温かく花香が迎え入れられるのかどうか、そこが心配だ。大事な娘だ。俺たちの宝物なんだ。文化も違うし、いずれ花香は、韓国に嫁いで行くこともあるのかと思うと・・・・」
栄一は、腕を組み、口を真一文字に閉じて少し考えた。
静かに聞いていた花香が、口を開く。
「私の覚悟は、できてるよ。お父さん」
「うん。そうかも知れないがな・・・・。花香、初めはお前が、ただ韓流アイドルへの憧れだけで、何となく彼に惹かれただけなんじゃないかと、お父さん、見くびっていた。だが、今日分かった。本物だな。困難も当然あると思う。焦らず、今のお互いの気持ちを大事にしなさい。その上でだな・・・・やっぱり二人でいることが、何か違うと感じたら、一緒にいるのが難しいと判断したら、その気持ちも見過ごしてはいけないんだ」
ふたりは、神妙な面持ちで頷きながら聞いている。
「相撲は押しの一手だが、大きな体がぶつかり合うだろう? それにはとても危険が伴う。だから、闘争心だけではだめで、だからこそ相手を敬う気持ちや礼節が大切な競技なんだ。今は、好きな気持ちが先行して燃え上っているだろう。『愛は盲目』とも言う・・・・。お互い必要以上の我慢も
「はい」
今のふたりは、そんなことはあり得ないと思った。でももし、これからお互いを深く知り合っていく中で、相手が自分の国の文化や風習、または人間関係や職場環境などに