雨傘照らす

一日を濡らす　ほんの少しの霧雨
差した傘の色彩は水を帯びて
紫陽花の柄はまるで
鈍色の天に咲く花のよう

蛙達の歌声は遠くに
静寂が漂う山道を歩めば
雨と土と　葉の匂い
息を吸い込み　吐き出して
見守る木々の中を往く

透明な寒さが身体に降りる
温かさが恋しいひと時
黄色い雨合羽は遠くの我が家に
夏を待つ向日葵のように
ハンガーに掛けられているだろう

霧雨が止まない
霧雨が止まない
止む事なく全てを濡らしていく
緑も灰色も何もかもを
ただ静かに慰めていく

太陽は曇天の遥か向こう
雲の間から微かに光を
やがては雨傘も照らされゆく
描かれた紫陽花も残さずに
今はまだ閉ざされたまま
太陽は霧雨の遥か向こう

水に浸かった赤い靴
歩みを止めず一歩　一歩

此処は雨降りの地
止まぬ霧雨の世界