心象風景

文字数 474文字

透き通る水晶の世界
怒りの琥珀がそこらいっぱいにばら撒かれ
アメジストの悲しみを奥深くに仕舞い込み
燃える想いのルビーは後生大事に飾られた

珊瑚の棘 瑪瑙の箱 嗚呼 美しいこと
重なり合い 絡み合い 組み合って 拡がる
煌びやかな万華鏡のように流転していき
生命に色彩と光と影を与え続けている 心
ありとあらゆるものを呑み込んでは
その度に全てを変質させている 摩訶不思議な
しかしその反応は 日々とても愛しく思う

(宝石箱の底に潜んでいたのは 小さな怪物)

ダイヤモンドで縁取られた思い込みと信念が
目に映るものを次々に決定してゆく
大きな廻りを経て 少しずつ少しずつ
精製された思考がメビウスの輪を作り
人は大抵その中で一生を終えるものだと
いつか誰かが告げてくれたような

(宝石箱の底に隠れていたのは 小さな子供)

心の欠片が真珠となり 零れていく
一粒 一粒と 優しい涙のように
此れも過ぎ去った日に築いた風景であり
炎を覆い隠しているベールである
美しさを崩し壊せば 露わになる真実を
包み包んで 寝かしつけている

私は今日も 心象風景の上でぼうっと立っている

恐れるが故に 宝石箱を抱えて


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