第13話
文字数 827文字
作品14 作品名
『足音』
カッッ、カッッ、カッッ、カッッ。
ハイヒールの足音が廊下に響いた。
カッッ、カッッ、カッッ、カッッ、カタン。
ドアの前で、足音が止んだ。
ノックの音も、チャイムの音も無い。
パタン。
女性は原稿ファイルを閉じるとソファにしなだれかかった。
「あぁ~。イヤ、イヤ、イヤ。何で私が、こんなホラー小説の論評を書かなきゃいけないの。だいたい、私はホラーが一番、苦手なのに。読みたくもない本を読まされて。もう、苦痛手当をもらわなくっちゃ」
女性はバタバタと服を脱ぎ捨て浴室へ向かった。
湯船に、つかりながらブツブツと文句を唱え始めた。
「だいたい、今どき、死に別れた女が未練を残して、毎晩、男に会いに行くなんて、ダッサイッ。だいいち、幽霊なのに、なんで、カッッ、カッッと足音がするのよ。もう、読みたくないなぁ」
浴室から出た女性は寝間着姿で呟き続けた。
「男も男よ、死んだ女に未練タラタラ。幽霊だと感じながらもドアを開けて、受け入れてるし。もうね、オチは解っているのよ。多分、自分が死んだ事に気付いていない女に、最後は御経か呪文を唱えて、成仏させるのよ。ワンパターンの結末しかないんだから。私も適当に当たり障りのない論評を書いて、終わらせちゃおうっと」
翌日の夕刻、編集室では編集長が一人で残務処理をしていた。
カッッ、カッッ、カッッ、カッッ、カタン。
足音は編集室の前で止んだ。
バサッ。
突然、編集長の前に数枚の原稿が現れた。
彼女の物だ。文脈を観れば解る。
編集長は大きく深い、ため息をついた。
「まだ、自分が死んだ事に気付かず、仕事をし続けているのか」
『君は、もう、この世の人ではないのだから仕事なんてしなくてイイ』とメッセージを送ったが効き目は無かったようだ。
もしかしたら、彼女の事だから、最後までメッセージを読んでいないかも知れれない。
何しろ、せっかち、だったからなぁ。
(了)
773文字
※あらすじ
足音の正体は、誰?
『足音』
カッッ、カッッ、カッッ、カッッ。
ハイヒールの足音が廊下に響いた。
カッッ、カッッ、カッッ、カッッ、カタン。
ドアの前で、足音が止んだ。
ノックの音も、チャイムの音も無い。
パタン。
女性は原稿ファイルを閉じるとソファにしなだれかかった。
「あぁ~。イヤ、イヤ、イヤ。何で私が、こんなホラー小説の論評を書かなきゃいけないの。だいたい、私はホラーが一番、苦手なのに。読みたくもない本を読まされて。もう、苦痛手当をもらわなくっちゃ」
女性はバタバタと服を脱ぎ捨て浴室へ向かった。
湯船に、つかりながらブツブツと文句を唱え始めた。
「だいたい、今どき、死に別れた女が未練を残して、毎晩、男に会いに行くなんて、ダッサイッ。だいいち、幽霊なのに、なんで、カッッ、カッッと足音がするのよ。もう、読みたくないなぁ」
浴室から出た女性は寝間着姿で呟き続けた。
「男も男よ、死んだ女に未練タラタラ。幽霊だと感じながらもドアを開けて、受け入れてるし。もうね、オチは解っているのよ。多分、自分が死んだ事に気付いていない女に、最後は御経か呪文を唱えて、成仏させるのよ。ワンパターンの結末しかないんだから。私も適当に当たり障りのない論評を書いて、終わらせちゃおうっと」
翌日の夕刻、編集室では編集長が一人で残務処理をしていた。
カッッ、カッッ、カッッ、カッッ、カタン。
足音は編集室の前で止んだ。
バサッ。
突然、編集長の前に数枚の原稿が現れた。
彼女の物だ。文脈を観れば解る。
編集長は大きく深い、ため息をついた。
「まだ、自分が死んだ事に気付かず、仕事をし続けているのか」
『君は、もう、この世の人ではないのだから仕事なんてしなくてイイ』とメッセージを送ったが効き目は無かったようだ。
もしかしたら、彼女の事だから、最後までメッセージを読んでいないかも知れれない。
何しろ、せっかち、だったからなぁ。
(了)
773文字
※あらすじ
足音の正体は、誰?