ここで会ったが100年目!

文字数 4,049文字

ユケイと翠は次の目的地へ向かうため、

木々の生い茂るひとけのない山道を歩いていた。

ぜぇぜぇ……。

翠~、まだ着かないの~? こっちが近道なんだよね~??

……フ。

やっばい。完全に迷ったわ。

(コンパスぐるぐる)

えっ、じゃあ今日は野宿!?

キャンプファイアーー!?

なんで嬉しそうなんです?

ここには食料も、キャンプをするための道具も何もないんですよ~?;

いやぁー……参りましたねぇ。

ともかく、夜になる前にこの森から出なくては。

え~~せっかくだから出なくていいよ。

それより川を探そう! 枝を集めて焚き木を燃やして、

お夕飯は釣ったお魚とかでバーベキューかなぁ!?(わくわくっ)

ユケイく~~ん? 夏休みじゃないんですから。

夜の森には魔物がでます。怖い怖~~~いお化けだっていっぱいでるんですよ。

連れていかれてもいいの~~??

怖いぃ~……。

じゃあ森を出るぅ~~……。

よろしい。

ではコンパスが馬鹿になってしまったので、翠ちゃんの勘で行きますよ。

森の出口はこっちです!

……ほ、ほーーん……。

(えっ……ってゆーか、今はじめてコンパス出したよね?)

―― それから歩くこと数時間。

相変わらず、2人は森をさ迷っていた。

ジーザスッッ!!!!
ふぇぇぇ、もう歩けないよぉ……。

お腹もぺこぺこだし、真っ暗で何も見えないし……。

今日はこの辺で休もうよ~~(座り込む)

仕方ない。こうなっては動くと危ないですからね。

ユケイ君はここで待ってて下さい。翠ちゃんが水辺を探してきます。

(すたすた)

はいフラグーー!!!!

水辺を探してるうちにさらに迷って戻ってこれなくなるパターンだ!

翠行かないで! 動くと危ないならここにいて!;

ユケイの声は静寂の彼方に響くばかり。

翠は既に行ってしまったようだ……。

や、やだよこんなところで一人で待つなんて!

せめてオレも連れてってよ~~~(涙)

その時、

どこからともなくいい匂いが漂ってきた。

(くんくん…)

妙だぞ、こんな森の奥深くで! お化けがオレを誘惑しようとしてるんだ!;

でも、でもー……。なんだよこの超美味しそうな匂いは……!

オレの本能が往けと囁く! 体が勝手に動いちゃうーーん!!(よだれ)

匂いにつられて辿り着いたのは、とある池のほとり。

そこには簡易なキャンプが設置されており、

小さな灯りのもとに2つの人影があった。

ジギぃ~飯はまだか~~??

我はお腹がぐーぐー鳴ってたまらんぞ~~?

(椅子に座って足ぶらぶら)

……まだだ。

まだ具材に味が染み込んでいない……。

(火にかかった鍋をかき混ぜている)

くぅ~~ひもじいなり。

我は今夜のキャンプの為に、3日も食事を抜いたのだ♪

全てはジギの料理を美味しく食べるため。あともう少し。我慢、我慢。

……アホかァ!!!!

今後一切、そういう事はするな……。

ご存じの通りオレ様は普段から超~~~~忙しいィ……が、

前もって言ってくれれば飯くらい……いつだって届けてやるんだぜェ。

ふふ、これは良いことを聞いた。

さて、ジギよ。飯ができたら器は3つだ。


……そこの茂みに隠れている、お前の分であるぞ?

……!

(亜空間から食器をとり出す)

ひぇっ;

えっとえっと、覗き見しててごめんなさい。

いい匂いがしたから、つい……。

そう畏まるな。ここで会ったのも何かの縁。

さぁ、そこに座るがよい。腹が減っているのだろう?

絶品たる魔王の手料理、お前にもわけてやろうぞ。

オレも一緒に食べていいの!? うわーい!

……あ、でも翠にひとこと言わなきゃ。

今頃戻ってきてオレを探してるかもだし;

ふむ……。

ジギ、この者の連れを呼び寄せよ。今すぐにだ。

暗闇のなか、人の子の目など役に立つまい。どうせ迷っている。

えっ、そんなことができるの??
ったく……。

オレ様を便利に使うんじゃねェーぜ……。

(苦手なんだよなァあの女……)

魔王ジギが呪杖を一振りすると、

翠が転送されてきた!

あ、あれっ!?(¯▽¯=¯▽¯)

景色が変わった……!? ユケイ君、なんでここに?

待っててねって言ったでしょう?!

あのねあのねっ!

いい匂いがしてオレ、あの場所から離れちゃったんだ。

そしたらこの2人と出会って、一緒にご飯を食べてもいいって!

おや?

貴方達は……。

アーーーーーーーッ!!!?

竜王エミエル! 魔王ジギ! ここで会ったが100年目!!

ユケイ君っ、こいつらは光のクリスタルと闇のクリスタルの所持者ですよ!?

ご飯で油断させてキミを仕留めるつもりに違いない……!(臨戦態勢)

うるせェ……!!

むしろ遭遇したことを残念に思っているのはこっちだ……!

(こちとら久しぶりにエミエルと2人で過ごせると思ったのに……) 


……ともかく、今からお子ちゃま達の夕飯だ。

消されたくなかったらそこで大人しくしてなァ……!

ははは。

相変わらず血の気の多き娘である。

これで器は4つだな、ジギ。

……いえ、私はものを食べる必要のないスーパー低燃費な体なので結構です。

ご親切にどうも。

え? ユケイ君ご馳走になるの? 因縁の敵とわいわい夕飯?

なにこの状況。翠ちゃん複雑~~~。

戦わないで済むなら、オレはそっちの方がいいな♪

そういえば、翠は水辺を見つけられた?


ええ、いい感じの川を見つけましたよ。

それを目前に、決して崖から落ちて途方に暮れていた……なんて事はありません★

やっぱりというか、なんというか……。
……よし、完成だ。

ついでやるから器を持ってきなァ……。

ふあああああぁッ!! やっとこの時が来たぁぁあッ!

ジギぃっ! 大盛であるぞ! 我のは特大の大の大盛にせよ!?

はやくはやくっ!! たっぷりとそそぐがよい!!!! 遠慮はするな!!!!!(大興奮)

ステイ ステイ ステーーーイ!!;

お前のはあえて小盛りにしてやるから、こまめにおかわりに来い!

……前にがっつき過ぎて、芋を喉に詰まらせて死にそうになっただろォ……!?

それにデザートもあるんだから、腹八分目にしておけェ……?

デザートもあるのかあぁあああ!!!!(よだれ)

ジギ、いつもありがとうな!

ククク……どういたしまして。

……ほら、お前のもついでやろう。

熱いから気をつけろよォ……。

これは……ミネストローネだね!?

おっきなお野菜がたっぷり入ってて、美味しそう……!!

いっただっきまーーーす!

……。

(ふーん、美味しそうですねぇ……)

なんとまぁ我のは見事な小盛なり。

仕方ない、ゆっくり味わうのもまた一興。

(ぱくり)

こ、これは……!? これは…………

どうしたんだァ……。

まさか、口に合わなかったか……!?;

美味いっ!


美味いぞっ!?


うまうまなりやーーーーーーー!!!!!

(木のてっぺんから天に向かって叫ぶ)

……びっくりさせるなよォ;

おォーい、戻って椅子に座れェ~……。

本当だ!

これめっちゃ美味しいよー!!

どこのメーカーのトマト缶使ったの!?

トマト缶? ククク……。

……全てオレ様の手作りに決まっている。

野菜もスパイスも種から育てた。

『王』が口にするものなんだ。安心、安全に。これくらい当然だろう……。

いや、こだわり過ぎでしょう。

翠ちゃん、意識高い系男子苦手~……。

ジギはな、こうして我にたっぷりと愛情を注いでくれるのだ。

お前はどうなのだ? 相棒のチビを大事にしているのか?


おかわりッ!!

ええ、もちろん。

私は私のやり方で、ユケイ君を大事にしていますよ。

え~でもね、翠ったらいつもオレのこと叩き起こすし、

勉強サボったら怒るし、すぐテレビ切るし、秘密でいっぱいだし。

オレ大事にされてる~~~~~?

ははは。ジギも似たようなものぞ。

朝はわざわざ魔界から起こしにくるわ、なにかと服を着せたがるわ、

我の部屋を勝手に掃除するわ、風呂に入れと催促までしてくる。

実に子ども扱いだと思わぬか?


おかわりッ!!

言われなくても風呂には入れよォ……。

頼むからァ……。

……だからな、我はいつも感謝だけは忘れぬぞ。

お前も相棒と長く良い関係を続けたいならば、感謝の心を忘れぬことだ。

(……)
それって、う~ん……例えば、

オレが頼んでない事とか、オレがして欲しくない事でも、

なにかしてもらったら感謝ってしなきゃいけないのん?

やってもらったオレ本人が嬉しくなくても、感謝って絶対するべきなの?

ああ、そうだ。

たとえその働きがお前の意に反したものであったとしても、

それが確かな好意であるならば、お前は感謝すべきなのだ。

他者との繋がりとは、絆を育むとは、そういうものだ。


おかわりっ!!

……。

オレ、全然伝えてないんだよ。

……翠にありがとうって言ってない!!


ねぇねぇっ、翠っ!

えっ!?

あっ、はい!?

……。

…………。

……………いつもありがとっ////

あら~、どういう風の吹き回しですかぁ?

なんなら、もっと褒めちぎってもいいんですよ?(笑)

っていうかねぇ、別に私は感謝されたくてやってるわけじゃないんですから、気にしなくていいんですよ。

んーーん。これからはちゃんと言うようにするねっ。

だから翠もオレに言ってねーーん!

はい~~~~?

キミが私に何かしてくれた事ってありましたっけ~~~~!?
(にっこり)
デザートのイチゴプリンをどーぞォ……。

……悪いがこれは一つしかない。

ぴきゅああああああ!!vvv 皆の者、見よ! 見よ見よ見よ!

このぷるんぷるんのイチゴプリンを!!

三等分である! 一番大きい欠片が我のものなり! 異論は認めんッ!!

(大興奮)

わー!! イチゴプリンだーーー!

オレ、プリン大好き~~!!

……。

(ジギを睨んでいる)

……。

(翠を睨み返す)

こうして、

ユケイとエミエルは楽しい時間を過ごした。

食後のお菓子もなくなり、月は高い位置にある。

おひらきの時間がやってきた。

ふふふ、よき。実によき。

今夜はともに食事ができて、楽しかった。

機会あらばまた歓迎してやろう。


今夜はこの場を動くでない。明るくなったら北に進んでみよ。

森の出口はすぐそこだ。

(竜王エミエル……。

同い年くらいに見えるのに、なんだか不思議なやつ……)


あっ、待って!

むむん?
ごちそーさまでしたっ!(ぺこり)
我も、ご馳走様でしたなり♪(ぺこり)
……へいへい……////;
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登場人物紹介

【 ユケイ 】

CRYSTAK CROSSの主人公。

ひょんな事から7つのクリスタルに封じられた記憶を取り戻すべく、翠と一緒に頑張る10歳児。

口癖は「ほーん」「~なんだよ」「~だよん」。

お化けが怖くて夜一人でトイレにいけない。

同年代や年下の前では頼もしいが、年上相手には甘えん坊になってしまう。

必殺技に変な名前をつけがち。

現実世界:エディ・ウィローシュ(10歳)

【 翠《すい》】

水のクリスタル所持者

ユケイ君が可愛すぎて毎日がハッピー☆

他のクリスタル所持者達を裏切りユケイの味方をしているが、色々とヒミツだらけ。

その姿はクリスタルの能力によってできた水の分身体であり、本体の所在は不明。

本の世界のルールについて、なにかと詳しいようだが……?

【 シバ 】

ユケイを利用して成り上がった、海賊船の船長。

銃の腕は超一流。

現実世界:シルヴァ・アディントン(16歳)

【 リズ】

無口で謎の多い竜族の女の子。

ユケイに執着しており、どこまでも追いかけてくる。

現実世界:リズリット・ローリー(10歳)

【イナフ】

竜族の研究所に囚われていた竜族の青年。

ユケイと共に研究所からの脱出を試みる。

身のこなしが素早く、足技が得意。

現実世界:イアン・ハイアット(16歳)

【エミエル】

光のクリスタル所持者

竜界の覇者であり、竜族達を束ねる王。

少女の姿をしているが2000年以上生きており、その正体は巨大な竜である。

魔王ジギとは仲良しこよし同盟を結んでいる。

好きな食べ物は苺。水が苦手で風呂嫌い。

【 ジギ 】

闇のクリスタル所持者

魔界の支配者であり、魔族達を従えている王。

闇の魔法を操る魔法使い。気付いたらエミエルのお世話を焼いている。

見た目の雰囲気に反して、可愛い小物やお菓子作りや裁縫が好き。

キュンは1日3度まで。4度目は死(?)に至る。

万姫《ワンヂェン》

三大海賊団『ネヴァサ』の船長がひとり。

千人斬りの異名を持つ。

元は風の国の第一皇女。全ては敬愛するボスの為に。

現実世界:王・深緑(ワン・シェンリュ)(17歳)

ヤグール

三大海賊団『ネヴァサ』の船長がひとり。

魔獣使いの異名を持つ。

万姫を気にかけている。

現実世界:ヤーコフ・スミス(44歳)

バル・ムワ

三大海賊団『ネヴァサ』の船長がひとり。

強欲の王の異名を持つ。

スー

竜族三姉妹の長女。

万姫のお世をしている竜族。

透視や近い未来を予言する能力をもっている。

現実世界:王・思颖(ワン・スーイン)(42歳)

【イルヴァ】

竜族の王国を守護する白薔薇騎士団の団長。

エミエルに絶対の忠誠を誓っている。

三度の飯よりイナフのことが好き。

超泣き虫。

現実世界:オリヴァー・イェリデン(15歳)

【 ラダリェオ 】

類まれな戦闘の才を持っているが、

残酷なことが嫌いな変わり者のロゴドランデス族。

セスとイナフにはめっぽう弱い。

わりとツンデレ。

現実世界:ランドルフ・ハイアット(38歳)

【 エバ 

人間界に生まれ竜界で育った、

砂漠に住まう力自慢の竜族。

マイブームはラダリェオと戦うこと。

現実世界:エマ・アシュバートン(36歳)

【 レヴァン 

砂漠出身の、力自慢の竜族。

白薔薇騎士団の副隊長。

元反王国派だったが、今はエミエルに忠誠を誓っている。

好戦的で猪突猛進。

なにかとイルヴァにつっかかる。

現実世界:レオン・タイラー(15歳)

【 エルク 

竜族の歌姫・アルテミシアの弟。

歌声に特殊能力を持ち、聞いた者の状態を操る。

豪華客船にて、窮地のところをユケイに救われ、固い友情が結ばれた。

リズとも仲良し。

現実世界:エリック・アンダーソン(10歳)

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